村に到着Ⅱ
…いやまあ、こーゆーお泊まりイベントにはお約束っちゃそうなんだが、やっぱりダメでしょう!
「…ウチは別にいいニャよ?」
ミールも顔をそんなこと言わない!…って、え?いいのっ?!
「キミ、ウチになんにもしニャいよね?」
―ハイッ!でーすーよーねっ!
すぐさま村長さんに頼んで、俺は別の部屋にしてもらいました!
「これは失礼いたしもうした。
なにせ、その…、そういうご関係と聞いておりましたので…」
「誰からですかっ?」
「ジェファーソン殿じゃが?」
―ヤッパリかいっ!
この際なので、ミールには俺を信頼してもらってもいいが、俺の下半身は全く信用しちゃダメな事を、オトコノコの生態と含めてキッパリと(&やんわりと)説明させて頂きました!
このコ、そういう部分はかなり無防備な気がするし、第一俺がこの調子で無邪気に攻められては、いつまで理性が保つか分からんからだ。
説明を終えると、ミールは「フニャ~!」と顔を真っ赤にして、お陰で部屋を替える事に反対はしなかった。
―俺もまさか女の子に、保体の授業をするとは思わんかったわ!
なんちゅー恥辱プレイ!
そういう事で俺はジェファーソンのオッサンと相部屋にしてもらった。
俺が部屋に入るなりオッサンは「チッ!このヘタレがっ!」と毒づかれ、俺もムカっときたので、"フェンサースプライト"にケツをチクチクさせて部屋中を追いかけ回してやりました。
まあその後両者とも和解しまして、そのノリで男子トーク(おもにエロトーク)で盛り上がりました!
"アルラウネ"と"フェンサースプライト"が顔を赤らめて耳を塞いでいたので、彼女らも【カード一覧】に戻してやりました。…ゴメンね~!
そこで知った事なのだが、ヒト種族(ゲームでいうプレイヤーが選べる八種族)では、異なる種族同士で結婚は可能なのだが、子供が生まれる確率がかなり低くいそうなのだ。
その為か保守的な人達からみると、異種族の結婚はあまり好ましく見られないらしい。
一昔に比べれば、だいぶその辺りの偏見は少くなってきているが、やはりお年寄りの中には眉をひそめる人はまだまだいるとのこと。
「あれ?
じゃあ、村長さんとかもそうなの?」
先程も別段、俺とミールを見る目にその様なのは感じられなかったが…
「ああ、そういう偏見はこんな田舎より、都会の方が強いんだ。
特に都会では自分の種族が一番優秀って考えるヤツがいて、そういうヤツも偏見に拍車をかけてるしな。」
そう言うオッサンの顔は、苦々しい。
なんか嫌な事があったんだろう。
「パーミルは比較的、多種族が入り交じっているんで、そんなバカな考えを持ってるヤツは少ないが、五王国の方まで行くとけっこういるぞ。」
そうかー、まあいけすなかいヤツは、どこにでもいるよねー。
オッサンとの有意義な意見交換も終わり、オッサンが「もう寝るわー。」と行って横になったので、俺は今日の戦果からカードモンスターの強化をする事にした。
…だがその前に、少々先程から気になってしかたがない事がある。
それはキャラクター達の位置を教えてくれている、このカーソルの事だ。
これのお陰で、敵からの不意打ちは事実上あり得なくなったし、逆に俺は敵が気付く遥か手前から対応できる。
しかし今、俺の視界には、村人達のカーソルがわらわらと蠢いている。
ジェファーソンのオッサンと話をしている位から、気になってしかたがない。
オッサンの顔や胴体の前を、村人の名前と▽のカーソルがいったり来たりするのだ。
森の中にいた時は、大して気にならなかった。
モンスターや賊共と混戦になった時に少しウザいと思った程度だった。
だが今は100人近い村人達のカーソルが、俺の周囲を取り囲んでいる。
もう名前の文字が重なりまくって、かなりぐちゃぐちゃだ。
カーソルは俺を中心として、半径数km 先から出現する。
そして俺に近づくにつれ、四段階に文字とカーソルが大きくなる。
これによって、対象がおおよそどのくらいの距離にいるのか判るのだ。
―コレ、パーミルに着いたらもっとスゲェ事になるなあ。
半分、笑ってすます気でいた。
だがジョシュアさんから、今のパーミルの人口が約3万人だった事を思い出した。
一瞬ゾッとした。
常に1万人以上の人の名前が、ウジャウジャと俺の視界を塞ぐのだ。
ヤベェ…。
事の重大さに、今更ながら気付く。
場合によっては、俺は市街地には殆んど立ち寄れない、少くとも常時街を基点として暮らしていけない可能性がでてきた。
喋っている相手の顔すら見えない状態になるのだ。
慣れる事が出来るとは思えない。
ウルティナ様に訊ねてみるか…
明日の朝、彼女に【フレンド会話】をする約束になっている。
その時に訊いてみよう。
でもそれで改善するとは思えないがな…。
女神様達と話していた時に、先にこちらへ転生した二人と俺は、カードマスターとしての機能を調べる、テストプレイヤーであるのが判った。
そしてこの機能に不都合があれば、次の転生者の時に修正されると言っていた。
つまり俺がいまウルティナ様にこの問題を指摘しても、それが改善されるのは次の転生者の時となる。
前の二人はどうしていたんだろう?
やっぱりなんとか慣れていったのか、それとも人里から離れ仙人みたいな生活をしていたんだろうか?
どちらも嫌だなあ。
あんまり深く考えると鬱ってしまいそうだったので、これでこの事は一先ず考えるのを止めた。
後は手に入れたモンスターカードの【合成】だ。
まず"ゴブリン"と"オーク"を"ゴブリンシャーマン"に【合成】させる。
"オーク"は後々【進化】させる為に【合成】しようかと思ったが、進化後の"オークリーダー"はそれなりのステータスはあるのだが、スキルがいまいちなので、通訳用の"オーク"以外を使ってしまおう。
"ゴブリン"も"オーク"も同じ妖魔族なので、"ゴブリンシャーマン"の【合成】にはそれなりに効率はいいはずだ。
ゴブリンシャーマン HN Lv 16
(妖魔族/火属性/cost 12)
AT:2.000/2.000
DT:4.470/4.470
スキル【闇魔法/初級】 (Lv 4/10)
…けっこうコイツ、防御タイプのモンスターだったんだな。
防御値の上昇率が、かなり高かった。
じゃあ、次は"アングルアイビー"を【進化】させてやろう!