ウルティナ様の事情Ⅰ
「はい~。
なんぞ御用どすかぁ。」
「あ、すいません、今は大丈夫ですか?」
「ぜんぜんかましまへんぇ。」
今は先程の"ゴブリン"との戦いも圧勝で終り(やはりあいかわらず、アイテムドロップはザクザクだった)、昼飯を終えて街道をノンビリと進んでいる。
昼飯を終えて小一時間も歩くと、バルストさんが言った通り、街道が見えてきたのだ。
街道は次々と続く丘陵地帯の谷の部分をクネクネと縫うように続いており、周りの景色は膝下位の草の海とまばらに立っている木立、あとは雲一つない青空が広がっている。
気温もポカポカとした陽気で、あの丘の上にある木の下で昼寝なんかしたら、最高に気持ちいいだろうな。
特に昼飯を食べた後だから、余計にねむいし。
モンスターが襲ってくる気配は全くない。
凸凹と小さな丘が続く丘陵地帯なので、思ったほど見通しがいい訳ではないが、空から見ればかなり遠方まで確認出来るので、"ビーファイター"君と"レッサーデーモン"君に周囲を旋回しながら、哨戒任務にあたってもらっている。
彼らの視界を使って見ると、ずっと彼方の方、街道から少し外れた所に小さく村落が見える。
おそらくあそこがジョシュアさんが言っていた村だろう。
上空から見る景色は、それ以外は延々と向こうまで丘陵地帯が続いている。
延々と続く道程に、眠気をまぎらわせるのを含めて、昨日はバタバタで出来なかった【フレンド会話】をウルティナ様にしてみようと思ったのだ。
最初はまたアルキエラさんにしようと思ったのだが、昨晩のお風呂の事がビミョーに気まずく感じて、彼女にはちょっと一日程時間を空けようと思った。
ウルティナ様に連絡と言っても、内容はしょーもない事なので、忙しそうだったらまた後にしようと思っていたが、どうやら大丈夫のようだ。
「そちらさんは順調に行けてますかぁ?」
「はい、アルキエラさんにして頂いた、《ゴッドブレス》で随分稼がさせて頂きました(笑)。
改めて有り難うございます。」
「…いややわぁ、あのコ、《ゴッドブレス》なんか使うたんどすかぁ?」
あれ?…もしかして、アレはアルキエラさんの独断でヤっちゃった事なの?
バラして不味かったかな…。
「こないな時は別の祝福の方が、皆さんに都合が良かったんとちゃいますやろか?」
まあ確かに例えば行程の短縮とかの方が、出来るなら良かったかもしれないが、アルキエラさんの為にもフォローはしておこう。
「いやいや!本当に助かりました!
カードモンスターも思いがけず増強できましたし、これからの事も考えて資金が増えたのは、ホント助かったんですよ!」
実際、"フェンサースプライト"達の新入りメンバーは、かなりの増強になったのだ。
「そうどすかぁ。
まああんさんが、そう仰るんやったら、それでよろしいんやけど…」
「はい、それで話しというのは…」
そこまで言って、俺はハタと気がついた。
《ゴッドブレス》の内容については、昨晩、アルキエラさんから聞いたのでもう解っている。
あと訊ねたかったのは、ウルティナ様が結婚していた事についての、ある意味どーでもいい事なのだが、コレどういう風に訊いたらいいだろ?
『あのー、ご結婚されていると聞いたんですけど…』
『へえ、してますぇ。』
『はあ、そうだったんですかー。』
『…』
『…』
『え?それだけで、連絡してきはったんどすか?(怒)』
―以下、想像オワリ。
―いかん!
俺、かなり失礼な連絡をしてしまってるんじゃねーのコレ?
「どうしはりましたか?」
「はははは、はい!
えーとですねえ。」
―考えろ、俺!
「えーと先日、ウルティナ様が幸運も司っておられると聞いたんですが、確か運命を司っておられるのは、ヤグ=オスロット神だったと思うんですけど、えと、ウルティナ様と、ど、どの様なご関係なのかなーと…(恐る恐る)」
「……」
や、やっぱりマズかったかぁ?
「…ハァ、あんさんも、もしかしてあのオトコとうちが夫婦やと聞いたんとちがいますやろかぁ?」
へっ?
「うちとあのオトコは、夫婦なんかと違いますぇ!」
あらー?