森を抜けて
前方の木々が、急にまばらになってきた。
そしてその木々の合間から、青空と緑の大地がはっきりと見えてきた。
それから5分ほど歩くと、森が突然途切れた。
―ミレトの森を抜けたのだ。
「おおおぉっ!」
思わず感嘆の叫び声を上げてしまった。
目前に広がるのはまさに緑の海と言うべき、風にたなびく草原が、はるか先にまで広がっている風景だった。
平坦な大地ではなく、なだらかな丘陵が延々と続いており、所々に小さな林がアクセントになっている。
「そんなに驚く景色ニャ?」
ミールが可笑しそうに訊ねてくる。
いやいや!君らは日常の風景かもしれないけど、俺にとってこんな広大な景色、そうそう見れるモンじゃないからっ!
俺が転生前に住んでいた所は、都会というにはイマイチで、かといって田舎というには中途半端に都会化された地方の一都市だ。
だからこんな風景を見たのは、中学の修学旅行で行った九州ぐらいで、あとはテレビか旅行雑誌でしかお目にかかった事がない。
田舎のじーちゃんちは、山ばっかだったしな。
まあミールには、俺が住んでた所はずいぶんせせこましい所だったと、説明しておこう。
「このままもう少し南に行こう。
街道が見えてくるはずだ。」
しばらく周囲を確認していたバルストさんが、一方向を指差す。
どうやらここで、森との境界線沿いに曲がって進むようだ。
…今はアジトから出発して、三日目の昼前だ。
当所の予定ではもう少し早く、森を抜け出る予定だった。
時間が予想よりかかったのは、例の幸運値上昇のせいである。
つまりモンスターの襲撃→面白いほど簡単に退治→ドロップアイテムがザックザック、というサイクルが続いたのだ。
二日目も初日に比べて襲撃回数は減ったが、二時間に一度強位のペースでモンスターはやってきた。
三日目の今日は更にペースが落ちたが、それでも一度"オーク"の一団と遭遇している。
とりあえず今までの戦果(俺の分だけ)は、こうだ。
晶貨:+4.185G
【オーク】× 15
【ゴブリン】× 11
【ヒュージスパイダー】× 5
【ヒュージキャタピラー】× 6
【グリーディウィード】× 32
【アングルアイビー】× 6
【ポーション】× 7
【ハイポーション】× 15
【虫糸(良質)】× 7
【魔法の牙】× 4
【呪われた盾-1】× 4
【丈夫なロープ】× 6
…まあこんだけの襲撃をうけたら、行程が一日分は延びてしまうはずである。
あと今日の【一日一回無料召喚】の結果はこうだ。
アサシンシャドゥ HN Lv 1
(死霊族/闇属性/cost 11)
AT: 1.000/1.000
DT: 1.000/1.000
【クリティカルⅠ】
先日【一日一回無料召喚】で出た、"イビルシャドウ"の上位種だ。
"イビルシャドウ"と同じく影そのものなので、"イビルシャドウ"と見た目は見分けがつかない。
ただコイツは、スキルに【クリティカルⅠ】を有している。
【クリティカルⅠ】は、クリティカル攻撃の発生確率が上昇するスキルだ。
まさに影に潜んで、油断した所をズブリッ!というヤツである。
それと戦果にあった"アングルアイビー"と"グリーディウィード"は、二日目の夜営地に大繁殖していたものを、俺がプチプチと全滅させた結果だ。
…ホント言うと、無視してもう少し行軍出来たのだが、ネスフさんにお願いして退治する時間をもらったのだ。
でもこれで、"アングルアイビー"をやっと【進化】させる事ができる。
最近出番が無かったから、これでまた活躍させる事が出来るぞ。
それとカードモンスター達のスキルレベルが、ほとんど3~4にレベルアップした。
兎に角、戦闘ではカードモンスター全員が、スキルを使うまで戦いを終わらさせないように気を付け、少しでも経験値を多く手に入れるようにした、泥臭い努力の結果である。
あと半日、《ゴッドブレス》の幸運値上昇は続くはずだ。
まだモンスターの襲撃は有り得るだろうから、【合成】・【進化】は今晩の寝る前にしよう。
あとはと…昨日もバタバタで訊けなかった、もう一人のアルカナ使いについて、ネスフさんにそろそろ話を訊ねてみようかね。
俺はカードモンスター達に殿を任すと、ネスフさんの方へ向かった。
申し訳ありません!
いつの間にかネサファーレンさんの愛称が、ネスフさんがスネフさんに変わっていました!
今話から元に戻します。
失礼しました!
m(__)m