ブラックナイト
ブラックナイト R Lv 1
(死霊族/火属性/cost 25)
AT: 3.500/3.500
DT: 3.100/3.100
【ダークスラッシュⅠ】
【火魔法/中級】
コイツは元がヒトの騎士だった者が魔王や邪神等に魂を売り渡し、ヒトとしての姿も捨てて、代わりに強力な力を手に入れたモンスターだ。
既にヒトとはかけ離れ、アンデットモンスターとなっている。
2m近い身長の一番上、フルフェイスの兜から、青白い二つの光が輝いている。(因みに敵モンスターの場合は、この瞳の光が血の様な赤色だ)
レアリティーはR (レア)だが、"ブラックナイト"(R)→"デスナイト"(HR )→"デスロード"(SR )と、コイツは3段階に【進化】してくれるのだ。
特に最終進化である"デスロード"のスキル、【アンデットロード】は、同じデッキ内にいる死霊族のステータスを常時上昇させるスキルだ。
もちろん"ブラックナイト"も今のチームでは、かなり役に立つカードモンスターだ。
前衛として、活躍してくれるんだが…?
「なにかマズイっすか?」
俺はそう言いながらも、素早く"ブラックナイト"をカードに戻す。
こっちに駆け付けた二人の表情が、尋常ではなかったからだ。
「いいか、にーちゃん。
俺達はアレがお前の忠実なモンスターであるのを知っているから良いが、少なくともパーミルの街の者がいる時には出さない方がいいぜ。」
「?」
「パーミルに住む者にとって、あのブラックナイトやその上位種のデスナイトは特別忌むべきモノなんです。」
どうゆう事だろう。
傍らで目を覚ましたミールの方に目配せするが、彼女も知らないらしくフルフルと首を振った。
「ミールさんなら、16年前に起きた『パーミルの災厄』は知っていますね。」
「ニャー!
ウチが産まれた頃の事で、凄くたいへんだったって隣のジールばーちゃんが言ってたニャ!
これで『北へのトンネル』が出来たのニャ?」
…そういやミールと出会ったばかりの頃にそんなトンネルの事言ってたな。
俺は『パーミルの災厄』なんて知らないし、ゲームのイベントでももちろん無かった。
ジョシュアさんがミールの言葉に頷きながら、全く知らない俺に説明してくれた。
それは驚くべき事だった。
俺の知っているパーミルの街は、16年前に一度壊滅していたのだ!
パーミルは前にも言ったが、中原五王国の西の玄関口となる都市だ。
これより西に向かえば今いる『ミレトの森』、そしてさらに森を奥深く進めばエルフの国『リファーレン』となり、それらとの交易で栄えていた。
ゲーム情報では、人口は5万人を超えていたはずだ。
この街が特に栄えていたのには、もう一つ理由がある。
この世界には有史以前から各所に、『門』と呼ばれる、まあ言ってしまえばテレポート装置が存在していた。
大人の腕で一抱えもある大きな光るオーブで、このオーブに触れると、一瞬にして対になっているもう一つのオーブまでテレポート出来るのだ。
そのオーブの一つが、パーミルの街にあった。
対になっているオーブのある場所は、五王国の宗主国『エルトニア』だ。
つまり五王国の中心から何十日もかけなくても、一瞬で辺境のパーミルまで行く事が出来たのだ。
当然、辺境のレアな資源と中原の新しい物資の交易で、この街は非常に栄えた。
今のこの世界は、俺のゲームで知っている世界より随分後世のようだが、相変わらず栄えていたようだ。
説明が長くなってしまったが、そのパーミルが正体不明の敵に攻撃を受け、一日して壊滅してしまったのだ。
当時のパーミルは要衝としても重要視されていたので、かなりの防御力と戦力を要していた。
この都市を落とすには、生半可な戦力では不可能のはずだった。
しかし敵の最初の攻撃は、思いがけない所からやってきた。
そしてそれが、勝敗を決めた。
…敵は都市の真下からやって来た。
街の中央にある、領主の居城を含む直径1km ほどが突如崩落、巨大な穴が出現したのだ。
「どうやってそんな大穴作れたのニャ?」
ミールの質問に、ジョシュアさんが答える。
「それが未だに解っていません。
巨大なドゥームワームや、知られていない土魔法によるもの等と考えられていますが…
どちらにしても、事前に察知出来る監視体制は充分なされていたはずなのに、全くその様なモノは検知出来なかったのです。」
"ドゥームワーム"の名前が出た所で、ミールがブルッと震えたのがわかった。
俺は彼女の手を…は、恥ずかしいので、右肩にしっかりと手を置いた。
彼女は触れた一瞬ビクッとしたが、俺だと判るとニッカリと笑い返してくれ、肩に置いた俺の手に自分の手を重ねた。
―やっぱりこのコ、かわええわ~!
「そしてその大穴から、デスナイトとブラックナイトを中心とする、モンスターの大軍団が出現したのです。」
当時の戦力の中心は、城にいる騎士団と魔法使い達だった。
それが領主共々、崩落に巻き込まれほぼ全滅。
領主以下の指揮すべき者が殆ど生死不明になった為、指揮系統がボロボロになり、崩落の難を逃れた者は各個で対応するしかなかった。
だがそんな抵抗は、モンスターらしくない統制のとれた敵の軍団に、紙のように破られていく。
「そのうち敵の目的が判ってきたのです。
敵は一直線に向かっていった。
『門』に向かって。」
敵モンスター軍団は、五王国の中心、『エルトリア』への電撃進攻が目的だったのだ。