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アジトから出発Ⅲ

出発に際して、ちょっと一悶着あった。


"アルラウネ"の指定席になっている俺の右肩に、"フェンサースプライト"がちゃっかりと居座ってしまったのだ。

「るーるー!」

「キュルキュー!」

「るるー!」

「キュッキュー!」


暫く言い争いらしきものをしたあと、俺の頭の上でポコポコ、ポカポカとケンカをし始めた。

―ああもう、ケンカしない!

とにかく"アルラウネ"が先輩なのだから俺の右肩は彼女の指定席とし、"フェンサースプライト"は左肩にとまる事で、ケンカを収めた。


「るー!」

"アルラウネ"が、ふふん!という顔をする。

―お前も先輩風吹かさない!


すると叱られた"アルラウネ"をみて、"フェンサースプライト"が、ふふん、ざまー!という顔をする。


「るー!」「キュー!」

二人して、俺の頭上でイィー!べェー!と睨み合う。

―コイツら、戦闘になったら大丈夫かな?

それにこんなのがもう一体出てきたら、どこに座る気だ?

あまり深く考えない事にする。


まあそれ以外は、特に問題はない。

"ビーファイター"を樹上に出して、上空と周囲の警戒にあたってもらう。


俺達の一団より1~2km ほど先行して、ベテランのレンジャー(狩人の上位職)さん二人が偵察に出ているので、"ビーファイター"の警戒と併せて不意討ちはまず無いだろう。


そんなこんなで出発するが、案の定、フリード達の歩みは遅い。

立ち止まったり、逃げ出そうとする素振りはみせないが、いかにもシブシブといった感じで、周りの冒険者の人達もイライラしている。


俺は一つアイデアが浮かんだので、殿(しんがり)から離れてヤツらの所に追いついた。

フリードは、何しに来やがった、という顔を俺に向ける。

俺はニッコリと微笑んで、ヤツに声をかける。

―あんまり非協力的だと、またアルキエラさんを呼んで、「めっ!」って叱ってもらおーかなー?


…はい、効果はテキメンでした!

彼らはアルキエラさんの名前を耳にしただけで、ガクブルとなってもの凄く従順になりました。

にしても、あの神威ってすげーな!

あのフリードが、メッチャびびってる、あのフリードがですよっ?


アルキエラさーん!めちゃくちゃ怖がられてますよー!(笑)


そんな事があってからは、すこぶる順調だった。

予定の五割増しほども進めて、今は昼の休憩中だ。

後方半分をカードモンスターが、残り半分を交代で冒険者達が見張りながら、昼食をとっている。


そんな時、"ビーファイター"から連絡がきた。

ちょうど真後ろから、20匹程の"ジャイアントビー"の群れがこっちに向かってるそうだ。


俺とミールは急いでスネフさんに報告した。

「わかりました。

ここで迎え討つとしましょう。」

スネフさんは落ち着いて、皆に指示を出す。

その指示を受ける皆さんもさすがベテラン揃いだ、あっという間に防御の円陣を敷かれた。


「ききゅー!」

俺の肩に乗っかっていた"フェンサースプライト"が、俺の正面に飛んできた。

「きゅー!」

え、自分がやるって?

同時に彼女の考えが、伝わってくる。

それを瞬時に理解出来た俺は、彼女にOKをだす。

あと念のために、"ビーファイター"と"レッサーデーモン"を彼女に付ける。


俺自身はスネフさんの方に行き、"ジャイアントビー"はこっちで対処出来ると話した。

するとスネフさんは少しほっとした顔をした。


―何かありましたか?

「ええ、助かります。

実は前方からオークの一団が向かって来ていると今、報告がありました。

まっすぐこっちに向かっているそうです、」

―っ!数は?

「18匹です。

対処出来ない数ではないので、オークはこちらで迎え討ちます。」


俺は了解と告げて、あと離れ際にスネフさんに【パワー&ガードⅢ】の支援を飛ばす事を伝える。

どんなモノなのかは、出発前の打合せで皆に簡単に説明してある。


「わかりました!お願いします。」

振り返らず、スネフさんが言う。


…っと、どうやらこっちは戦闘範囲に入ったようだ。

《BATTLE START? YES / NO 》


イエスを選択すると同時に、【パワー&ガードⅢ】をセットする。

特に今回はカードモンスター達や俺自身だけでなく、ミールやバルストさん達をしっかり意識にいれる。


「ニャー!」「おおっ!」「力がっ…!」

各所から感嘆の声と共に、身体から赤と青の光の粒子が噴き出るのが見える。

実はスネフさんから聞いたのだが、【パワー&ガードⅢ】のような攻撃と防御を同時に上げる魔法は存在しないとされていたらしい。

つまりこれはカード使い専用魔法というわけだ!


おっ!上空の"フェンサースプライト"から連絡がきた。

どうやら射程内にまで、"ジャイアントビー"が入ってきたようだ。


ではヤッちゃて下さい、"フェンサースプライト"さん!

「キュー!」


彼女の身体から紫色のオーラが出現して、それが前方に収束していく。

「キュキュー!キュー!」

右腕を前に差し出すと、その掌に、球状に更に集まっていく。


"ジャイアントビー"は既に、10mを割り込んで近づいてきている。


「キュー!!」

ヴァヂィィッ!


その瞬間、"ジャイアントビー"の一団をを包むように、雷撃が"フェンサースプライト"の掌から放たれた!


【風魔法/中級】のなかの一つ、俺達のチームの中で、初めての複数対象魔法【サンダーⅠ】である!

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