転移にて
光は圧倒的だった。
瞳が焼ききれるかと思った程だ。
いったい何が起きたんだ?
ミールさんの左手の甲にあった紋様を触れたと思ったら、紋様と触れた指の先から強力な光が溢れてきた。
ナニコレ?E・○ですか?
○・Tトモダチー、なんですか?
それにしては、光が強すぎないですか?
まだチカチカして、何も見えません!
それよりも、たった今までミールさんに抱きつかれていた、あの極楽状態が無くなっている。
ミールさんが急に離れてしまったのか?
っていうか、俺、横になっていたはずなのに、いつの間にか立っているよ?
くそっ!早く視界もどれよ!
「よう来はりましたなぁ。
歓迎しますぇ~。」
俺が慌ていると、背後のほうから女性の声が聴こえてきた。
「あれ、えらい転移の出力が強おしたようどすなぁ。
もう、あのコはもう少し加減を知らんとあきまへんわぁ。
どれ、ちょっと待っておくんなはれぇ。」
そうその声の主が言ったかと思うと、急激に俺の視界が晴れてくる。
「すんまへんどしたなぁ。
あのコには、後でウチからきつぅ言うときますよってに、堪忍しておくれやすぅ~。」
その声の主は俺の5mほど向こう、数段の階段になっている上に、バカみたいにデカいソファーに寝そべっていた。
"彼女"の姿は、キツネ系のビースト族に見えた。
腰まで流れ落ちる金髪、頭の上にあるおっきな三角のキツネミミ、髪の毛と同じ金色の大きな尻尾は三つある。
「改めて、ようおこしやすぅ~。
ウチがここの主、ウル…」
「ホンモノのウルティナ様だぁぁぁっ!」
「ひゃああぁぁ~!」
俺の叫び声に、彼女はソファーから転げ落ちそうになる。
「そないな、おおきい声だしてぇ。
えらいコワイわぁ。」
「ああぁっ!す、すいませんー!」
そう彼女は、前にミールさんの話の中にでてきた、"獣神ウルティナ"だった!
前にも言っていたが、この世界ではいわゆる『神』と呼ばれる上位存在が実在している。
彼女はビースト族の神であり、月と時間の女神様だ。
―同時に俺のような、獣っ娘ラブの神様でもある!
ゲームではビースト族でキャラクターを始めたプレイヤーや、俺のような獣っ娘がらみのイベントを優先的に選んでいる者には、度々出会う女神様だ。
もちろんゲームの中で出会った、イラストのまんまだったのですぐ判った。
―うわー、ズゲェ色っぽいイラストだったけど、やっぱ3Dになると迫力が違うわー。
女神様はごく薄い綺麗な布を纏っているが、その豊満なバストやフトモモはかなり露出していて、それだけでゴハン三杯はイケます!
「ウル様をいやらしい目で見るな!
このケダモノがぁ!」
「げはぁ!」
いきなり後ろから殴られた!
後ろを振り返ると、小学生位のキツネっ娘が、箒をふりがざして威嚇していた。
「これっ!アルシェーナ、お客はんになにするんえ!」
「だってウル様ぁ、こいつウル様をいやらしい目で…」
「だっても何もありまへん。
お客はんに謝りなはれ!」
ウルティナ様に叱られた、そのアルシェーナちゃんという子は、うーと暫く唸っていたが、
「…ゴメンナサイ」
と言って頭を下げた。
いえいえ!
こんなカワイイ獣っ娘に上目遣いで謝られたら、何でも許しちゃうっすよ~!
おもわず、頭をナデナデしてしまいました。
「子供扱いするな!
このエロザルがぁ!」
「ごはぁっ!」
今度は鳩尾に、一撃をもらいました!
「これっ!アルシェーナ!」
だがアルシェーナちゃんは、ぴゅーっと逃げて、向こうの柱の影に隠れてしまった。
「ホンマ、すんまへんなぁ。
あのコはウチの身の周りの世話やらをしてくれるコなんやけど、ちょっと人見知りするケがあるんやわぁ。
痛とうあらへんどしたか?」
―大丈夫っす!
あんな獣っ娘の一撃、逆にご褒美っす!
ウルティナ様には引かれたように見えたが、少しして上品に笑いだした。
「ホンに、ウチらビーストの娘ごがお好きなんどすなぁ。
『お方様』の情報どおりやわぁ。」
―『お方様』って誰ですか?
「ああ、『お方様』はウチらの上司みたいな方どす。
あんさんをコッチに連れてきたのもあの方どすぇ。」
―なるほど、たしか『上役』とか、あのキツネ目のニーチャンが言ってた存在か。
「あんさんは、これからの転生者のテストケースとなるヒトの一人どす。
あんさんの情報はウチらで、共有しとるんどすぇ。」
―個人情報保護の精神とかは無いっすか…
「まあその辺は、また今度お話ししまひょうか。
時間もあらへんことやしねぇ。
―今来てくれはったということは、『神前契約』の受領を了承しはったんどすなぁ?」
―へ?
すいません。
女神様の京都弁は付け焼き刃なので、間違っていたらご容赦下さい。
m(__)m