アジトで就寝
俺はいま焦っている。
マンガ的表現なら、後ろ頭にタラタラと汗が流れまくっているだろう。
ミールさんは、俺のすぐ横で既に静かな寝息をたて始めている。
ってか、はやっ!
ホントに寝ちゃったの?
彼女の魅惑のネコミミさんはペタリと閉じており、時おりピクッと音に反応している。
しっぽさんは、彼女のスラッとした太ももに巻き付いている。
あのスバラシイ横で寝れるというのかっ!
思わず、生唾を飲み込んでしまいましたよ。
―って、いやいや!
別に俺の横て寝たからって、その隣で寝なさいって言った訳じゃないでしょう!
勘違いするんじゃないつーの。
―いや、ダメなら、こんなすぐ横で寝ないでしょ!
別にナニするわけでもないんだから、気にする方が逆にいやらしくね?
―なに言ってんのオマエ、目ぇ覚めた時俺が目の前で寝てたら、彼女悲鳴あげちゃうよ?
などと俺の頭の中では、テンシな俺とアクマな俺のSDキャラがせめぎあっていた。
おもわず周りを見回したところで、ジェファーソンさんと目が合った。
なんだか複雑なジェスチャーをして、最後にいい笑顔で親指を立て、サムズアップした。
たぶん訳すとこうだ。
―あっちのテント(フリードが寝泊まりしてたやつ)にベットがあるヨ!抱っこして連れて行ってヤリな。ガンバリナヨッ、グッドラック!
…なにを頑張るんじゃぁぁっ!
同じくジェスチャーでツッコミを返した。
もお色々と邪魔くさくなったので、ミールさんより少しだけ離れた所に【毛皮(良質)】をもう一枚出して、寝る事にする。
あとその前に、更にもう一枚出して、ミールさんの上に掛けておく。
夜番は皆さんで交替でしてくれるようだ。
お言葉に甘えて、今晩はしっかりと寝させてもらおう。
暫く彼女の寝息が気になって寝付けなかったが、やはり俺も連日緊張していたのだろう、それが助けがきた事でその緊張の糸が切れて、知らない内に眠ってしまった。
…
―程なくして俺は妙に息苦しくなって、目が覚めた。
「ブフォ?」
俺の顔面には、恐ろしく柔らかい何かが押し付けられている。
余りの柔らかさに息が出来ない!
しかも苦しいのに、なんか気持ちいいよ!すげぇ、良い匂いがするし!
「ウニャウ~」
「っ!」
俺の頭上から、ミールさんの声が聞こえてきた。
状況把握!
…
…
この柔らかさは、彼女の『アレ』ですかぁぁぁっ!
まてまて!彼女は寝た時、革鎧をつけたまま寝ていたはずだぞ。
だがこの柔らかさは、まさかのダイレクトォ!布越しの感触だ!
―もしかして彼女、寝る時脱ぎ癖のあるヒトですかっ?革鎧って、そんなに簡単にぬげるの?
ちゅーか、俺、彼女から1m位は離れて寝ていたはずだけど?
―もしかして彼女、脱ぎ癖だけでなく、寝相もけっこう悪いのかっ?
おまけにコレ、抱きつき癖つきですかっ?
そう、今になって判りました。
俺はミールさんにがっちりホールドされ、彼女の胸の谷間で窒息死されかかっているのだ!
彼女の両腕は俺の頭部に巻きついており、彼女の顔は俺の頭頂に乗っかっている。
それに片足を俺の腰に巻きつかせていて、俺は全く動けない状況だ。
「フゴォォッ!」
「ニャァ~ン」
やめてっ!
まじで苦しくなって身体を少し動かしたら、色っぽい声をだされた!
もう俺の色んなトコが限界だよ!
俺は必死になって彼女を起こさないよう、ジワジワと彼女の両腕のホールドを外し、ひとまず窒息死の危機から脱した。
…その時彼女の左手の甲にある紋様が目に入った。
紋様は複雑な文字を組み合わせたように見えたが、もちろん俺は見たことなど無い。
そして何気なくその紋様を触ってしまった。
―その瞬間、俺の視界は光の爆発に支配された。