イベント"アーザン復活"
「オレが何か話すと思っているのか?」
フリードは鼻で笑って、バカにしたような視線を俺にむける。
俺はそれを無視して、話を続ける。
「アンタらが今まで集めたイケニエってのは、何人位なんだ?」
「だから話すわけがない…」
「最低でも数万人は必要なのは解ってるんだろうな?」
「なにっ!?」
遮って言った俺の言葉に、フリードは驚きの声をあげる。
その表情で十分だ。
彼らが集めている人数は、まだそう多くない。
もちろん犠牲になってる人達が少ないからといって、良いはずがない。
たとえ一人であろうと許されざる事だ。
だがちょうどいい。
フリードに『アーザン復活』の事を話してやろう。
その反応でどこまで知っているのか、わかるだろう。
先にも少し話したが、"不死者の王アーザン"の復活は『アレス』の世界を震撼させた大災害だった。
ここよりはるか南部に、数多くの小国家が並立つ『南部諸王国連合』という国家の集合体があった。
その宗主国『ダレンガルド』の首都ザナ=ラウドで災厄がおきたのだ。
災厄といっても、完全に人災である。
時の宰相、サラファン・エズマールが、最初は富国のため、後には自分の私利私欲のために"不死者の王アーザン"を召喚しようと目論んだのだ。
当初は敵国の兵士・他国の旅人などを生け贄にしていたが(この行方不明者の調査で、プレイヤーが目論みに気付く)、最終的に追い詰められた宰相サラファンは、自国の首都ザナ=ラウドの民を全て生け贄に捧げてしまう。
―その数、ざっと10万人。
「なっ!じゅ、10万人だと…」
当時の南部諸王国連合は『アレス』界で第三位の国家だった。
その中でも宗主国『ダレンガルド』は繁栄を極め、首都ザナ=ラウドは交易の要衝として栄えていた。
その都市の人々が、都市を覆う巨大な魔方陣のもと、一瞬でアーザンの供物となって消えた。
その頃には半ばアーザンに意識を喰われていたサラファンと、アーザンを信奉する教団の仕業だった。
こうして"混沌神"とも呼ばれる、"アーザン"がほぼ完全な状態で復活をとげたのだ。
「………。」
さらに"アーザン"復活の影響を受け、世界各地で封印されていた邪神・魔獣・魔導兵器などが復活、世界中を巻き込む大災害となったのだ。
ここにきて当時いがみ合っていた各国は一致団結し、"アーザン"を倒すべくザナ=ラウドの近郊の平原で、決戦の火蓋が切られたのだ。
「っ!」
この時、フリードは何かに驚いたような顔をした。
「なにか?」
「…いや、別に。それよりも先を教えろ。」
―考えてみたら、ここでもう少し不審に思うべきだったんだよなー。
後から思えば、カンペキにフラグだったんじゃん。
だがその時は、フリードは終始驚きの表情をしていたので、あまりおかしいと思わなかったのだ。
とにかくその平原で、人類と混沌神との最終決戦の火蓋が切られ、その戦いで何とか人類は"アーザン"の封印と言う形で、勝利を手に入れる事が出来た。
完全復活には、10万人もの生け贄でもまだ足りなかった事と、依身となった宰相サラファンでは、その器として不十分だったのが幸いしたのだ。
しかし"アーザン"復活に伴って現れたモンスター達に、それ以降も人々は苦しめられる。