アジトで一泊目Ⅱ
腹が一杯になって、本格的に眠くなってきた。
さすがに昨日からの徹夜と、今までの戦いの疲れがどっと襲ってきた。
焚き火を前に、火の番に"ゴブリンシャーマン"を、捕虜の監視に"グレイウルフ"二頭と"レッサーデーモン"にお願いして、後のモンスター達も【カード一覧】に戻す。
疲れ知らずの彼らとしても、今まで頑張ってくれたのだ。
夜中に一度起こしてもらって、交代でみんな休みをとろう。
そこまで指示をしたのが限界だった。
俺は崩れるように、地面に敷いた【毛皮(良質)】の上で眠りに落ちた。
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どのくらい眠ったのかわからないが、"グレイウルフ"のにくきゅーパンチで目を覚ました。
目覚まし担当をちゃんと守ってくれている。
周りを見ると、すっかり夜もふけているようだ。
―マスター、テキダゾ
"グレイウルフ"の視線の先、森の暗闇に同じ"グレイウルフ"のカーソルが見えていた。
…ええー、少しは眠らせてくれよな~。
たぶん干し肉を焼くいい匂いと、今まで多数のヒトが居て近寄り難かったのが、その数が随分減って襲い易いと判断のではないだろうか。
ぐるりを見渡して確認した所、数は8体、レベル5が2体であとは全てレベル2という弱小団体だ。
ちょっと"ヒルジャイアント"でも出して、ビビらして追い払おうかと思ったが、またやってきても面倒なので、倒すことにした。
あとちょっとやってみたい事がある。
それともうひとつ、これで【強化ガード(N)】の使い方を決めた。
―それはまた後にして、とにかく目前の敵を倒そう。
こっちが何もしないのをいいことに、もう柵の前まで出てきて、唸り声をあげている。
俺はわざと挑発するように柵に近づき、そのまま門のある入口へ狼共を誘導する。
「ガアォ!ガゥッ!」
柵のすぐ向こうで、2mを超える猛獣が何匹も
吠えかかってきているのだ。
前世でこんなシーンに出くわしたら、怖くて立ち竦んでしまっていただろう。
だが今は殆ど恐怖を感じない。
いやー、慣れってコワイわ。
そうこうしている内に、入口に到着した。
俺はおもむろに入口の門を開放した。
「ガァオッ!」
門を開けると矢のように、突っ込んでくる。俺の方に三頭向かってきて、残りの五頭は捕虜達の方へ走って行く。
むこうは監視役に就いていた、"グレイウルフ"達と"レッサーデーモン"で大丈夫だろう。
俺の方に襲いかかって来る三頭を避けながら、"ゴブリンシャーマン"に【ダークネス】の指示をだす。
「ヒャンッ?」
情けない声を出して、敵"グレイウルフ"全部に『盲目』のバッドステータスが付く。
途端に彼らの動きがめちゃくちゃになる。
こうなればこちらの圧勝だった。
ただ最後の一匹を倒す前に、俺は【ヒールオール】のスキルを使う。
回復のエフェクトの光が、仲間達に降り注ぐ。
―そしてついでに俺にも。