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嫌われ者の、赤毛の子。

作者: 葉月 未兎

昔々ある処に、スカーレットという赤毛の女の子がいました。


スカーレットはいつも悪さばっかりしていたので皆からの嫌われ者でした。

そんな彼女を守ってくれるのは、村一番の偏屈爺さんただ一人。


大人になって騎士団に入団しても、スカーレットは皆からの嫌われ者でした。


馬鹿にしたりおちょくったり、その癖剣の腕はいいから皆彼女を嫌っていました。



そんなある日の事、スカーレットと他十数名の騎士とで討伐隊が組まれました。

近くの山で魔物が異常発生し、近隣の村から討伐の依頼があったからです。


出発から幾日かたち、騎士団に討伐隊が壊滅したことが知らされました。

騎士団の皆は驚きました。


Bランクの魔物とはいえ、被害のあった近隣の村の見舞いと復興の手伝いに、編成された討伐隊のメンバーは騎士団の精鋭陣が半数しめていたからです。

幸い、誰一人亡くなる事も無くリハビリ次第ではまた騎士として働けるようにはなるだろう、と言う医師の診立てに皆は安堵しました。


そして、それを聞いた騎士団の皆は口々にこうも言ったのです。


「スカーレットは死ねばよかったのに」、と。


その声に答えるように、他の騎士が次々と目覚め退院していく中、彼女だけは中々目を覚まさしませんでした。



それからです、騎士団の中で諍い事が絶えなくなったのは。


皆些細な事で苛立ち、争い、いつしか騎士団はバラバラになってしまいました。


あまりの現状に、団長は隊長陣を集めこうなってしまった原因を探るべく会議を開きました。

しかし、思ったように捜索は進みません。


遂には団員全てが参加する、大掛かりな会議まで発展させ騎士団内の不和の原因を探ることになりました。


そして、その大掛かりな会議でわかったことは、これまで騎士団の均衡が保たれていたのは、単にスカーレットの存在があってのことだったと言うことでした。


騎士団の雰囲気が険悪になる度、彼女はわざと悪役になり騎士団内に波風が立たないようにしていたのです。


その事実に行き着いた彼等は、彼女にしてきた数々の所業を悔やみました。


しかし、後悔するには遅すぎた。


眠りにつく彼女を見舞う者は、たった一人の味方だった偏屈爺さんを除いて誰一人いません。

彼女を蔑んできた彼等は、己が所業を思い出し見舞うことも出来ず、ただただ時間が流れていくだけでした。


そして一番最初にミヨソティスの花が咲いた日、遂に彼女は長い眠りから目を覚ましたのです。


その知らせを聞いた騎士団の皆は一様に喜びました。



しかし、その喜びも長くは続きませんでした。


眠りから覚めた彼女は以前の彼女とは全く違ってしまっていたからです。


あんなに長かった髪をバッサリ切って、あんなにコロコロ変わっていた表情も無くなって、でも剣の腕だけは健在で。


あまりの変わりように、皆以前のように言いがかりをつけたり、喧嘩を吹っかけたりしてみましたが、彼女は一切返してこず、まるで無関心のようになってしまったのです。


「スカーレットは死ねばよかったのに」


その願いが叶ってしまったのだと誰かが呟きました。



昔々ある処にスカーレットという嫌われ者の赤毛の女の子がいました。

彼女は自ら進んで嫌われることで騎士団の平和を守っていました。


ある日大怪我を負って帰ってきた彼女に誰かが言いました。


「スカーレットは死ねばよかったのに」


神はその願いを叶え、彼女はいなくなってしまいました。


その後、騎士団の皆が幸せに暮らしたかどうかは誰にもわかりません。


ただわかるのは、嫌われ者の赤毛の女の子はもう何処にもいない、という事だけです。


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