第六話【envy's nightmare】
はい、今回は二つの悪夢について。
一つは不吉な夢。
一つは不遇な夢。
勢いで書いたところがあるので、クオリティはめちゃくちゃ低いです。いや、低くなるクオリティも無いんですが。
……なんかこう、前書きになるネタがありません。
では、第六話、どうぞ。
――――何処とも知れない場所
真っ暗な空間で、俺は突っ立ってた。
なんでここにいるのかは知らない。けど、不思議と落ち着くというか、嫌な感じがしない。
歩いても何も見えなくて、誰もいない。ちょっと不安になるけど、でもなんとなく自分の知ってる場所みたいで。
『こんにちは』
突然何もないところから人が現れる。暗い中、ニコッと笑う口だけが見えて少し不気味。
『どう、こっちの世界は? 楽しい?』
俺のことを知ってるのか? お前は一体?
『ワタシのこと? そうだなぁ……アンタの合わせ鏡とでも言っておこうかな』
不真面目にすかして話す。まるで俺のことなんて眼中にないように。
しかし合わせ鏡ってなんだ。まさか、俺の生き別れた兄貴とか実は大親友のカ○ンとか……
てことはもしかして俺は暗黒騎s
『違う』
ですよねー。
じゃあ、一体お前は何なんだ。
『特異点ってやつだよ』
『ワタシとアンタは、鏡を挟んで生まれた存在。でも完全な鏡じゃない。アンタが病気になってもワタシはピンピンしてるし、ワタシが怪我してもアンタは痛みすら感じない』
……じゃあ同じ日に別の場所で生まれた双子みたいなもんか。
『近いけど違う。まあそれはどうでもいんだよ。ワタシがアンタに会いに来た理由は』
『アンタの魔剣をワタシに返してほしいってこと』
俺の魔剣? 俺のレヴィアタンのことか。でも、これは俺が司令官からもらったものでお前には一切関係ないはず……
『それは元々ワタシの剣なの。早く返して』
どうも根拠に欠ける。別にこの剣に愛着があるとかじゃないけど、渡したくはない。本来なら返すべきなのかもしれない。でも、今の俺には必要なものだから。
『どうしても?』
……どうしても。いや、そこまでこだわることも無いんだろうけど、とりあえず今は駄目だ。
『……そう。やっぱりか』
『なんでアンタなんかにその剣が……ワタシの方が絶対使いこなせるのに……』
『なんで!』
不意に目の前の影が動いた。跳びかかってきた影をとっさに体をひねって避ける。紙一重で躱し、影は勢いよく通り過ぎていく。
すれ違った影を見て、血の気が引いた。その姿に恐怖を覚えた瞬間、
――ッ!!
[おれは しょうきに もどった!]
目が覚めて勢いよく体を起こした。他人の私物が散らかる、自分に割り当てられた部屋だ。
(……夢、か)
周りを見てみるが特に変わった様子はない。時計を見ると午前2時過ぎ頃を示している。
(しかし恐ろしい夢だった)
ボロボロの服に手入れされていない黒髪と殺意に満ちた真っ赤な目。思いだしただけでゾッとする。そして最後の言葉。
『ツ・ギ・ハ・ナ・イ・カ・ラ・ネ』
全身から嫌な汗がわき出てくる。今鏡を見たら、間違いなく青い顔をしているだろう。
(も、もうこのことは考えないようにしよう、他の人も寝てるし。)
そうは思っても、今眠ったらまた同じ夢を見そうでなかなか寝つけず、目を開けたままベットに横たわって何もない天井を見つめていた。
――――食堂
「おまえ、昨日だいじょぶだったか? かなりうなされてたぞ」
俺の部屋から二部屋以上離れたところに寝ているはずのエンマが尋ねてきた。こいつの耳は大丈夫なのだろうか。
「まあ、心配するほどでもないよ。大丈夫」
そう言って笑ってみたが、少し不自然だったのか心配そうに俺を見ている。
何はともあれ、ここでの生活はなんとなく分かってきた。特に変わったこともないし、任務に駆り出されない限りまったりと過ごせそうだ。
――――個人部屋、801号室
「おい……」
爽覇は部屋のクローゼットを開けて一言漏らした。彼は強制的に連れてこられたため、生活に必要なものは何一つ持ってきていない。せめて着替えぐらいは、ということでメンバーに相談したところ、各部屋のクローゼットに何着か入っていると聞いた。
そこで確認してみたのだが……
「なにこれ?」
まず出てきたのは全身タイツ。伸縮性があるので苦しいことはないだろうが、見た目、つまりデザインがすごい。たらこ天使を彷彿させる形。これはもうダサいという言葉を超えた無の境地に達している。
折角なので、この全身タイツの説明書きを読んでみた。
「えぇと、ホコリが付きにくく油汚れに強い新素材を使用しています……って知るか! もっとデザインを考えろよ!」
みんながわざわざ私服を持参しているかよく分かった。誰もこんなん着たくねぇよな。
よく思い出してみれば、ここにでこれを着ている人は居なかった気がする。
「これ以外は! もっとまともな服は無いのか!」
服を撒き散らかし、必死にまともな服を探す。朝からクローゼットを漁るのは三日前に寝坊したとき以来だ。
パラッパパラッパッ♪
「オーバーオール? でもなんで白をチョイスしたんだ」
テッテレー♪
「なんだよこのド派手な衣装。パーティグッズここに入れんなよ」
sparking!
「このオレンジの胴着はまさか伝説の……あっ、駄目だ『界』だからまだだ」
Oh...yeah...
「今度は青いつなぎ? 一体誰が?」
「や ら な い か ?」
「!?」
「お、おいっ! 誰だ今言ったの! 怖いからやめろ!」
ギャーギャーと一人、部屋で絶叫し続ける爽覇。ルームメイトは困り顔で立ち尽くしているのだが、今の爽覇にそんなことは考えられない。あれもダメ、これもダメ、そういって一時間が過ぎようとしていた。が、一向に着られそうなものが見つからない。
そこに、最悪の展開が訪れる。
「ソウハ、任務だ。早く出てこい!」
ドアの向こうからエンマの声が聞こえる。非常にまずい。チームはみんな準備を終えているというのに、自分はまだ着替えすら出来ていない。
「ちょ、ちょっと待って」
「仕方ねぇやつだな。分かった、40秒で支度しな! そうじゃないと丸腰で連れてくからな」
爽覇に与えられたこの40秒は、彼にとって今後の人生を大きく左右する決断をしなければならない重大なものだった。今更服を取り出すのでは時間がかかりすぎる。
つまり、今までに出した強者たちから選択しなければならない。
時間は刻一刻と迫ってきている。この服を着るのは嫌だが、下着姿で行くのはもっての外だ。
「あと20秒。19、18、17、16、15、……」
気楽な声でカウントダウンがされる。時間がない。
「もうどうにでもなれ!」
そういって爽覇は手に取った服に着替え、剣を持って勢いよくドアを開いた。
さあさあ、爽覇は何を着ていったんでしょうか?
それは次回のお楽しみ。
最初の悪夢は夢落ちでしたが、夢の中の彼女は今後も出てきます。
そこ、タイトルが文法的におかしいとかそういうことは言わない。
それで次回なんですが、実はもう一作別の案が浮かんできて、そっちも書いてみようかなと。ほら、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるっていうじゃないですか。
ということで同時進行。ネタが思いついた方からどんどん書いていきます。なのでこっちの進行速度がさらに落ちると思いますが、ご勘弁を。
ではまた次回、お会いいたしましょう。




