プロローグ2【PPMU】
二話目でいうのもなんですが、この小説は基本的に主人公と第三者の二つの視点から書いていきます。後々メインキャラの視点になることがあるかもしれません。その時はまえがきにて説明します。
気絶した爽覇はどうなったのか? それではどうぞ。
――――どこかの建物
目覚めると、ベッドの上で寝かされていた。どうやら、気絶している間にどこかへ運ばれたらしい。
それにしても相当な威力だったらしく、当てられた箇所が軽く焦げている。意識を取り戻した今も若干しびれが残っていて、起き上がるのに苦労した。
しかし、ここは一体?
「気が付かれましたかな?」
少し掠れたような老人の声。声のした方向に振り向くと、その声の主はローブに身を包み、護衛らしき人を数人を引き連れてこちらに歩いてきた。
顔を見ると大きな傷があり、護衛もなんかゴツイ。あの、もしかして俺、ヤバいとこに首突っ込んだかもしれない。無駄かもしれないが、ここは何か言われる前に謝らなきゃ!
「あ、あの! すすす、すいませんでした!!」
少し間を空けて老人が口を開く。
「いえいえ、それはこちらの言い分です。使いの者が手荒な真似をして申し訳ありません。彼女には厳重に注意しておきました」
流暢な、それでいて敬語の突き放すような冷たさとは真逆の、包み込むような温かさがある喋り方。何かしてくるような感じもないので、どうやら大丈夫そうだ。
「申し遅れました。私はこの世界の自治組織『PPMU』の最高司令官、オレーワ=カミナンデスと言います」
「あなたを呼び出したのは他でもありません。世界の平和を維持するために我々の組織の一員として協力していただきたいのです」
「そう言われても……俺にはそんな力はないし、第一『この世界』ってどういうことですか? 国は違えど世界は一つでしょう?」
「なんと、事情の説明すら聞かれていなかったのですか。申し訳ありません、使いの者にはきっちりと言っておきますから」
「いやいや、俺が話を聞かなかっただけで、あの子は何も悪くないです」
「そうですか。では私が説明いたしましょう。ここではなんです、場所を変えましょう」
そう言われて、俺はその司令官という人についていった。
――――応接間
さっきの部屋から移動して、『応接間』と書かれた部屋に入り、ソファに腰かけて司令官の話を聞いた。
まず第一に、この世界は俺の居たところとは別の、俺からすると異空間の世界で、よくある話だが、魔法が存在する世界らしい。俺が気絶させられたのは電撃系の魔法だという。
だが、部屋の中を見る限りこちらの世界と同じ物が並んでいて、魔法のようなオカルト的なものは見当たらない。信じがたいと言ったら、目の前で魔法を使って炎を出すところを見せてもらった。
人によって使える魔法のレベルが違うが、ある程度は誰でも習得出来るらしい。
そして次に、なぜ俺が選ばれたのか。
その理由は、単純に魔力が強いから。元の世界の人間であろうと魔力を持っていて、その使い方を知らないため、今のような魔法が扱えないそうだ。
テレビなんかで特集される不思議な能力は、無意識に魔力を使用した結果であり、同じような魔力を持っていれば誰でも行えるらしい(ただし、個人差はある)。
その魔力というやつを俺も持っているようなんだが、いまいち実感がわかない。
「なんか信じがたいなあ」
「そうでしょうとも。私どもと致しましても、容易に理解していただけるとは思っておりません」
「まあ、なんていうか、俺に出来ることがあるんだったら、協力しますよ。どうせ向こうに居たって暇なだけだもの」
俺がそういうと、部屋に居た人達がおおっ、とざわめいた。話をしてくれた老人も、どこか緊張の解けた様子だ。それだけ理解されるのが難しいと思っていたのだろう。
「そういえば、選ばれたのって俺以外にもいるんですか?」
「ええ。ですが時期はあなたと違います。最近の方でも、三年になるかと。もちろん、いままで来られた中には元の世界にお帰りになった方もいます」
ということはつまり、俺は現時点で一番最後に入隊した、当たり前の話だが新入生だ。それにしても三年って、結構離れてるなあ。
「それではこの件は、承諾、ということでよろしいですか?」
「はい。お役に立てればいいんですが」
「そんなに謙遜なさらなくても。あなたには十分すぎるくらいの素質がありますよ。ではこちらに来てください。重要な事がありますので」
座り心地のいいソファを惜しみながらも、俺はその部屋を後にした。
今回でプロローグは終わりです。次回からは本編、ですが二、三話ほどグダグダします。
司令官の名前には元ネタがあるのですが、分かる人も分からない人も笑ってくれればいいかなと。




