アオサの味噌汁_簡潔版 その1
「どうしてアオサの味噌汁を出すんだっ!!
妹が食えないことを知ってるだろっ!」
朝夫は妻・真夜を激しく叱責した。
真夜は慌てたように
「ごめんなさいっ!うっかりしてたわ!
でも、夕子さん、豚肉の生姜焼きは食べれるでしょう?
それにレタスとトマトのサラダも大丈夫よね?」
夕子は戸惑った表情でウンと頷いた。
朝夫はイライラした様子でビールの入ったコップを飲み干し、
ガンッ!
とテーブルに叩きつけた。
「さっき連絡しただろ!
『ひとり暮らししてる妹に家庭の味を食わせてやりたいからよろしく頼む』
って!
なのに妹の嫌いなアオサを出すなんてっ!!
オレの面子をどーしてくれるんだっ!
お前のこと、実家の家族全員に、
『良く出来た嫁だ』
って言ってんだからなっ!
ったくっ!使えねーなっ!」
まだブツブツと呟きながら、
ズズッ!
朝夫が味噌汁を啜った。
夕子は最近の様子を聞かれ
「貧血気味で疲れやすくて悩んでるんです」
真夜は
「あらっ!少し運動するといいわよっ!
ウォーキングでもいいのよ!15分でも!
健康になるし元気が出るのよ~~~!
私も昼間、近くの山に出かけたりして運動してるのよ~~!」
と会話が弾んだ。
食後、夕子が帰ると、ソファに座りゲームに夢中になっていた朝夫が、急に口元をおさえ
「・・っうぅっっ、気持ち悪いっ!・・・吐きそう、それに、目が回る・・・・救急車!・・・呼んでくれ・・・」
朝夫が気を失うと、真夜はオロオロした様子で急いで119番通報した。
ピッ!
スマホの通話終了ボタンを押したあと、倒れて動かなくなった朝夫を見ながら、真夜はこう思った。
(その2へつづく)