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アウトオブあーかい部! 68話 みどり先輩は悪い子

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。


……ではなく、正門からちょっと歩いた帰り道。


部活もないので、ひいろは見つけたネコを数えながら帰路についていた。




「8匹……今日は随分とネコを見かけるな。」




まだ正門から5分も歩いていないのに、見つけたネコは二桁になろうとしていた。




「これだけいるなら、1匹くらいは触れたりするんじゃないか……?」




いつもは目を見られただけで動物に逃げられるひいろは、ちょっと期待してネコに歩み寄ると




「あ……やはり逃げられてしまうか。」




道ゆくネコ達は全速力でひいろから逃げ出した。




「やはりダメか……。」




小さくなっていくネコの後ろ姿を見送っていると、後ろの方から




「そこどいてぇぇえ〜〜〜!!??」




こちらに向かってみどり先輩が全力疾走していた。




「え……!?」




……後ろに大量のネコを連れて。




「赤井さん避け




(おびただ)しい数のネコに一瞬怯んだひいろが避けられるはずもなく、みどり先輩と正面衝突して2人で倒れ込んだ。




「「あだっっ……!?」」




「いてて……。なん、




ひいろが起き上がり顔を上げると、みどり先輩に追いつこうとしていたネコが漏れなく踵を返し、ひいろから一目散に逃走した。




「だ……?」


「いてて……すみません。」


「いや、ワタシは大丈夫だ。それよりも……怪我はないか?」


「は、はい……///また、助けられちゃいましたね///」


「『助ける』……?」


「私、どうもにゃ……ネコをもの凄く引き付けてしまうようでして。」


「あのネコの波はそれで?」


「はい……。今日に限ってに……ネコが嫌う柑橘系の香水をつけ忘れてしまってあの有様です。」




みどり先輩はバツが悪そうにはにかんで見せた。




「ワタシからしたら羨ましい限りだけどな。」


「さっきも、一睨みしただけでみんな逃げていきましたもんね……。」


「……、」




ひいろは少し黙って考え込むような仕草をすると、




「……みどり先輩。今日はワタシが家まで送ろう。」


「え……///いや、悪いですよそんな!?」


「だがなぁ……さっきの有様だと、あのネコを()いて帰らなきゃいけなくなるぞ?」


「う"……!?」


「並んで歩くのが嫌なら、ワタシは少し後ろを


「嫌じゃありませんっ!」


「そ、そうか……?」


「寧ろ夢……大歓迎です!」


「夢?……まあ、良かったよ。」




こうして、2人はみどり先輩の家を目指して歩き出した。




「……凄い。まるで結界でも貼ってるみたい。」




ひいろとみどり先輩が近づくと、たむろしていたネコ達が風に飛ばされるホコリのようにはけていった。




「はは……お役に立てて良かったよ……。」


「あ、すみません!?」


「いや、いいんだ……。」


「……あ!そこのコンビニ寄っていきません!?」




みどり先輩はひいろを落ち込ませてしまったのをなんとか取り返そうと、視界に入ったコンビニを指差した。




「コンビニ……?」


「……買い食いはダメ、でしたか?」


「ダメじゃない!行こう!」




ひいろは目を輝かせてみどり先輩の手を掴み、ズンズンとコンビニに向かって早足で歩いた。




「ええ……!?」




赤井ひいろ、初めての買い食い。




「フフン♪」


「コンビニ入ったときのメロディってちょっとワクワクしちゃいますね♪」


「はっ!?///……すまない、つい浮かれてしまった……///」


「もしかして、コンビニ初めて


「流石にコンビニは何回も来たことあるぞ!」


「そうでしたか。」




2人はレジのホットスナックコーナーに並んだ。




「ただ……、こうして帰りに誰かと寄り道するのは、初めてだ。」


「……。」


「……みどり先輩?」


「すみません。ちょっと意外だなと思いまして。」


「あさぎやきはだとは帰る方向が違うからな。」


「真面目なんですね♪……あ、レジ開きましたね。すみません、黒糖あんまんと肉まんとピザまんと中華まんとあんま


「 」


「ん"ん"……!じゃなくて、黒糖あんまんを『1つ』ください。」


「……あ!ワタシは肉まんを1つ。」




2人は買い物を済ませコンビニから外に出た。




「なんだか、ちょっと背徳感だな……///」




ひいろは肉まんのホクホクした湯気を見つめて呟いた。




「癖になりますね♪」


「みどり先輩……。」


「私ってけっこう悪い子なんですよ?幻滅しちゃいました……?」


「い、いや!」




ひいろは目いっぱい首を横に振った。




「そうだ、肉まん半分こしないか?」


「いいんで……ん"ん"!悪いですよ。」


「本音隠せてないぞ……。」


「すみません……///せめて私の黒糖あんまんを


「いや、いいよ。みどり先輩、たくさん食べるんだろう?」


「へ!?あ、いや!そんなことは


「……だったらさっきレジで言いかけたのはなんなんだ?」


「う……///」


「たくさん食べるのは悪いことなんかじゃないさ。それに……初めての買い食いで丸ごと食べるのは荷が重い。」




ひいろは肉まん持つ両手に力を込め、半分に……




「うまく半分に割るのってむずかしいんだな……。」




肉まんはだいたい4対6くらいに裂けた。




「こういうのは慣れですよ。」


「……。」




ひいろは少し肉まんを見つめると、




「……みどり先輩、」




6の方を差し出した。




「え……!?それは流石に


「ワタシは良い子だからな♪」




ひいろは、遠慮するみどり先輩に半ば無理やり6の方を持たせた。




「……ありがとうございます///」


「お礼が言えるなんて、みどり先輩はなかなか良い子なんだな♪」


「…………これは、再教育の余地ありですね。」


「だな♪」




ホクホクした空気に包まれ、2人はまた歩き出した。

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