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婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています  作者: みゅー


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「密輸どころじゃないよ〜! ノビーレドンナの大金星だよ! 盗難事件のこともだけど、よくあの極悪男爵家が主犯だってわかったね〜! もうさ、密輸どころじゃないよ!」


「そうでしたの?」


「そうだよ! 国外に工場まで作っちゃってさぁ〜。定期的にこっちに密輸してたんだよ〜? よく今までバレなかったよね〜」


 アレクサンドラは思っていたよりも大ごとになっていることに驚きながら答える。


「それが本当ならとんでもないことね」


「ね〜。わざわざ帳簿とかつけててさぁ。あっでも、ぜぇーんぶ証拠も押さえたし、工場長もいつでも取っ捕まえる準備万端! ぶっつぶすよ〜!」


 嬉しそうにそう言うファニーを見つめながらアレクサンドラは呟く。


「あなただけは敵にしたくないわ」


「でっしょ〜! でも、ノビーレドンナのことは特別のお気に入りだから、なにがあっても僕たちは友達だよ!」


「ありがとう。そうね、(わたくし)たちはなにがあっても友達ね」


「そうでしょう! あっ、それとドレスが今日の夜にはできる予定だから、あとで着てみてね!」


「もうドレスを仕上げたの?! よくこんな短期間でできるわね」


「そりゃそうだよ〜。だって作るって言ったでしょう?」


「それでも、もう少し時間がかかると思っていたわ」


「僕を誰だと思ってるのさ〜。まぁ、そういうことで、ノビーレドンナにはさびしい思いをさせるかもだけど、僕はドレスの最後の仕上げしないとだからまた後で来るね〜」


 ファニーはそう言うと、部屋を出ていった。


「ファニー、あなた風みたいね」


 アレクサンドラはファニーの去っていく後ろ姿を見つめた。


 そのとき入れ違いにセバスチャンが部屋へ入って来ると言った。


「お嬢様、旦那様から馬車の準備をしたと言付かってございます」


「わかったわ、今行くわ」 


 そうして準備されている馬車に乗り込むと、トゥール侯爵家へ向かった。






 アルナウトはエントランスでアレクサンドラを出迎えた。


「待っていた。君のことは最近よく国王陛下から話を聞くからね、会いたいと思っていたところだ」


「わざわざお招きいただきありがとうございますわ、トゥール侯爵」


「うん、それでテオドールから聞いたが私が暗殺されるって?」


「はい。口にするのも憚られますけれど」


「そうか、私はさほど気にしていないがな。まぁ、こんなところでする話ではないことは確かだ。とにかく私の書斎で話を聞こう。こっちだ」


 アレクサンドラはアルナウトにエスコートされ、書斎へ向かった。


「で、私がどうやって毒殺されると?」


 お互いが椅子に座った瞬間、前置き無しにアルナウトはそう切り出した。


「わかりませんわ」


「わからない? だが毒殺されると?」


「そうですわ」


「そもそもなぜ私が暗殺されると知っている」


「それは、うちのセバスチャンがそういう情報をつかんだんですわ」


「ふむ『うちのセバスチャン』が、ねぇ?」


 アルナウトは少し馬鹿にしたようにニヤニヤしながらそう言うと、自分の髭をゆっくりと撫でた。


 アレクサンドラはムッとしたが、落ち着いて答える。


「はい、セバスはとても信用ができますわ」


「で、今日はそれだけを伝えるためにわざわざ私に会いに来たというのかね?」


「いいえ、できればどうやって毒を仕込んだのか探りたくてこちらに伺いました」


 すると、しばらく黙り込んだあとアルナウトは渋い顔で口を開く。


「アレクサンドラ、私にとって暗殺の対象となることは初めてではないんだよ。忠告さえしてくれれば、あとはこちらでなんとかできる。心配はいらない。君も王太子殿下の婚約者として忙しいはずだろう? 早く帰って刺繍でもしたほうがいいんじゃないのかな?」


 アルナウトの言っていることはもっともだ。だが、それだけ厳戒態勢を敷き、細心の注意を払っていても暗殺されてしまったのだ。


 きっと通常の警備方法では防げず、それは百戦錬磨のアルナウトの護衛の目すら掻い潜ってしまったということだ。


 アレクサンドラ自身も、どこに毒が仕込まれているか見つけられる自信はなかったが、それでもここにいる者にそれが阻止できないことだけはわかっているのに、そのまま帰るわけにはいかなかった。


「ですが、侯爵……」


 アレクサンドラがそう言った瞬間、誰かが書斎のドアをノックした。


「今は誰も入れるなと言ってあるはずだ!」


 アルナウトは不機嫌そうに、そうドアに向かって叫んだ。


「旦那様、それが急用なのです」


「仕方ない。わかった、入れ」


 すると、トゥール家の執事が慌てたように足早に書斎へ入って来ると、アルナウトに耳打ちする。


「なんだって?!」


 アルナウトは驚いた様子で執事の顔を見た。


「やぁ、アルナウト。私の婚約者が来ていると聞いてね、訪ねてみたんだが」


 その声にアレクサンドラも驚き声のした方を見ると、そこに澄まし顔のシルヴァンが立っていた。


 アルナウトは慌てて立ち上がると、急いでシルヴァンに駆け寄り中へ招き入れた。


 シルヴァンは軽くアレクサンドラに微笑むと、その隣に座った。


「殿下、まさか殿下がおいでになるなんて……。アレクサンドラ、君は知っていたのか?」


 それにシルヴァンが答える。


「彼女は知らない。驚かせようと思って訪ねてきたからな」


 そう言うとアレクサンドラに向き直る。


「アレクサンドラ、テオドールから報告を受けたがなにか考えがあるそうじゃないか。僕も話を聞きたい」


 アレクサンドラは思わずアルナウトの顔を見た。アルナウトがアレクサンドラに無言で頷いて返したので、シルヴァンにこれまでの顛末を話して聞かせた。


「確かに、君の屋敷にいる執事はとても優秀だ。ありとあらゆる情報を持っている。だが、その知り得た情報をうまく使えるかどうかはまた別問題だろうな。アレクサンドラ、君はそれができると先日証明した。僕は君を信じよう」


 それを聞いて、アルナウトが驚いた様子で言った。


「ですが、殿下。私もこの道のプロです。そこは信用していただきたい」


「アルナウト、僕は君を信用していないわけではない。ただ、彼女は今までとは違う視点を持っていると思う。だから今回だけ少し付き合ってくれないか? もちろん、君のやり方を妨害するものではない」


 アレクサンドラはここまで自分を擁護してくれるシルヴァンに驚きながら、その意見を肯定するようにアルナウトに向かって大きく頷いて見せた。


 するとアルナウトは諦めたように言った。


「わかりました。殿下がそこまでおっしゃるなら。ですが、今日一日だけですよ?」


「トゥール侯爵ありがとうございますわ」


 アルナウトは不満そうな顔をしたまま頷くと、椅子に腰掛けアレクサンドラに訊いた。


「で、君はどうしたいんだ?」


「はい、卿の本日の予定をお聞きしても?」


「いいだろう」


 アルナウトはそう答えると執事に目配せし、それに答えるように執事は頷いた。

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