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4警護の騎士がついて行くことになりました


 それからガイル大司教の元にゴールドヘイムダルの大隊長がやって来た。

 早速、大司教の執務室に入って行く。

 アリシアは大司教に呼ばれてそこに同席する。お客が来ると言うのでいつもの聖女の服を着ている。

 白を基調とした胸元に金色のオーディン神の御印が刺繍されたものを。

 黒髪はきちんと結い上げられ橙色の瞳の虹彩は赤色や金色にも見える目で扉を叩く。

 「入りなさい」

 いきなり3人の男性から視線を受けてアリシアは躊躇した。だっていつもはこんな所に来ることもないから。

 「大司教どうして私を呼ばれたのです?」

 だってこんな男の話し合いみたいなこと関係ないんじゃ?

 「アリシアいいから座りなさい。レオンこの度はご苦労。それで?」

 アリシアは渋々と言った顔でソファーの端に腰かける。


 「これはこれは聖女様。いつも国のためご苦労様です」

 レオンはゴールドヘイムダルの隊服の白いダブルブレストを着て金色のマントを腕に抱えたまま挨拶をした。

 さすがに勲章などは今日は付けてはいないみたいだけど。

 私だって王都の騎士隊の服くらいは知っている。聖典祭や式典などにはゴールドヘイムダルの騎士隊も同行するからだ。

 だが、直接話しかけられたのは初めてだ。


 「レオン。アリシアに挨拶はいらん!」

 「ですが…はい、仰せの通りヴィルフリート・バルガンを連れてきました大司教」

 アリシアは眉が吊り上がりそうになるのをこらえてレオンに頭をぺこりと下げる。

 ったく!相変わらず偉そうなんだからと心の中で突っ込みを入れる。ほんと、そんなところが嫌いですから大司教。

 さっきは少し大司教も大変なんだなんて思ったけどやっぱり好きじゃないと彼を完全否定する。

 そんな事を考えながらもふたりの男性の顔をうかがう。何?この人達すごいんじゃ‥

 レオンさんは逞しくて頼もしいおじ様って感じで、もう一人の彼は年も近そうだしお顔立ちも整ってて私にぴったりかもなどと思う。


 「ああ、この男か」

 「あの、俺どうしてこんな所に連れて来られたんでしょうか?」

 そう聞いたのはもちろんヴィルフリートだった。

 少し前まで街中の待合宿カペラにいて確かバートに刺されて…でも、気が付いたら俺はどこも怪我なんかしていなかった。どういう事なんだ?

 ここに来る間もヴィルには何も言ってもらえなかった。っていうよりレオンも詳しい事を知らないらしい。


 「バルガン君をここに連れて来てもらったのは、これからアラーナ国に行く聖女の護衛を頼むためなんだ。レオン君にも事情を説明しておく必要があるからよく聞いてくれ。ただし。ここで聞いた事はすべて極秘事項として君たちの胸にしまっておいてくれ。国王やフィジェル元公爵と一部の人間しか知らない事なんだ。これは国家を揺るがす大問題なんだ」

 「もちろんです、約束します。ヴィルもわかってるよな?大司教こいつも行政府の人間ですから国家機密の扱いはわかってますので」

 レオンがヴィルの顔を見た。

 「はい、もちろん約束します」

 「ああ、君が国家機関の人間での良かった。やはり君は選ばれたんだろうな」

 大司教はそう呟いた。

 そしてゆっくりと起こった事を話した。もちろん神殿、引いては自分に都合の悪くなるそんな事は話さなかった。

 「実は神殿にあるオルグの泉で事故が起きたんだ。魔界の門番であるドークが現れてオルグの泉の底にあった暗黒の揺らぎと言う玉を取り出してしまった。そのため魔界の扉が開いてしまい魔界に住む魔狼が二頭逃げ出した。そのスコールとハーティは太陽と月を恨んでいて太陽や月を食いちぎってしまうかもしれないんだ。もしそんな事が起きればこの世は闇の世界になってしまう。そんな事になればもう人間は生きてはいけないだろう」


 *注。この世界は大きなお盆のような上に陸地や海がありその先には何もないと考えられている。太陽や月は交互に昼間と夜を照らし地面の下には魔界(死後の世界)があると思われていた。

 そんな世界を作ったのがオーディンの神々であると人は信じている。*


 「そんな…どうすればいいんです?」

 レオンは驚愕して声が震えている。ヴィルも驚いて声が出ないらしい。

 「ああ、アラーナ国の王子であるシーヴォルトは魔族の血を引いているらしい。魔族は魔界ともつながりを持ち強大な魔力を持ちはるか昔あの魔狼を倒して魔界に閉じ込めたと聞く」


 アリシアはどうして彼のところに行くのかやっと理由を知った。

 「大司教、だからシーヴォルト殿下に助けを求めるとおっしゃったんですか?」

 「ああ、アリシアこの話を知らないのか?起源説に出て来る話だぞ。まったくお前は何を勉強して来た?聖女としてお前を教育して来たと思っていたがまだまだ足りなかったようだな」

 「だって起源節なんて眠くなるばかりで…すみません。それでシーヴォルト殿下ならそいつらを倒せるって事なんですよね?」

 「ああ、そうだ。彼はこの大陸で魔族の血を持った唯一の人間。魔族にそんな事を頼めるとも思えん。彼ならば…魔族の血を半分引いている彼ならばきっと魔狼を倒せるに違いない」

 「それで俺達は何を?」

 「ああ、バルガン君にはアリシアと一緒にアラーナ国に行ってくれ、アリシアを、聖女を守ってもらわなければならん。彼女にはシーヴォルト殿下にどうやっても頼みを聞いてもらえるように魅了魔法を使うやもしれんからな。そうなれば聖女の純潔が危険にさらされる。バルガン君アリシアを守れるのは君しかおらん。しっかり頼むぞ。それにシーヴォルトと協力して魔狼退治に全力を尽くしてほしい」

 「ええ、それはもちろん。ですがそんな大役、俺でもいいんでしょうか?」

 ヴィルはレオンもいるのにと思ってしまう。

 「ああ、そう思うのは無理もない。実は、君は魔界の入り口でさまよっていたんだ。それを見た時には驚いたよ。私が君を引き戻していなかったら君は今頃もう死んでいたはずだ。これもきっと神のお導きだ」

 「それって…やっぱり俺おかしいと思ってたんです。刺されたはずなのにって。じゃあ、俺は一度死んで戻って来たって言う事なんですか?」

 「ああ、きっとこの役目を果たすためにだろう。だから君を連れて来てもらったんだ。いきなりこんなことを無理を承知で頼んでいるがどうか引き受けて欲しい」

 そしてついでにヴィルフリートの家柄や親の名前。家族の有無などを聞き出している。


 よほどの剣の使い手なのかと思ったが…大司教。魂を救ったからですか?

 アリシアはほんとに彼で大丈夫なのかとさえ思ってしまう。

 確かに見目麗しい男ではあるけれど…










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