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虹色水晶の採掘場



 シャルロッテとジオスティルはエルフェンスに乗って、アスラムは黒いエルフェンスと同じ形をした獣(シャルロッテがノアリンドと名付けた)に乗って、ウルフロッド領の狼の背の部分に広がる山脈の入り口、虹色水晶の採掘地に向かった。


「こ、これは、怖くないのか……!」

「上に乗って暴れなければ落ちない」

「アスラムさん、高いところ苦手ですか?」

「そういうわけではないが、空を飛んだ経験などないのでな」


 エルフェンスと並走しているノアリンドの上に乗るアスラムは、背中に弓と、矢筒を背負っている。

 ただ守られるだけなのは情けないといい、得意な武器を持ってきたようだ。

 それはクロスボウと呼ばれる扱いやすいが殺傷能力の高い弓の改良品である。

 

 昔は手引きの弓が主流だったが、今は狩猟の際も矢を飛ばすのにあまり力のいらないクロスボウが使用されている。

 ただ、一撃で致命傷を与えてしまうその武器を、忌み嫌っている者たちもいる。

 辺境ではそんなことを言っていられないので、弓はほぼクロスボウなのだと、変わった形の武器を見て不思議そうにしているシャルロッテに、ジオスティルが説明をしてくれた。


 ノアリンドに乗ったアスラムは乗りはじめの時こそやや怯えていたが、少しすると慣れたようだった。

 

 かつては鉱山に向かう道が整備されていたようだが、今はどこまでも果てしなく続いているような連なる山脈の麓は、すっかり木々に覆われている。

 発掘した虹色水晶や鉄鉱石、燃焼石や、その他鉱物。

 それらを運び出すために洞窟の中にはトロッコのレールが敷かれている。そしてその重たい鉱物を加工場や街に運ぶために、道は整備されていて馬車が通れるようになっていた。


 それは、かつての話だ。

 魔獣が蔓延るようになって二十三年。整備された道は草や木に覆われてけもの道の中に、ぽつぽつと煉瓦がのぞいている。

 遠く昔に滅んでしまった国を連想させる景色だった。

 背の高い広葉樹の生い茂る葉が、森に暗く影をつくっている。光の届かない森には、菌糸類がおおくはえている。


 転がる岩や倒木は苔むしていて、土からは雨上がりの匂いがする。

 食べられるのか判然としない毒々しいきのこがはえている。


「作物は育たないのに、木々やきのこははえる。不思議です」

「そうだな」

「土地は枯れて、作物は芽を出さない。それでも生まれる植物は、食えないものばかりだ。まるで、この土地が俺たちの滅びを望んでいるかのように」

 エルフェンスとノアリンドから降りて、シャルロッテたちは山の麓にぽっかりとあいている採掘場の入り口に並んだ。

「滅びを望んでいる?」

「あぁ。ジオスティル、お前が滅びを運んできた。そう――俺たちは言っていた。ずっと」

「アスラムさん……!」

「今は、そうは思っていない。俺はお前を信じることにした、シャルロッテ。お前には精霊の声が聞こえる。精霊は、ジオスティルの責任ではないと言っているのだろう」

『なによ、さんざんひどいことを言ったくせに』

 シャルロッテはぷにちゃんを抱えている。すっかりぷにちゃんの上に座るのがお気に入りになっているウェルシュが、頬を膨らませて言った。

「では、行こうか。二人とも、俺の傍から離れるな」

「はい。離れません」

「……あぁ。何かあればすぐに知らせる」

 地面に唐突に表れた巨人の口のように、岩肌に開かれている巨大な虚からはトロッコのレールが外まで続いている。

 まだ朝といえる時間帯で、空は晴れている。けれど採掘場の中には光源がないのだろう。

 入口から少し奥まではかろうじて目視することができるが、その先はひたすら闇が続いていた。

 ジオスティルは両手を広げる。

 その体の周囲に、ぽわぽわと光る玉があらわれる。


 光玉は、闇を照らした。シャルロッテも持参していたカンテラの中の太い蝋燭に、ジオスティルに頼んで火をつけて貰う。

 魔法の炎だけでは、ジオスティルに何かあったときに消えてしまう可能性があるからだ。

 何もないことを――願ってはいるのだが。

 採掘場の中にはエルフェンスたちは入れない。食料などの荷物を、アスラムが担いだ。


 三人は、採掘場の奥へと進んでいく。

 ロサーナの夫も、この暗い採掘場を進んだのだろうか。たった一人で。

 そして、帰らぬ人となった。


 できればまだ生きていると信じたい。だが、ロサーナが諦めてしまったという気持ちも、よくわかるような気がした。

 トロッコが通ることのできるぐらいには広い採掘場は、岩壁が崩れてこないように太い木枠で固定されながら、奥へ奥へと広がっている。

 手前から掘っていくのだから、採掘場の手前はもう鉱物は掘りつくされてしまったのだろう。

 虹色水晶は、見当たらなかった。 

 洞窟状になっている通路に、足音は反響して響く。

 奥へ奥へと進んでいくほど、不気味でおぞましいなにかが、闇の奥からこちらを見つめているように、シャルロッテには思えた。



お読みくださりありがとうございました!

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