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5 ダンジョンに挑む者たち

 街の冒険者ギルドへ到着するころには、すっかりと日が暮れていた。

 そろそろ仕事の時間である。


「よぉ、顔を出す頃だと思ったぜ」


 受付のカウンターに肘をついたガタイの良いスキンヘッドの男性が言う。

 彼は冒険者たちを取りまとめるギルド長である。


「ええ、ダンジョンへ入る許可を頂きにきました」


 青年はニコリとほほ笑んで答えた。



 この世界にはダンジョンというモノが存在する。



 人間たちと敵対する魔の者たち。

 それらを統べる魔王。


 魔王が人間の住む領域にダンジョンを芽吹かせると、大量のモンスターが発生する。


 ダンジョンから這い出たモンスターは村や町を襲う。

 人間たちは冒険者を派遣して討伐するのだが……これがあまり上手くいっていない。


 冒険者の力ではダンジョンを封印することができず、モンスターが外へ出ないように押しとどめるのがやっと。

 人々は常に破滅と隣り合わせの生活を送っているのである。


 勇者がいればダンジョン攻略も容易になるが、何人もいるわけではないので手が回らない。

 そのため地方の辺鄙へんぴな土地にできたダンジョンは攻略されずに放置される場合が多い。


 ダンジョンからはモンスターが湧き出て周囲に被害をもたらすが、悪い影響ばかりではない。


 モンスターの身体から取れる素材の中には高価なものがある。

 ダンジョンの周辺には素材を加工する工房が建設され、取引するための市場も開かれる。素材を採集するために大勢の冒険者が集まって街がにぎわう。


 皮肉にも本来有害な存在であるダンジョンが地方経済を支える基盤となっているのだ。


「ほら、名前だけ書いてくれればいいぞ」

「ありがとうございます」


 受付の男は左手で書類に必要事項を書き込んで書類を差し出す。

 青年は言われた通り、名前だけを記入して男へと返した。


「今年は何人くらい運ぶ気だ?」

「スタンピードの盛り上がり具合にもよりますけどね。

 10人は運びたいです」


 スタンピードとは、モンスターが異常発生する状況のことを言う。

 普段よりも多くの個体が深層から生まれて地上を目指す。


 本来であれば望ましくない状況なのだが、冒険者にとってはレアモンスターから採れる貴重な素材を手に入れるチャンスなので、大儲けするまたとない機会。

 これを逃す手はない。


 スタンピードが発生する時期には多くの冒険者がダンジョンへ向かう。

 当然のことながら死者も増える。


「噂で聞いたんだけどよ……

 今回は飛び切りヤバイらしいぜ。

 10人で済めばいいけどな」


 受付の男がにやりと笑って言うと、青年は困ったように頭をかく。


「いやだなぁ……忙しくなるのは困るんですけど」

「なに言ってんだよ。稼げ、稼げ。

 稼いで豪邸でも建てちまえ」

「僕は今住んでる小屋で十分なんだけどなぁ」


 青年は笑顔で答えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おわっ! シュールだなあ笑。 10人って死体か!! 会話の流れ的にモンスターも取るっぽいやんって思ってもうた。 レアマテリアルを狙う冒険者の骸かーーー。 キッつい仕事だなあーーー。
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