1 遺体を持ち帰ってくる者
本作にはグロテスクな表現が含まれています。
苦手な方はご注意ください。
「おお……勇者よ。
死んでしまうとは情けない」
勇者の亡骸を前に、王は重々しく呟く。
「すぐに蘇生の儀を執り行え。
休ませておく時間などない」
「「はっ!」」
王の命令に兵士たちが答える。
勇者は死んでも特別な儀式によって蘇る。
何度でも、何度でも。
「はぁ……いいよなぁ、勇者様は。
俺たちなんて死んだらそのままだぞ」
王が去ったあと、兵士の一人が勇者の死に顔を覗き込みながら言う。
「そうぼやくなって。
何度も無理な戦いを強いられるんだぞ。
勇者になるくらいだったら死んだ方がマシだ」
「それもそうだなぁ……。
そういや一つ疑問なんだけどさ。
この死体……誰が持って帰ってくるんだ?」
兵士は首をかしげる。
勇者が死ぬと、誰かが死体を運んでくる。
しかし、誰がその仕事を請け負っているのか兵士たちは知らない。
「噂によると、専門の業者がいるみたいだぞ」
「はっ、マジかよ?」
「俺も噂でしか聞いたことがない。
だけど実在してることは確かだ。
こうして死体が帰ってくるんだから」
物言わぬ勇者の亡骸を眺める兵士たち。
抜け殻となったその身体はなにも語らない。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
本作はおよそ10万字の文字数で、すでに完結まで書ききっております。
最後までお付きあいいただけたら幸いです。