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君は「聖属性魔力がありあまる」という作品を知っているか?

 君は「聖属性魔力がありあまる」という作品を知っているだろうか。


 それはかつて、小説家になろうの異世界恋愛ジャンルにおいて大変な人気を博した傑作の一つである。

 完結した現在もその面白さ故に根強く読まれ続け、多くのファンもいるであろう本作だが……――しかし。

 その完結までの道のりは、順調な上り坂ばかりとは言えないものであった。

 今回はこの作品について、少しばかり話していきたい。





 遡ること2019年、6月24日――この日小説家になろうの片隅で、その物語は紡がれ出した。



 「聖属性魔力がありあまる」



 タイトルにある通り、聖属性の魔力に目覚めた少女と周りの人々の、そのありあまる魔力をきっかけに巻き起こる悲喜こもごもな人物模様を描いた物語である。



 記念すべき第1話。

 そのPV数はなんと――“265”。

 私がもし、同じ立場だったならばこの時点でガッツポーズを画面に向けていただろう。

 それ言ってしまうほどにこの最初の掴みともいえる導入部分は成功していた。

 


 続く2019年、6月25日。

 第2話――PV数953。

 前日比にして約3・7倍。

 驚異的な伸びだが勿論これで終わりではない。


 2019年、6月26日。

 日間PVが1,700を越え。

 

 2019年、6月27日。

 PV数2,587。

 累計PVは5,500超を記録する。


 2019年、6月28日。

 ここで初のPV3,000越え。

 その後29日、30日と3,000の値を越えたり越えなかったりの日が続いた。

 

 この時点での掲載話数、たった7話。

 しかしながらその総PVは15,000を越え日間ランキング上位に食い込み、当時の化物作品と肩を並べるのもそう遠くはないと誰もが思ったことだろう。




 そして翌月2019年、7月。

 この月も順調にPVを伸ばしていくものと思われたが――ここで予想外のことが起こる。


 4日まで順調に伸びていたPV数が5日、6日と進むごとにどんどんと減り……7日にはPV1,000を切るほどになってしまっていたのだ。

 何故か?




 その理由は至極単純――更新が止まってしまったからである。




 事の発端は感想欄に書き込まれた感想、及びそれに含まれる指摘にあった。


 この作品は鉤括弧で強調される台詞を、個人が喋りきる前にいくつかに分けて区切る、という手法を使っている。


 これを朝、娘を送り出すお母さんを例にすると――



「今日は朝は晴れているけど午後から雨が降るらしいから、念のために傘を持っておくのよ。

 暗くなるのが早くなってるから帰りも気をつけてね」



 という文章がこの作品だと、



「今日は朝は晴れているけど午後から雨が降るらしいから」

「念のために傘を持っておくのよ」

「暗くなるのが早くなってるから帰りも気をつけてね」



 ――と、このような形になる。



 

 そしてこれを読みにくい、直すべきだという読者からの指摘が感想欄にいくつも書き込まれた。

 その結果、そのあまりの多さに作者は決心してしまった。




 ――この作品を未完で終わらせることを。




 彼らの主張は誤解を恐れずにいうのであれば、決して間違いとは言いがたいものである。

 通常、鉤括弧のペアで区切られる台詞は次の鉤括弧では別の人物の台詞であることが一般的である。


 ただ、この作品においてはよくよく文脈を読めば誰が話しているかを理解するのはそう難しいことではない。

 実際この問題を気にするほどのことでないという読者も多く存在していた。


 しかし、往々にして目につきやすいのは肯定(アクティブ)な意見ではなく否定(ネガティブ)な主張である。


 改正を求める彼らの指摘は何も間違いではない。

 しかし、しつこいくらいに何度も何度も、繰り返し行われるそれ。

 作者からの返答がありながらも止まることなく、時には誤字報告の機能も使い、執拗に作者へと改正の訴えをやめなかった。


 その後、何とか投稿を再開した作者であったが今回のことが楔となって心に突き刺さり続けたのか……それからの結果は先程も言った通りだ。

 止まぬ指摘の嵐によって完全に心折れた作者は、ある日遂に未完を宣言。


 かくして化物作品へとなっていくはずだった本作は完結を迎えることなく、エターナルの向こうへと行ってしまったのだった……






 ――とでも言うと思ったか?





 そんな訳がない。

 私は始めに言っている。

 この作品は既に完結していると、とっくの昔に言っている。

 ならば。

 ならばここから起こるのは――






 ――完膚無きまでの、圧倒的な大復活に他ならない……! ! !――




 2019年、7月29日。

 前書きにてこれまでの自らの未熟さや浅慮を謝罪。

 指摘を受けた部分を改善していくことや、応援してくれる読者の声に勇気づけられたこと。

 その暖かい言葉に励まされ、もう一度立ち上がり、最終話まで投稿を続けていくことを宣言したのだ。



 これを見た当時の私の胸中に溢れた感動をどう言い表せばいいだろうか。

 お気に入りの作品がある日突然消えてしまうあの虚しさ。

 それをまた味わうことになってしまうのかと思っていたところにこの、完結宣言である。


 苦しかったはずだ。

 辛かったはずだ。

 痛みすら感じていただろう。


 だが、負けなかった。

 それら全てをその身に負い、それでも尚と立ち上がったのだ。

 傷つくことを恐れず、作家として作品を世に出す楽しさを選びこの世界に戻ってくることを決意したのだ。

 これ時こそ、私がこの作品に、この作者に最後までついていくことを決めた瞬間だった。

 



 復活を遂げた勢いは止まることなく。

 そしてそれは実際、凄かった。


 まず、好評売り出し中での未完宣言が逆に注目を集めたのか。

 26日には驚異の303,779PV。

 次の日の27日も余裕の273,218PVだったりする。

 更に17日から平均で5,000PVくらいだったのが復活宣言以降、自分が確認する限り10,000PVを下回る日がなかった、といえばその凄さが分かるだろうか。

 何なら8月は30,000PVを下回った回がない。

 改めて言おう、化物作品であると。

 これを書くに当たって調べをする最中、変な笑いが出てしまったほどだ。




 そんな感じで大人気も大人気な本作ではあったが、全てのものには終わりがくる。

 それは本作においても例外ではない。


 2019年、10月24日。

 本編100話、3つの閑話を合わせ計103話。

 約4ヶ月という期間を走り抜け、多くのファンに惜しまれながらもその物語に相応しい堂々の完結で作品は締め括られた。


 かつて未完を宣言し、筆を折ろうと決意した作者は最早いない。

 そこには一つの作品をハッピーエンドまで書き切った、一人の偉大な作家へと成長した大きな背中があった。

 私は忘れないだろう。

 この作品があったことを。

 困難に負けず立ち上がった、一人の作家がいたことを。

 私は生涯忘れることはない。






 ――だが、話はこれで終わりではない。




 前置きが随分と長くなってしまったことを謝罪しよう。

 だがやっと、このことをお伝えすることができる。

 万感の思いを込め言おう。




 原作終了よりおよそ2年と10ヶ月。

 その名を「公爵令嬢シュロールは聖属性魔力がありあまる」と改名し、電子書籍となって出版することが決定したことを――!!!

 



 レーベルは数々の人気作を電子書籍化してきた“ミーティアノベルス”。

 イラストは第10回ネット小説大賞受賞作も担当された“Ruki”先生が描いて下さっています。


 まだ内容を知らないあなたも。

 Webで読んだことがあるあなたも。

 超絶美麗に描かれたシュロールの姿を見に、そして“小説家になろう”を実現した作者の作品をどうか、この機会にお手元に読んでいただきたい。


 発売日は8月9日。

 Kindle他電子書籍を取り扱っている様々なサイト、アプリなどから購入していただくことが可能である。

 また、一冊丸々のものとは別に、お買い求めやすくなった分冊版も合わせて販売予定なので、気になるが手を出しにくいという方にはこちらから入手し、続けて残りも購入して貰えたら一人のファンとして嬉しい限りだ。




 さて、長くなってしまったがそろそろこの場を締めよう。

 私はただの一人の読者。

 一般ユーザーに過ぎない。

 だがこれを読んで下さったあなたにもし、この言葉が届いたのなら。

 それだけでありあまるだろう。

 あなたに対する、感謝の気持ちが。




 それではまた、よい読書の時間を。

↓Web版「聖属性魔力がありあまる」

https://ncode.syosetu.com/n9549fo/


↓電子書籍「ネット文庫星の砂」(ミーティアノベルス)

https://www.hoshi-suna.net/

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