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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神に会った冒険者シリーズ

神に会った冒険者SS2(ホステスの情報共有)

作者: 島弘

 私はミミィ夜はスナックで働くホステス、夕方前にお店へ行き掃除をしながらお店の子とお客さんの話をする、遊んでいる訳ではなく情報の共有で誰か休んだ時にフォローしやすいように誰がどのお客さんにも対応出来るように重要なお仕事、お店に指名や固定は無い。


 今日の話の中心はノーバン(NO-BAN)の事の様で、もしもが有ってはいけないので名前は誰であれ「あの人」だけど私はいつも以上に耳を傾けてしまう。


「あの人先日お店の花を何やら触って種みたいな物を取っていたのよ、家で蒔いて育てるつもりなのかしらね訴えはしないけど窃盗よね、しかも小物臭いし貧乏臭い」


 あれ、この子が言ってるのってユリの花の()しべじゃないかしら、そもそも多くの花は咲き(ほこ)っている内に種なんて取れないと思わないのかな? 花粉が花びらにも付かないように丁寧に取ってくれていたから私は有りがたく思って静かに見ていたけど、大きな手で優しく花を包み雄しべだけを取っていた姿は真剣で魔力光が見えると思うほどかっこ良かったなぁ。


 何よりその事で花粉の被害を逃れたのは今苦情を言った彼女なのに気づいてないのかな? あの子は良く生け花に服を引っ掛けて花瓶を割っていたけどその花瓶も、ノーバンが落としても割れないのに美しい物や花を引き立たせる良い物に変えてくれてそれにも気づかないなんて……。


「あの人いつもの席から私たちの方を見ているのよ」

「そうそうだいぶ前だけど、私の方ばかり見ているかと思ったら客を送り出した直後に近づいて来たので怖くなって気付かない振りをして逃げちゃったわ」

「あの時はミミィが外連れ出してくれたのよね、怖かったでしょう?」

「え! えぇぇっと良く思い出せないかなでも何も無かったよ何か有れば騒いでいる筈だから」


「あの日ミミィは中々帰ってこないから心配してるのに、ママは『大丈夫よ』って軽く流すしミミィが帰ってきて『何も無かったよ』って言葉を聞くまで本当に心配だったのよ」


 本当は良く覚えてる、いつの間にかノーバンが出入り口近くへ行き其処に居たお店の子が逃げるように離れて行ったのを見て慌ててノーバンに訳を訊いたら、本題は離れた女の子の事じゃなく出て行ったお客様が心配らしく、でも自分が追いかけたら怖がれるから接客していた女の子に頼もうとしたら逃げられたらしい。


 それでも心配そうに追いかけようとしているから、ノーバンを止めて聞こえてない筈のママほ方を見たら一度頷いて出入り口に目配せで外出を許可してくれて分かってくれていた。

 ノーバンとママだけが分かり合っている気がして私も同じ所に立ちたいと嫉妬にも似たような思いを今でもはっきり覚えてる。




 私が様子を見に行くと言ったら「ミミィに何か有ったら大変だから俺も行く」と嬉しい事を言ってくれた。

 水の魔石を二つ握らせられたが、もう先に帰ったお客様に追いつくはずは無いと思いつつノーバンの後を追い武器屋の方へ探しに行ったら、その隣の防具屋の陰に蹲る(うずくま)様に倒れ口元には嘔吐物(おうとぶつ)が付着しているお客さんを見つけた。


 ノーバンの指示で私が口の中をすすがせ水も飲ませ介抱して、隣でノーバンが警戒するように守ってくれてとても頼もしいと思った。

 多分ノーバンは女の子を見ていた訳ではなくてお客さんの顔色や表情を気にしていたのね、お店の子も町の人も「ノーバンは女の子なら誰にでも優しい」なんて言ってるけど多分皆に優しい気がする。

 翌日、その時のお客さんに私はお礼を言われて頭まで下げられた、何しろ意識は(わず)かに有るものの吐き気は(ひど)く帰ろうにも体が動かなくなってしまい、どうにも成らない所に私が駆けつけたとの事で(かす)れる意識の中でも私の事だけを覚えていたらしい。

 だがノーバンの事は見えていなかったらしく本当の事を言いたいけど言えない、ママに帰ってきて直ぐに報告はしたけど、ママはお客様の事を思ってか? 「皆には内緒にするようにね」と口止めされた。

 でも私はその日の事を一生忘れないと思うノーバンから凄く嬉しい一言を貰えたから。




「あの人、先週なんて出入り口のドアを何度も開け閉めしてじろじろ見て外で何かしていたのよ、明け方とかに忍び込むつもりなんじゃ? 怖いわよね」

「それ怖いわね」

 あれ? 皆ドアの異常に気づいていなかったのかな? 確かに微妙な違和感で音が出るとか重いとかじゃなかったから分かり難かったけど、広めにドアを開けた時に僅かに「カクッ」と振動が手に伝わってきていた。


 でも確か今週の始めに違和感が消えていたので不思議に思い何度も試したから間違えない、ノーバンが直してくれていたのね、知らない人に勝手に触られ好き勝手されたら怖いけどママとノーバンの間で何か契約されているようだし、花瓶の入れ替えから食器の補充までママと二人で分かり合っていて本当は私も混ざりたいけどとにかくノーバンなら安心だわ。


 それに本当に嬉しい、直してくれた事もそうだけど皆が気づかない様な違和感に私と同じ様に感じてくれていた事に感激しちゃうな、ノーバンかなママかな気付いたの? ノーバンだと思う事にした、この話が聞けただけでも今日一日幸せで居られそう。


 その後もお酒の配達の事や飲み代の事、仕舞には容姿や町の噂と話が尽きることは無かった。




 その日お店が閉まってからこっそりママに訊いてみた。

「ママ今日の情報共有の話しで聴きたい事が有ってお時間いいですか?」

「良いわよ」


 まずは、その日の話題で気になる所だけを端的に話した。

「…………と言う感じでママとノーバンの間にお酒の仕入れ以外にも契約が有るのは予想出来るけど皆には説明しなくて良いの? 困った事に一部は怖がってましたけど?」

「あら? 私は困っても無いし怖くもないわ、むしろ助かる事ばかりなのよね」

「いえママがじゃなく皆は?」


「そうねぇ私には契約が有ったとしても公表する義務も無いし、ノーバンも私の不利益になるような事はしないのよね」

「今の話で何かの契約がある事は理解しました、もしミミィが皆に打ち明けても守秘義務もありませんよね?」


「あら、いけない子ね、確定もしてない情報を流しちゃうの?」

「今日のママは意地悪です」


「貴女もかしらミミィちゃん、本当の事を言って無いのは私だけじゃ無いのよね」

「え??」

「あら? てっきり私はミミィちゃんがノーバンの事を聞きたくて此処に来たと思ったのだけれど違った?」

「違います!! ぇっと怖がっている子が居たりノーバンが(いわ)れの無い(うわさ)をされたり、えっと皆が気付いてなくてそう言う事です」


「今の言葉を自分で理解できた?」

「……多分」


「そぅ、まず怖がっている子ね、競争相手が少なくなるのは歓迎なのよね」

「何となく分るような気もしますが何が言いたいのか分かりません」


「本当にそうなの? 謂れの無い噂も今に始まった事でもないし、それでも町での人気も高く不思議だと思わない?」

「それは何となく……、でも理由までは……」

「正確な理由は私にも分からないけど、ノーバンが噂を気にしてない事と噂よりノーバンを信じて理解してくれて見る目を持った人が意外と多いって事かしら? ミミィちゃん貴女もその内の一人じゃなくて?」


「じゃぁ理解して貰えるにはどうしたら?」

「そうしたいの? 無理に理解させようと話をして余計に悪感情抱かせたり競争相手を増やしたいの?」


「さっきから競争相手と何度も言っていますが何と戦っているのですか?」

「それを言わせたいの?」

「……ぃえ今はまだ敵わないから聞きたくないです」


「そぅ少しは素直に成れたようね」

「そんなことは……」

「いいわ皆が気付いてくれない事ね、先ほども言ったように気付いてる人も沢山居るわ、だからノーバンなら平気なのよね」

「そうじゃなくお店の子は?」


「これは内緒よミミィちゃん、私とノーバンの契約に気付いたから話すけど皆に自力で他人の良い所を見出して欲しいと思っているの、多分この業界では必要な事だから」

「え! それって……?」


「そう言う事ね、それからヒントをあげるけどノーバンの事で言えばミミィちゃんは今の所、五割から七割くらいかなぁでも近いうち全てを見つけられそうで怖いけど期待もしているのよね」

「……分かりましたノーバン以外にもって事ですね、有難うございます色々と気持ちが晴れました、今後とも宜しくお願いします」


「うふふ、流石に(さっ)しが良いわね、あまり敵に塩を送ろうとは思わないけど私のお店に居る内は教育もするし応援もするわ、今まで通り頑張りなさいね」

「はい有難うございます」


情景文をなるべく入れず前半は心の声を多めに後半はほぼ会話のみで特に後半の会話で二人の表情が想像出来たなら幸いです

文中花瓶を割れない物にと成っておりますが、多分金属製の物に代えたのだと思います。

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