#9 宇宙の真理
やはり、満点とは言えない星空の下。
湊は最大限の注意を払って自転車を漕いだ。
荷台に横乗りするリリーは、湊の腹に腕を回すようではなく、遠慮勝ちに服を掴んでいた。
落ちそうで不安だった。
「ね、湊様」
「へい。どうしました?」
「ヘイバン様はこの空があちらの空と同じと書かれていましたが……ここは向こうと違って月も一つしかないし、向こうと同じなんてちっとも思えません。ちょっとは同じ物も見えてる気もしますけど、どう言う事なんでしょうね?」
「うーん、同じものが見えてたってのが引っかかりますね。本当に同一だったのかな?どうです?」
湊の服に捕まるリリーは空を仰いだ。
「こんなに星は少なくありませんでした」
「星の数は当てにならない情報です。今は地上の光が多くて星が見えてないだけで、今もこの宙の向こうには星が大量にあるんだから」
「星がそこにあるのに見えなくなるなんて不可解です」
「はは、昼間だって星はあるけど、見えないでしょ。それと同じ事ですよ」
「昼間は星はありませんよ?」
それを聞くと、湊は思わず自転車を止めた。斜め後ろから付いてきていた桜も自転車を止める。
「……待って。ペネオラさん。動いてるのは大地?それとも空?」
「地面ですよ。ここは地面じゃないんですか?」
「よ、良かった。ここもちゃんと地面が回ってますよ。そっちも流石に天動説じゃないみたいで安心しました。そんなもん提唱してたら真理の理解なんて程遠いもんな……。ちなみに今立ってるところや周りに見える星々も球体って言うのも大丈夫?」
「もちろん大丈夫です!世界が丸で出来てるくらい子供も知ってる常識です。大地は天井界の真ん中で回っていて、更にその周りを星々が回っています。だからこそ魔法陣は円が多いんですから」
ホッとしたのも束の間、湊はタライが頭に落ちて来たような強い衝撃を受けた。その後、自分の頭の周りを土星や木星が回っている姿を幻視すると、それを振り払った。
「……世界は丸でなんかできてないしここは中心なんかじゃない。俺たちの立ってるところも一箇所に留まらないで動いて回ってるんです。君の言ってるそれは本当の地動説じゃない。地球の自転を織り込んだだけの、トレミーの――プトレマイオスの天動説です」
などと言っていると、桜の巨大なため息が響いた。
「何若い子捕まえて星語ってんの。オタク」
「これはまじで大事な事なの。ペネオラさん、帰ったら宇宙について教えます」
「ウチュウ……?」
「この星の外だよ」
「天上界です?」
「……それ。それが宇宙。まじで覚えて帰りな」
「うちゅー?って困ってんじゃん。あんたいきなりスペイン語で宇宙って言われてみなよ。日常会話じゃないのに難しすぎるって」
湊は今すぐにも宇宙の話をしたかったが諦めて再び自転車を漕いだ。
真理を学ばなければ魔法は使えないと言うのに、魔法を使うことが真理に近付く邪魔をしているとしか思えない。
地球が公転している事を知らなくても、地球の自転に気付ければある程度の魔法が使えてしまうため、プトレマイオスの天動説――地球中心説で満足しているのだろう。
湊の中にはあっちへ行ってそんなもんを有り難がっている魔術師各位をしばいてやりたい気持ちでいっぱいだ。間違いなく祖父もそう思っただろう。そりゃ本当の家にも帰りたいと思うはずだ。
書斎の科学百科を読み聞かせなければ。そんな事を思っていると――
「湊様、怒ってらっしゃるんですか?」
後ろから服をつんつん引っ張られ、湊は自転車を漕いだまま何も知らない可哀想な赤ん坊に返事をした。
「大丈夫。君のことはちゃんと俺が育ててみせるよ」
後ろで息を飲むような声がしたと思うと、リリーの手は湊の腰に少し巻き付き、背に額が当たった感触がした。
「……ヘイバン様……」
その呟きに、湊は何も返さなかった。祖父を思い出し悼んでくれる時間はいくらでもあるべきだから。
目的地の銭湯は決して大きくも新しくもないものだった。
桜と二人で自転車を止め、湊が纏めて金を払い男女に別れた。
護符探しと自転車でかいた汗をしっかり流し、先に入っている知らない老父に頭を下げて湯に浸かった。
老父の体は梅干しのようにくしゅくしゅの皺だらけで、何となく祖父を思い出す。
どっぷりと肩まで浸かると、思わず極楽のため息が漏れた。この暑い日に熱い湯に入る修行の心地いい事。温泉でもないただの銭湯だが、不思議と体の奥底で凝り固まっていた物が解けるようだった。
「はぁー」
白い湯気に包まれる中、湊は改めて先程リリーが最後に読んでくれた祖父の星の話を思い出した。
あちらの世界も、北極星や金星、昴、シリウスが見えていたのだ。
湊はそれを説明するため、三つの仮説を立てた。
一つ目は、リリーの言葉と湊が聞こえている言葉がたまたま噛み合っている可能性だ。
北極にある星、一番輝く星、六個や七個の連なる星団、太陽の次に明るい恒星。それらを指した言葉が、湊の耳にはこちらに存在する星達に結びついて聞こえてしまっているのではなかろうか。
これは大いにあり得る事だ。似たような星空で、祖父も見違えていたとか。
続いて二つ目は、太陽系のどこかの惑星に彼らの星があると言う可能性。
地球から程近く、見えている星々がたまたま似通ってしまっていると仮定する。
リリーが時を超えているので、今文明がなくともかつて文明を持っていたり、未来に文明を持つ場所でも構わない。
そうすると、二つの月があることから考えて火星だ。火星にはフォボスとダイモスと言う衛星が従っているし、一日の時間も地球と大差なく水だって存在する。ガス惑星ではないため人類が生存できる可能性はこの辺りで一番高い。
極め付けは北極星と仮定できる星を持っている事だ。地球から見た北極星は小熊座だが、火星では白鳥座が北極星として空に昇るはず。多少真北からはズレているらしいが。
ただ――火星の重力は地球の三分の一しか無く、もしそんな場所から地球に飛ばされて来ているとすれば、祖父達がまともに立っていられる理由が分からない。
うまくいきかけた仮説だが、二番目は破棄とする。一つ目の方が現実的だ。
最後に三つ目は、平行宇宙としての地球である可能性。
酸素、水、生命。そんな物が都合よくあちらこちらに生まれる何てことは考えにくい。祖父もリリーも重力や空気に疑問を感じていない。全く違う星で育っているなら――宇宙人だとしたら、ここまで地球人と同じ発達を遂げているとはあまり思えなかった。
別の地球ならば、あちらで魔法陣が発動して、こちらでも護符なんて物が発動できる理由にも多少頷ける。都合よく解釈するならば、暗黒物質のような謎物質がどちらの地球にも存在していて、片方の時空の濃度は薄く、片方の時空の濃度が濃いために決定的な差が生まれてしまった――とか。暗黒物質はそんな物ではないだろうと思えるため、一時的に魔法物質とでも呼ぶか。
魔法云々などと言っているのだから、正直言えば湊の中ではこの仮説が一番有力だった。
だが、月が二つあると言うことが湊に最後の結論を出させなかった。
何十億年も昔、地球が月を吐き出すように生んだ時に、あちらは一つでは無く二つ生まれてしまったのだとしたら、彼らの地球はここより小さい。地球が小さいなんてことが起これば重力が変わってしまうので大気を留めて置けない。そうなると生物が生きられない。
いや、奇跡的に何らかの星が更にぶつかる事で絶妙なバランスを手にしたのかもしれない。
そもそもここの地球と月の関係だって奇跡なのだ。
必死に考えても湊如きには答えを出せないだろう。
少なくとも、全く訳の分からない亜空間よりも気持ちよく受け入れられる。
湊は向こうの世界とここの世界は双子の地球説を採用することにした。
祖父が地形に繋がりを見出せなかったのはぶつかった惑星の数、地球と月の砕け散り方が違うことが原因だからと言う事で無視することとする。
いささか無理がある気もしたが、同じ星が見えていた理由にも納得できるし、文明は置いておいて、ある程度似た進化を辿って来た事の説明にもなる。――気がする。
湊なりに世界への理解を深めたところで、女湯の方から二人の楽しげな声が聞こえて来た。
――極楽ですねぇ。これも魔法じゃないんだなぁ。
――はぁー。リリーちゃんって意外と胸あるよねぇ。着痩せするタイプ?
湊は思わず男湯と女湯の間の壁の上部にある穴を見上げた。
――ん?なんですか?指輪を借りるべきだったかな……
――リリーちゃんってこっちもそう言う色なんだね。染めてるんだと思ってた〜。
こっち。湊は一瞬「こっち」を想像をしようとしたが、湊の中で何かがもたげる前に風呂を上がった。
(……俺って紳士)
やれやれと息を吐く。相手は小娘のダブルパンチだ。
温まりすぎた体はせっかく風呂に入ったと言うのに滝のように汗が出た。
「あっちぃー……」
立ちくらみしそうで、しばらく椅子に座ってから着替えをした。
帰るのにまた自転車を漕ぐかと思うと、寝る前にもう一度風呂に入りたくなる気がする。
上半身裸で扇風機の世話になり、せっかく来たのだから昭和の残り香を摂取するためコーヒー牛乳を飲んで過ごした。
更衣室を出て、そのまま外に置かれているベンチで夜風に当たった。
大して涼しくもない。
見えやしない宇宙を眺めていると、二人が出て来た。
「――あ、ここにいたんだ!たまには銭湯も良いもんだねぇ」
「湊様、ありがとうございました!広いお風呂ってやっぱり良いですね!」
「はは、二人とも良かったね。じゃ、コンビニ行く?」
「行くー!あそこのコンビニ花火売ってるかな!」
三人は近くのコンビニに寄り、大きな花火セットを買って家路についた。
◇
「ま、魔法です!神火です!!」
瞳を輝かせるリリーに、湊はすぐさま首を振った。
「ただの炎色反応です。赤はリチウム。黄色はナトリウム。紫はカリウム。青いのは銅。分かる?」
「はぇ〜…銅しか分りません」
「これは――」湊が説明を始めようとすると、その頭にシタッと手刀が下りた。
「バカ!そんなつまんない話しない!」
「つ、つまんない!?これはこの若人を教育するために必要な事でだな――」
「つまんない!!綺麗な心で花火ぐらい楽しませなさいよ!!」
確かに一理ある。
リリーはどれに火を付けてもオーバーなくらいに喜んだ。
湊は余計な事を言いそうなので、熊のようにのそりと濡れ縁へ向かった。
濡れ縁にはビールと枝豆が出されていた。
「湊ぉ〜。女の子にあの話はないでしょ〜」
突っかけを放り出して座る。我が家の男子高校生――もとい父はビール臭かった。
「でも何にも知らないんだもん。宇宙のことすらよくわかってないし」
「女の子は宇宙も花火も、キラキラしてて綺麗ね〜!ってくらいでちょうど良いんだよ。嫌だろ。いきなりビッグバンの話されたら」
「別に?」
「だからモテないんだぞ。――お前も飲むか?」
湊は余計なお世話だよ、と返し、お盆の上に乗せられている未使用のグラスを一つ取った。
「飲む」
父とビール片手に枝豆を食べていると、母と祖母も花火を始めた。
「うーん、良い光景だなぁ。これから毎年こうだと良いのになぁ。湊もそう思うだろう?」
「ほぼほぼ同感。――でも、こんな夏、もう二度とないんだろうな」
設置型の花火に桜が火を入れると、火山のように火が噴き上がった。側面にはスーパーボルケーノと片仮名で書かれている。物騒だ。
歓声の中、赤い柱は時間と共に小さくなって最後は消えてしまった。
どれだけ美しく見えたとしても、何にでも終わりはある。
もともと感傷的なタイプだ。
湊はまた寂しさを感じた。
「同じ夏は来ないかもしれないけどな、もっと良い夏を迎えられるかどうかは湊次第だぞ?もう後二日しかないんだ。うだうだ自分に言い訳してると本当に時間がなくなる。告白するなら今のうちだ」
「……父さん、ペネオラさんはそう言うんじゃないって百回言ってるだろ。本当に生きる世界が違うし、俺ももう十代じゃない」
「十代じゃないから何だ?父さんは祖父ちゃんが三十三で、祖母ちゃんが二十六の時に生まれたんだぞ。十八と二十四が何だって思うだろ?」
「……そう思うと祖父ちゃんやべぇな」
「ははは!お前も子供の時に何回か祖母ちゃんの方のひい祖母ちゃんにあったろ?ひい祖母ちゃんは湊みたいな感性だったから、最後までずーっと親父が嫌いだったよ。あの時代だし、七つも年の離れた実家もないような男は嫌だったんだろうな。お袋は末娘だったし、きっとすごく可愛かったんだって今なら分かる。だからずっと反対されて、昔にしては遅くに結婚した。人生なんてそう言うもんさ」
父は酔ってしまいそうな赤い息をぷはぁーと気持ちよさそうに吐いたが、湊はそう言う気分になれなかった。
「……父さんさぁ、息子に家の中で女子口説けって言って恥ずかしくないの?」
「別にぃ。父さんは母さんを家でナンパして口説いたから」
「……うわぁ……我が家大丈夫か。生徒にそんなことされて祖母ちゃんはまじでハラハラしたろうな」
「さっきリリーちゃんが読んでくれた通り、祖母ちゃんは祖父ちゃんを神社でナンパしてんだからそうでもないんじゃないか。こりゃ血だろうね」
廊下に寝転がった父はご機嫌だった。酔っ払って紅潮している頬はサンタクロースのように赤かった。庭で遊ぶ女性陣に手を振り、手を振り返してもらうとデレリと顔を溶かした。
「はぁ……なんだかなぁ……」
「何だ?不満そうだな」
悩みなんか一つもなさそうな父に言われると、何となくカチンと来る。湊は一気にビールを飲み下した。
「単なるホームステイしてる子と一々そう言う関係になってたら体も心も保たないでしょーよ。第一、妹って言ってんじゃん。寝る」
グラスをお盆の上に置いて立ち上がると、父は湊を見上げた。
「でも、お前一目惚れしてんだろ?」
湊の足は一瞬止まりかけたが、「してない」と背中を向けたまま返して和室を通り過ぎ、仏間に引きこもった。
仏間の端にはコピー用紙を切った護符の素が寄せてある。
湊は祖父の書いた護符と自分の書いた護符を見比べた。きちんと文字の意味は理解しながら書いたが、何故その文字が必要なのか分からない物がいくつもある。
これが魔法になる気がしなかった。
湊の文字だけが未完成だ。
(……これが発動しなかったら来年も同じ夏が――)
そんな事を考え、即座に思考を破棄した。
欄間から差し込んでくる光を頼りに、湊は辞書を開いた。
祖父の護符は祖父の護符として参考にして、自分だけの護符を書いてみるかと悩む。
国によって使う字も字が持つ力も違うようなので、湊の理解で作れるオリジナルの護符を作れた方が発動する確率が上がる気がする。
湊は何か良さそうな言葉と字を探した。
知識を形に落とし込めれば良いはずなので、漢字だけに拘らず、ひらがなもカタカナも数も式も使って、自分の言葉で。
襖の向こうからはリリーと桜の楽しそうな声がした。
◇
実家に帰ってきて六日目の朝は久しぶりに爽やかで、腰や首に痛みもなかった。
朝食の用意を進める母と祖母を尻目に台所でお茶を入れ、湊の護符の散らばる仏間に帰る。
祖父の仏壇に一杯目を置き、隣の和室に続く襖をそっと開けた。
何か音がしているのでどちらかは起きているはずだ。
音が鳴らないように布団を畳んでいた桜と目が合う。
「おは」
「おはよ」
簡潔に挨拶を交わし合う。押入れの前はリリーが寝ていた。
「茶、飲む?」
「飲む。リリーちゃん起こす?」
小さく丸くなって眠る様子をチラリと確認し、湊は首を振った。
「起きたらで良いよ」
「そうね」
桜が仏間に入ってくると、漆喰の壁に背を預けて二人で並んで座った。
茶を淹れるとゆらりと湯気が上がり、しばらくそれを見つめた。
留まる事なく形を変え、散り、消えて行く。
「明日にはもう帰るんだねぇ」
「あっという間だったな」
「楽しかったね」
「本当に」
「また一緒に泊まりに来ようよ。不幸がある時だけ集まるんじゃなくて」
「そうだな。正月は俺いっつも帰ってきてるし、桜も昔みたいに来るといいよ」
「分かった。また連絡するね」
「……うん」
「次は四十九日の納骨の時だね」
妙な寂寥感だ。もう皆でここに暮らそうと言いたくなるような。だが、それが現実的ではない事は十分に良く分かっている。
だから――「桜、時計買いに行くんだろ。来週とか、再来週とか。来月とかさ。四十九日の前に行こうよ。いつでも良いから」
お茶を眺めながらの誘いに、桜は振り返った。
「毎週遊ぼ!来週も再来週も!」
「……せめて月一で良い。胃もたれする」
「デートしてやるって言ってんだから有り難く受け取りなさいよ」
「血縁者でデートって」
湊が苦笑すると、桜は口を尖らせて少し俯いた。
「従兄妹は結婚できるもん」
「ははは、子供の頃も言ってたっけ。懐かしいな」
「法律変わってないから仕方ないじゃん」
「まーね。お前大学に好きな奴とかいないの?もう今年で卒業なんだから青春しないともったいないぜ。社会に出るとまじ出会いなさすぎて死ぬよ」
「……いない。頭悪い奴に興味もないし。湊はさ、化粧品関係なのに出会いないの?」
湊は自分で振った話題だが面倒臭い話だと思った。
立てている膝に寄り掛かるようにするとため息を吐いた。
「俺のいるみたいな研究室は女子の絶対数が少ないし、いても出会いって感じじゃないかな。もっと開発に近い所には結構いるけど。ま、皆良い人だからそれはそれで良いんだけどね」
「変なの。女の人多そうなのに。でも、それなら湊は一生独身だ」
「うるさいわい」
話していると和室の方からごそごそとリリーが活動する音が鳴り始め、湊は空になった湯呑みをお盆に乗せてから立ち上がった。
襖の当たる柱をノックしようと手を上げると、背中に声が掛かった。
「湊。湊が三十になるまで彼女いなかったら結婚してあげても良いよ」
振り返った湊は笑った。
「子供の頃も言ってたの覚えてるよ。孤独死は免れそうだな」
桜は少し呻き声をあげ、湊は柱をノックした。
「おはようございまーす。開けて良いですか?」
尋ねると襖は自動で開いた。
和室に溢れる光に湊の瞳孔はキュッと小さく狭まった。
リリーの髪は朝日に照らされ、まるで光を紡いだように煌めいていた。
「おはようございます!湊様!」
今日も変わらぬ笑顔が眩しい。湊は自然と釣られて微笑んだ。
「おはようございます。ペネオラさん、お茶入ってるよ。出過ぎて濃いかも」
「いただきます!」
仏間にリリーが入ってくると桜も夏のひまわりのように明るい笑顔を見せた。
「おはよ!リリーちゃん!」