#24 神明裁判
静かな室内に、人影は三つ。
「サラニカに薬を渡された後に会っている人物全員が容疑者だとすると、エライヤもニカ・ドーリマンも例外ではないし、何なら私たちを呼びに来たレオン・ルシアも、マクモンド君配下の安全管理委員会の四人も名前が上がる事になる」
マクモンドの部屋でイッサが告げる。
その顔には緊張感が走っていた。
「サワダリ君は今憲兵隊のところにいるんだよね?」
悩ましげな声。所長から確認を投げ掛けられると、マクモンドが手元の資料を開いた。
「はい。一昨日から取り調べの為に留置されています。昨日は両親が彼女に会いに来たとか」
「ご両親はどこから来たのか確認した?確かにウナ湖のそばに家があるかとか」
所長はマクモンドの資料を覗き込むように聞いた。
「もちろんです。両親が帰る時に憲兵隊が家まで送りました。ただ、今は戦禍を逃れるためにウナ湖から離れて暮らしているそうで、彼らの身元を確かに知る者は周辺にはいませんでした。今日は安全委員会の使者が地元であるウナ湖で周辺住民に聞き取りをしています」
所長が「ふーむ……」と唸り声をあげる。何も判断材料が揃わない。分かっていることは、イッサの目の前で袋から毒物を取り出して湊に飲ませたと言うことのみ。
イッサはイシュワだとも思えるし、そうではないとも思えた。流石にあの二人ほど甘くはないので疑い続けている。
そして、一番疑わしい男のことを尋ねた。
「マクモンド君。マキナ・ベルガメントの事は今日にでも調べるのかな?」
マキナの事は今エライヤが監視しているが、話し合いは早めに切り上げてイッサ本人による監視に切り替えたかった。
「マキナの事でしたら、昨日のうちに済ませました。そちらは憲兵隊が出られないので、安全委員会から使者を出しました。彼は十五年前にあったアルケリマンとの魔鉱石を巡った戦争――第一次魔鉱戦役の時の生き残りです」
「人口の半分以上が巻き込まれて死んだヒルジ村の?」
「えぇ。十歳で家族全員を失っています。食い扶持を稼ぐためにしばらく街を出ていたらしいですが、時折帰ってきては家の中を掃除していたそうです。二十歳になる頃には一人で実家に暮らし始めたとか。二度と人が死なないようにするために魔術師として大成すると言って、出稼ぎで貯めた金を使って猛勉強をしていたらしいです」
その後マキナは二十三で魔術省に入っている。二年前にイシュワと同時入省だ。
「たった十歳で出稼ぎ……。辛い身の上だな……。だが、顔を見てもらったわけじゃないのだから確実にあのマキナがそのマキナかは分からないな」
「私もそう思いましたが、近隣住民の言うマキナの特徴は確かにうちにいるマキナと一致していました。あれほど白い髪は珍しいし、空のように透き通った瞳は成長したとは言え見間違えるはずがないと」
「すると、イシュワよりは身元がはっきりしている、か……。しかし、念のためにマキナが子供の頃に働いていた所を調べたいところだね」
「そうですね。午前中のうちに委員会より使者を出しましょう。憲兵隊や軍部に動いて貰えると早いですが……あまり大々的にやるのは……ね」
含みを持った言い方だ。
大々的に動く事で起こる危険を鑑みて踏み出せないと言ったところだろう。
ただ単に私情から毒を盛ったんじゃないかと憲兵に詰められる事と、他国の間者ではないかと疑われる事はまるで次元が違う。
所長はどことなく悲痛な目のまま口を開いた。
「今分かることはそのくらいだね。一番良いのは全てが事故という場合だけど――ヘイバン君が倒れてる以上それは難しいかなぁ」
「そう言う甘い考えは捨てた方が良いですね。と言っても、甘さで言えばうちの二人は飛び抜けてる……」
「ヘイバンさんもですか?」
マクモンドの問いに、イッサはすぐさま頷いた。
「イズアルドも甘いし……今の彼は前にも増して甘い」
「転移で出た先で何かあったんでしょうね……。顛末書を読むのがある意味楽しみですよ」
顛末書を書くのは手伝ってやった方が良さそうだ。
イッサは曖昧に笑って誤魔化した。
◇
ペンの音が響く室内。
机に置かれていたコーヒーを飲もうとマグに口を付け、それが一滴も残っていない事を確認すると湊は一度ペンを置いた。
「――おかわり淹れましょうか」
リリーもすぐに辞書から顔を上げた。
「いや、大丈夫です。それよりそろそろ出掛けたいな。ずっと部屋に篭ってると気が滅入る……」
湊は首を左右に倒しながら体の筋肉をほぐした。
「お昼は外で食べましょうか?そこのカフェとか」
「祖父ちゃんの金も見つかったし、行きましょうか」
「私が出しますよ!」
「いやいや、俺が――と言うか、祖父ちゃんに出してもらいましょう」
「うーん……。何だか悪い気がしちゃいます」
「平気平気。多分祖父ちゃんもそうしろって言うからさ」
いくらか金を持って二人は出かけた。
少し寒いが、気分転換を主な目的としているので店の外の席で昼食を取った。
「……イシュワさん、元気にしてるでしょうか」
リリーから白い息が漏れていく。
「イシュワって今どこにいるのかな?」
「多分、近くの憲兵様のところで留置されてると思います。せめて寒くないと良いんですけど……」
「ふーむ、気になるね。行ってみる……?」
「行きたいですけど……でも……」
「行こうよ。イッサ様だけじゃなく、俺たちも動いた方が解決は早いと思う。イシュワが犯人じゃないなら誤解を解きたいし、犯人ならどんな事をあの日に転移の魔法陣に書き込んだのか聞きたい」
「湊様が帰る助けになるでしょうか……?」
「なると思う。だから、行ってみない?」
リリーは悩むように視線を彷徨わせてから頷いた。
「……行きます。湊様が帰る方法を探すことが一番大切です」
「ありがとう。行こう」
コーヒーカップを文鎮代わりにして金を置いて、二人は街へ繰り出した。
店先に掛かる看板の字を読みながら、持ち出して来ている辞書を引く。
湊は簡単な字を覚えながら向かった。
目的地に辿り着くと、軍服とも警官服とも言えるような服に身を包む筋骨隆々な男性が二人、玄関に立つ建物に着いた。
肩からは防寒用のマントを掛けていて、腰には付けペン。
どちらも憲兵とはこうあれかしと作られたような引き締まった顔をしている。こう言う顔立ちだから憲兵になるのか、それとも憲兵に入るとこう言う顔立ちになるまで鍛え上げられるのか。
湊とリリーが近付くと話していた憲兵達の視線がこちらに向き、湊が首から下げている指輪にすぐに反応を示した。
その瞳にははっきりと尊敬が浮かんでいるが、一生かかっても得られない者もいるほどの力を手にしているという自覚を湊は持たない。
「――何か御用ですか?公認魔術師殿」
「一昨日連れて来られたイシュワ・サワダリと話をしたいんですけど、良いでしょうか?」
「あぁ、毒を盛ったとか盛ってないとか言う魔術省の。魔術省直々の聞き取りですか?」
「そんな所です」
「ずっと泣いていてほとんど話ができる状態ではありませんが……それでも宜しければどうぞ」
憲兵は一人を玄関に残して先導してくれた。
「そんなにずっと泣いてるんですか?」
「えぇ。昨日親も様子を見に来ましたけど、毒だなんて知らなかったと泣いて仕方がありません」
何人もの憲兵とすれ違いながら建物の廊下を行き、途中でイシュワの捜査を担当していると言う捜査担当者が合流した。
「――どうも強情でしてね。手を焼いていますよ」
その言葉から、憲兵がイシュワの事を完全に犯人だと思っていると言う事が良くわかった。
「イシュワさん……」
何となく湊もリリーもイシュワが自分たちを殺そうと思っていたなんて信じられなかった。
連れて行かれた地下は、各牢の中の天井すれすれの場所に明かり取り窓があり、どことなくジメッとした空気が流れていた。窓の外から人が歩いて行く足が見えたりするので、半地下とも言える。
ライトが等間隔に灯るが、何となく薄く暗い。
地下牢にはぽつり、ぽつりと人が入れられていて、響く足音に殆どの者が顔を上げた。
顔に浮かぶ色はさまざまで、出られるのかと希望を浮かべる者や、本当の牢に移送されるのではないかと不安を浮かべる者。
どの者も湊達の姿を見ると俯いた。この一行は自分とは無関係だと理解したのだろう。
一番奥の牢に付くと、中ではイシュワが小さくなって膝を抱えて啜り泣いていた。
リリーは牢にそっと近寄った。
「イシュワさん、イシュワさん。リリーです。リリーがヘイバン様と来ました」
「り、りりー?」
イシュワは泣き腫らした目を上げ、手を挙げた湊を見ると牢の格子に駆け寄った。
耳の後ろで結ばれていた二つのお団子は解かれ、髪はボサボサだった。
「へ、へいばん様!ご無事だったんですね!!」
「俺は何とか。俺よりイシュワの方がずっと参ってるね。大丈夫?」
「うわぁーん!ご無事で良かったですよー!!あたじは平気でずぅー!!」
イシュワが牢の格子に捕まって泣き出すと、担当憲兵は一瞬鳩のような間抜けな顔をした。
「毒を盛られた公認魔術師殿と言うのは……あなたなのですか?」
「――あ、そうです。でももうピンピンしてますよ」
「えぇ……?危ない状態だと聞いていたのですが……」
素っ頓狂な声を上げられるが、説明も面倒なので湊は憲兵を意識から追い出し、牢の中に手を入れてイシュワの頬の涙を拭った。
「イシュワ、教えてほしい。君は本当にじ――俺の事殺そうとしたんじゃないんだよね?」
「し、しません!だって、だって……あたしはずっと……リリーがヘイバン様のお側に一秒でも長くいられるといいなって思ってるんですから……」
「優しいんだね」
湊もできればリリーに平文と一秒でも長く一緒にいさせてやりたかった。イシュワの事は最初こそ苦手だと思ったが、何となく仲間意識のようなものを抱いてしまう。
「――この様に、現行犯で連れてこられたにも関わらず罪を認めようとしないんです。でも、やっと涙は止まったみたいですね。これで自白が取れるかな」
担当憲兵が呆れ混じりに溜息を吐くと、イシュワは焦るように口を開いた。
「憲兵様!本当にあたしはヘイバン様を殺そうなんて考えたこともないんです!医伯が薬の生成を間違えてるなんて思いますか!?」
「思えない。思えないし、医伯は生成を誤っていない。生成時に立ち会った公認魔術師殿と生成した医伯からも供述が取れている。そもそも全てが毒物だったわけじゃないのに、君はしっかり毒物を選んで公認魔術師殿に飲ませただろう」
「適当に手に付いたのをお渡ししただけですよ!!」
湊は二人の話を聞きながら、引っかかっていた事がじわりと形を帯びてくるのを感じた。
もし袋に毒を入れる余裕があるならわざわざ手渡して来るだろうか。
イシュワが渡して来なくても、ニカに飲めと言われた湊が自分で薬を出していたとしても、リリーが出してくれていたとしても、同じことになっていたような気がする。
「――憲兵さん、毒は何袋あったんですか?」
「紛れていたのは確か五袋です」
「五袋か……。それは全て食後の薬の包みに?」
「えぇ。そうです全て開けて確認いたしました」
これは確率論だ。人が引きやすいように恣意的な並び方で入れられていれば、乱数の確率計算では導き出せない。
湊が悩んでいると、憲兵は付けペンでカンカン、と牢を叩いた。
「このまま自白しないなら神明裁判を迎えることになるぞ。お前は腕の痛みに泣きながら牢に入ることになるんじゃないのか?今観念して自白すれば神明裁判は逃れることができる」
「か、構いません。神々は罪を犯してないあたしを傷付けるような事はないはずですもん!」
「強情だな……」
湊には聞きなれない裁判名だったが、何となく物騒な雰囲気は感じた。
「――んん、少し失礼。リリ」
リリーを手招き、牢から離れる。リリーはすぐに湊のそばに来た。
「すみません。神明裁判って……?」
「あ、神火のないニホンには無いんですね……。大きな罪を犯した容疑者が罪を認めなかったり、決定的な証拠が出なかったりした時に、神々にその者の罪の程を問う裁判なんです」
「え?こっちの世界って神様が裁判に出てくるんすか?」
「いえ。神殿機関が聖火を起こして、罪人が火の中に手を入れるんです。罪がなければ火は神火となり、裁判を受ける人の手が傷付けられる事はありません。ですが、罪があれば手は焼けます」
つまり、人の罪を焼く魔法があると言うわけだ。
焼けない幻の火は目の当たりにしているし、湊自身も一度包まれたが――何となく胡散臭く感じて仕方がなかった。
「それって確かな方法なんですか?」
「罪を量ると言う意味では確かだと思います。もしイシュワさんが大きな罪を犯したことがないなら受けた方が良いかもしれません……」
「本当に確かならどうしてこんな場所に人を留置しておくんですか?全員さっさとそれやらせた方が早いでしょ」
「それが……神明裁判は罪の大きさによっては不確かになってしまんです」
「どう言うこと?」
リリーの視線はスッと床に落ち、どこか歯の奥に物が挟まったような口調で答えた。
「聖火は特定の罪を焼くものではないんです……。生まれて一度も罪を犯さないでいられる人はそうそういません。神明裁判は……どんな人でも軽微な火傷を負うことが大半です」
「おいおい……。それじゃ何も罪なんて量れないじゃないですか。火傷するに決まってる」
「それが神明裁判の問題点なんです……。どのような罪も罪ではありますが……例えば覗きみたいな、人を直接害していないような罪だと神明裁判に掛けたとしても負う火傷はそう大きくなく、誰もが積み重ねてしまう罪で負う火傷と見分けることが困難です……。ですが、今回イシュワさんの罪は殺人未遂です。これだけ大きな罪は、本当に罪を犯していればかなり深い火傷を負うので分かりやすいです。これまで生きてきた中で犯した軽微な罪との違いはハッキリ出るので……」
湊は全く気持ちの良くない驚きに首を振った。
「そんな事させられるか……。それ、俺だったらぐずぐずに火傷するぞ……」
人に手を挙げた事はないが、子供の頃には蟻の巣に水を入れたし、初めてタマムシを見つけた時は生きたまま画鋲を刺して標本だと言って喜んだ。
大なり小なり火傷を負う方法なんかは絶対に行われるべきではないし、イシュワも軽率にその裁判を受けるなんて言うべきではない。
湊は自分の前に立っていたリリーの肩を軽く押し、イシュワの牢の前に戻った。
イシュワはまだ担当憲兵に無罪を主張していた。
「だからあたしは――」
「イシュワ、もう一度聞かせて」
湊が声を掛けると、イシュワはすぐに口を結んだ。
「君は確かにイズアルド・ヘイバンを殺そうと思ったり、害そうと思った事はないね」
「ありません!ヘイバン様、私は神明裁判を受けて、必ずそれを証明してみます!」
湊は首を振った。
「そんな事はしないで良いんだよ。俺は君を信じる。変わりに俺が必ず何とかするから、君も俺を信じて待ってて欲しい。早く疑いを晴らしたいと思うかもしれないけど、待っててくれないかな」
「……ヘイバン様?」
イシュワの瞳は不審と希望の狭間にあるようだ。イシュワが頷かないのを見ると、湊は牢の格子を掴むイシュワの手を握り、もう一度念押しをした。
「約束する。必ず俺が何とかするから。俺はこう見えて割と頭は良いんだよ。俺を信じて」
イシュワは一瞬「はわ」とおかしな声を上げてから俯いた。
そして――「わ、わかりました……」
小さく了承の意が届いた。
「よし、じゃあ俺は行くよ。待っててね。憲兵さんもお時間をいただいてありがとうございました」
「は、はぁ。――あ、効果が分かっている安全な薬をお返ししますので、こちらへどうぞ」
湊が憲兵と共にイシュワに背を向けると、それを止めるようにイシュワから声が掛かった。
「あ、へ、ヘイバン様!ヘイバン様はこう見えてと言いましたけど、どう見ても頭良いですよ!!」
イシュワは格子の隙間からむりやり顔を出そうとしているせいで耳まで真っ赤になっていた。余程キツいのだろう。
「はは、初めて言われたよ。イシュワ、必ず待ってろよ。神明裁判なんか受けろって言われてもごねろ!」
「分かりました!!」
「リリ、行こう」
「はい!」
湊はリリーと二人で牢を後にし、二階で薬と薬の袋を返却された。
机の上にはイシュワの道具鞄や杖が置かれていて、開かれた薬包も置かれていた。
「……そっちの毒が入ってた薬包も返してもらえませんか?」
「構いませんけど、これで何をするんですか?」
「ちょっと試したいことがあって。ちなみに憲兵隊の所ではこれの何を調べられたんですか?」
「これが魔術省の医務室で使われている紙なのかを調べたり、折り目が二重になっていないか調べたりしましたよ。内側にまだ少し毒が付着してるかもしれないんで気を付けて下さいね」
「分かりました。ありがとうございます」
必要だと思うものを全て受け取り、二人は憲兵隊の建物を後にした。
「毒入りの薬包まで返すって事は憲兵はこれ以上調べる気はないな」
「多分、もう寮の家宅捜索も含めて全て済んでいるんでしょうね……」
「何も出てきちゃいないんだろうな。あの様子だと」
「私もそう思います。だからこそ神明裁判に掛けたいんでしょう。憲兵様方も公認魔術師の暗殺未遂なんて、未解決にしておきたくないでしょうし……」
「それで解決したと思えたとしても、人の腕を焼いて得られる答えに真実性なんかあるはずがない。腕を焼かれたくなけりゃ自白しろなんて文明社会を名乗っていいレベルじゃない」
「も、申し訳ありません」
湊は自分の眉が中心に寄り、逆立っていることに気が付くと慌てて顔を振った。
「いや、すみません。俺の方こそ」
これは神が身近だからこそ起きる社会の不具合だ。自白の強要、いや、拷問とも言える。
きっと、本当に罪を犯した者なら腕を焼かれた挙げ句刑務所に入れられるなら自供しようと思うだろう。
逆に、イシュワのように罪を犯していない――と思っているなら――少ない火傷で済む、もしくは火傷もしないで潔白を証明できる方法を選びたがる。
そこから言っても、イシュワは犯人じゃない。――と、思わせるための演技をされているとお手上げだが。
「湊様。私、本当のことを言うと湊様が神明裁判を認めないと仰ってくれて嬉しいです」
「そうですか?」
「はい。もし今回のことで腕に火傷の痕が残れば、それが有罪判決を受けて付いたものなのか、はたまた誰もが犯し得る罪で付いたものなのか、初めて会う人やすれ違う人達には分かりません……。話せばわかって貰えるでしょうが、凶悪犯のレッテルに苦しむことになるかもしれません」
「それ、ほとんどの人が火傷痕に人生滅茶苦茶にされることになるんじゃ……」
「あ、勿論無罪だと認められれば回復魔法を掛けてもらえます」
「……掛けはするけど、綺麗さっぱり治り切るかどうかは不明、ってわけか」
「はい……」
イッサが解毒魔法を説明してくれていた時に「傷を癒すような物もあるけれど、解毒の魔法との併用は体力を使いすぎる」と言っていたし、恐らくゲームのように軽々と全回復と言うわけにはいかないのだろう。
体が本来持つ力を引き出してやるのだとすれば、傷痕も残る。イッサの頬にも傷痕はあるのだから容易に想像ができる事だ。
「……行こう。その神明裁判ってもんがいつ開かれるか分からない以上、急いだ方がいい」
「そうですね。でも、神殿機関とやりとりが必要なので今日や明日中ではないと思います!」
「……明後日は?」
「明後日はちょっと……自信ありません」
迫る火炙りを前に湊は内心舌打ちをした。
「それで、どこへ行きますか?イシュワさんの寮を見に行きますか?」
「いや、一度帰ろう。袋の内側や返ってきた薬包から犯人の指紋が取れるかも。もちろん、憲兵の指紋も大量にあるだろうけど」
「指紋ですか?」
「うん。何の色もついてないし、多分指紋取ってないと思うから」
「インクをつけた手や汚れた手で触ってないのにそんな事ができるんですか?」
来た道を戻り始めていた湊は足を止めた。指紋の科学捜査が行われるようになって日本だってまだ百年あまり。
「……正直自信ない。やってみるしかないね」
「そう……そうですね!きっと湊様ならできます!」
二人は足早に平文の家へ戻った。
神明裁判は野蛮よ!
そしてshi-R様に湊君を貰ったのでtwtrに貼りました!!
https://twitter.com/okbkkk/status/1341693689811234816?s=21
わぁい!!
「私もまだイメージ固まってないので、これが正解とかでは無いので自分の湊くん像を信じてください!」と仰ってましたがプロの犯行だぁ!




