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魔王ちゃん、轟沈する

「魔王ちゃん、どうするのー?」


「大陸側への移動手段が無いとなると、戦力的にも資源的にも苦しいね……。今回はキュピス諸島内の限られた資源だけでやり繰りするしかないかも……」


 とは言え、限られた領域内の資源と魔物だけでは既に限界が見えている。


 領域内には、その土地、その気候風土に適した魔族のみが生息する。

 その土地の特徴をよく観察した上で生息魔族の種類を割り出してしまえば、人類側は万全の対策を練った上でこちらへと侵攻してくることだろう。


 幸いなことに人類側が握っている島の情報はほとんど皆無。

 しかし反対に、海中の魔物の種類は完全に把握されてしまっている。


 人類側が犠牲を厭わず本気でキュピス諸島の上陸に乗り出したら、恐らくこの領域は陥落する。


「本当なら色々な場所を散策しなくちゃいけないんだけど、ここから大陸へと渡る方法は現状では皆無。そうなると私の魔力から生成できる魔物と、この島の魔物だけでの対応を余儀なくされる……」


 魔力さえ十分ならどんな魔物でも生成は出来る。

 だけどその数には限りがある。

 生成出来る魔物の数は、原則一日一体。


 込める魔力や強弱にもよるが、魔王ちゃんが自力で数を揃えることは不可能だ。


 人族の原生魔族への対策に対して、こちらはランダム性で対応する必要がある。

 普通なら色々な場所から多種多様な魔物を用意し、ダンジョン内の危険性を底上げしなければならないのだが、現状ではそれが出来ない。


「直接泳げば島から島への移動は何とかなるかもしれないけど……魔物問題は解決出来そうにないし、資源自体も生身で運べる量となるとあまり期待出来ないね……。やっぱり船作ってみよう」


「でも魚雷サメって船を見つけると問答無用で突撃してくるんだよねー? ちょっと厳しくなーい?」


「ものは試しだよ! この辺りは人の出入りも少ないらしいし、もしかしたら温厚な種しかいないかもしれないし」


 そう言って魔王ちゃんは体内魔力から丸太と縄を作成し、手際よくいかだを作った。


「さあ、乗ってサキュバスちゃん! この子の名前はアトランティックネメス号だよ!!」


「おおー魔王ちゃんネーミングセンス凄いねー。私だったら間違っても自分の名前だけは付けないなー」


「そ、そんなに変かな……?」


 魔王ちゃんの上目遣いにサキュバスは首を横に振った。


「……ううん。可愛いと思うよー」


「本当?」


「うん。可愛いけど、そういうあからさまなあざといムーブするのは私やめたほうがいいと思うなー」


 魔王ちゃんは友達が少ない。


 自分が近くにいると勇者ちゃんに殺されてしまう。

 仮にそうでなくても、自分は確実に殺されるため、仲良くなってもすぐに離れ離れになってしまう。

 そういった今までの経験から、あまり知性を持った存在とは関わりを持たないようにしているからだ。


 人の深層心理に逃げ込むことで現実世界での死を回避出来るサキュバスなどの一部の例外はいるものの、基本的に友達と呼べる存在と一緒にいることはあまりない。


 そういうわけで、人との繋がりの希薄な魔王ちゃんは誰からも自分の悪いところを指摘してもらえず、年々幼児退行が進んでいる。


「うん……?よく分からないけど、気を付けるねっ!」


「魔王ちゃんは物分かりがよくていい子だねー」


 サキュバスはサキュバスで、自分以外に友達のいないネメスにはメンタルがボロボロになってしまうことを懸念し、あまり強くは言えずにいる。


 二人の関係は、船底に穴が空いた船とその穴に気付いてはいるが、穴を塞ぐ道具がないために見てみぬフリをするしかない水夫の関係によく似ている。


「よーし、とりあえず隣の島まで行くよーっ!」


「おー」


 二人はアトランティックなんとか号に乗って、十数秒後に魚雷サメによって爆発、轟沈した。


 魔王ちゃんは丸太の欠片に捕まって潮流に流され、サキュバスはその上をふよふよと浮かびながら、なんとか隣の島へと辿り着いた。


「魔王ちゃん、どんまーい」


「なんで……?私魔族の王なんだよ……?どうして魔物にまで酷いことされてるの……?」


 アトランティックネメス号の欠片を抱え、ぐすぐすと泣いている魔王ちゃん。

 サキュバスはその頭を撫でながら、一緒に浮いているゴーストと目を合わせ、肩を竦めた。


「次からは泳いで移動するしかなさそうだねー」

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『Mephisto-Walzer』

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