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魔王ちゃん、魔力を回復する

 キュピス諸島は千を超える島々からなる多島海である。


 大きな島から小さな島までさまざまに入り組んだ雑多な地形と激しい潮の満ち引きにより、この辺りの潮流は時刻によりその流れの向きが変化する。

 強い潮流により海底部に沈殿した栄養素や魔力が巻き上げられ、海には豊富な魚介類や魔物が群生している。


 というわけで……


「サキュバスちゃーん、獲れたよぉーっ!!」


 水着姿でお手製の銛を握った魔王ネメス。

 白いワンピースのようなそれは自らの体内魔力によって形成したものだが、最終的に使った魔力以上の魔力を回収できれば問題ないと判断して生成した。

 高くかざした銛の先端には活きのいい大きな鯛がビチビチと暴れている。


「うんうん、がんばってねー」


 サキュバスは木陰でうとうとしながら魔王ちゃんを応援する。


 現状、魔力を失った魔王ちゃんの直近の目標は「魔力の回収」だ。

 次いで魔王城の建築や戦力の増強など諸々やることは沢山あるが、全て魔力が無くてはどうしようもない。

 なにはともあれ全ては魔力。魔王活動の礎となるのは純粋なレベルの高さというわけだ。


 そういうわけで、魔王ちゃんは今魔力回収に勤しんでいる。


「サキュバスちゃん、獲れたお魚ここに置いとくから。私はもう一回海に潜ってくる!」


「うんうん。がんばれー魔王ちゃんー」


 サキュバスに魚を託し、砂浜で拾ったぼろぼろの網とお手製の銛を片手に、もう一度海の中へと入っていく。


 魔力を補給する方法は大きく分けて二つある。


 ひとつは周囲の魔力を体表から摂取する方法。

 これは肌を露出させることによって、空間に存在する魔力を直接吸収する方法だ。普段ならあまり効率のよくない方法なのだが、空間魔力の濃い場所に限っては有効な手段として数えられる。


 先ほどの説明どおり、ここキュピス諸島の海は魔力が豊富な海域となっている。

 そういうわけで、水着で肌を露出することにより効率よく魔力回収を行うというのが魔王ちゃんの考えだ。


 そして二つ目が他の魔物や生物から直接摂取する方法。

 全ての生命の肉体は魔力によって構成されている。その肉体から直接魔力を回収するというやり方だ。

 基本的には食すことによって行われるが、斬っただけで回収できるスキルもあるらしい。


 あいにく魔王ちゃんはそのようなスキルを持ち合わせていないため、魚や魔物を獲って直接食べることで魔力を獲得しなければならない。


 わざわざ水着に着替えて海に素潜りしているのも、全ては魔王城を建築する魔力集めのためなのだ。


「そろそろレベル10になるかな……」


 銛でタコを突き、自らのステータスを鑑定する。

 魔王ネメス、レベル12。


 思っていたよりレベルの上昇が早い。

 種族や霊格によってレベル上昇の効率にはかなりの差が出る。

 魔王ネメスの霊核は比較的高位であるため、他の魔族や人族と比べても、魔力の回収速度も蓄積量も高めとなっている。


 夕方になるまで素潜りを続け、ネメスはサキュバスのもとへと戻ってきた。

 日が暮れる前に食事を済ませて、今日のところは早めに寝よう。

 スタートダッシュで焦って失敗することはよくあることだ。


 魔王ちゃんは魚やタコを刻み、魔力によって生成した鍋に放り込み火にかけた。

 調味料の用意は無いが、素材そのものから染み出たダシが旨味を引き出してくれるだろう。


「おおーおいしそー」


「ふふふ……獲れたての海の幸の味! 存分に味わうといいよっ!!」


 ネメスは食器にサキュバスのぶんを取って彼女に渡した。

 サキュバスは鯛の白身を箸で崩し、一口頬張る。


 充分に煮込まれた白身は口内に入れるとほろりと崩れ、素朴ながら奥行き深い味わいが広がっていく。

 豊かな海を元気に泳ぎ回り、鍛えられたその肉体は良質な魔力そのもの。

 一口噛み締めるたびにこの海に連綿と紡がれてきた生命たちへの感謝が溢れてくる。


「魔王ちゃん、次回からは全部海で復活しない?」


「すぐに居場所がバレちゃうよぉ……」


 魔王ちゃんは傍らに浮いていたゴーストに白身を一口差し出した。

 ゴーストは白い体に大きな黒い口を浮かび上がらせ、白身がその中へと消えていく。


 空中でゆらゆら揺れる様子を見ると、白身魚はお気に召したようだ。


 暮れていく夕陽の中、焚火と鍋を囲み、魔王ネメスとサキュバスは初日の夕食を無事に食べることが出来た。

 ――復活一回目

 ――初日

 魔王ネメス、レベル15

 戦力

 ・夢魔サキュバス、レベル16

 召喚獣

 ・ゴースト、レベル2

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『Mephisto-Walzer』

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