表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/147

みんなが笑顔でいられる世界

 あれから暫く二人は互いのことを抱き続け、それから体を離し、顔を見合わせて恥ずかしげに笑った。


「えへへ……体、痛いね……」


「魔王ちゃん力入れすぎー……」


「それはサキュバスちゃんもでしょ! 腕のあたり真っ赤になってるんだけど!」


 そう言いあって二人は笑う。

 こういう言い合いも、今では心地良い。

 今思えば、何度もしてきたあの喧嘩の数々も、なんだか愛しいような気がしてくる。


「サキュバスちゃん……私たち、これからどうするの?」


 魔王ちゃんは俯き、サキュバスに問う。


 彼女は不安なのだ。

 サキュバスに受け入れられたとしても、他のみんながどう思っているのか。

 でも、それが杞憂だということも魔王ちゃんは心の奥底では分かっている。


 彼女がこんなことをサキュバスに聞いたのは、ただ彼女に甘えたかったから。

 今まで全部自分で決めていたことを、最後に、サキュバスに託してみたいと思ったのだ。


「世界をもう一度再構築して、本当の本当に……魔王ちゃんも含めた『みんな』が笑顔でいられる世界を造ろう!」


 サキュバスの言葉に、魔王ちゃんはにこりと頷く。

 しかし、彼女はすぐに玉座のほうへと視線を移す。


 そこにいるのは、ちいさな世界の"悪意"だ。

 その悪意を手に乗せて、魔王ちゃんはサキュバスに言った。


「この子を置いていけない。サキュバスちゃん、この子も連れて行きたい……。たとえ世界が滅茶苦茶になったとしても、私は『みんな』で笑顔になりたいの……!」


 悪意は恐がり、それを拒否するように体を左右に振る。

 この子も、きっと魔王ちゃんと同じなのだ。


 誰かに気付いて欲しいのに、この暗がりから出ることが出来ないのだ。


「大丈夫。私は魔王だよ? それに、サキュバスちゃんは罪魔教の教祖"眠り姫"なんだし。二人いれば私たちは最強なんだからっ!! そうだよね、サキュバスちゃん!」


「あははー……魔王ちゃんにその名前で呼ばれるのはちょっと恥ずかしいなー……」


 サキュバスは彼女の隣に立ち、悪意に目線を合わせた。

 悪意は怯えているが、サキュバスはそれに対して笑顔で語りかける。


「私たちはあなたのことも見捨てないよー? だって、私たち二人に不可能なんてないんだからー!」


 サキュバスは魔王ちゃんのほうを見てニッと笑う。

 魔王ちゃんはそれに答えるようにぐっと拳を握った。


「当たり前だよ!! そうと決まれば、早速作戦を立てるよ!! っとその前に……私たちがこういうことするときは、ちゃんと作戦名を付けなきゃだよねっ!! 何にする!? サキュバスちゃん!!」


 魔王ちゃんにそう聞かれ、サキュバスは暫し考え込むと、最高の名前が思いついた言って不敵な笑みを浮かべた。


「この作戦名は-、魔王ちゃんが世界に復活する日に相応しい最高の名前を付けなきゃだからー!」


「うんうん! なになに!?」


 サキュバスは胸を張り、その作戦名を声高らかに宣言した。


「名付けてー! 『魔王ちゃんリスタート』計画だよー!!」


 サキュバスの名付けた作戦名に悪意はふるふると体を左右に振る。


「なーにー? 何か文句でもあるのー??」


 サキュバスが詰め寄ると、悪意は怯えたように魔王ちゃんの影に隠れ、ふるふると再度体を左右に振った。

 どうやらその名前でいいと言っているらしい。


「魔王ちゃんはどう思う-?」


 サキュバスはニヤニヤしながら魔王ちゃんの顔を見る。

 正直、魔王ちゃんをからかうつもりで付けた名前だ。ちょっとくらい怒ってくれたら面白いところを見られるかなと思ったのだが……。


「カッコいい!! 最高だよ、サキュバスちゃんっ!!」


「あー、そういえば魔王ちゃんって-、いかだに『アトランティックネメス号』とか名付けるネーミングセンスだったよねー……」


「なに!? サキュバスちゃんがカッコいいと思って名付けたんでしょ!? 違うの……!?」


 半泣きで抗議してくる魔王ちゃんにサキュバスは苦笑いし、でもこういうのも悪く無いと少しだけニンマリしてしまう。


「いやー、べっつに-? じゃあーその名前で行こっかー。それでー、作戦内容はどうするー? なんだか良い方法があるようなー無いようなー結構難しい感じだけどー?」


「それなら心配には及ばないよ! 私とサキュバスちゃんの力を合わせれば、どんな困難もちょちょいのちょいだよっ!!」


 そう言って魔王ちゃんはサキュバスの隣に並び、彼女の手をぎゅっと握った。

 温かい手の温もりを感じながら、扉のほうへと視線を向ける。


「私が諦めていたこと……今なら、サキュバスちゃんと一緒ならやれる気がするよ!」


「なんたって、魔王と罪魔教祖の二人組だからねー!」


 桜色の髪の悪魔と、黒髪の悪魔。

 二人は互いの手を取り、重い扉を開いた。


 二人が造る新世界には、今まで世界を燃やし続けた世界の悪意も混入する。

 しかし、それでも二人は約束したのだ。


 みんなが笑顔でいられる世界を造ると……!!


 最終作戦『魔王ちゃんリスタート計画』が今、始動する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on ↓↓こちら平行して書いている異世界音楽ファンタジーです!↓↓

『Mephisto-Walzer』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ