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Restart Of The DarkLord.(後編)

 リスタート計画……。

 それは()()()()()()()()()()()()()


 サキュバスちゃんやウンディーネちゃん、メチルちゃんに勇者ちゃん……。

 私を信じてくれた全員に嘘を吐いて、全員を信じさせて、やっとこの計画は完成する。


「私はこの世界が大好き……! だから、この世界を救って、みんなが笑える幸せな未来を掴みたいの!!!」


 よくもまあこんなことを言えたものだと、自分で自分が嫌になる。


 私は、歪んでいる。

 罪と罰と責任が胸の奥で混ざり合って燻って、とても痛いけれど……。

 それでも、私はこのリスタート計画を完遂しなければならない。


 思えば、私が幸せになんてなろうとしなければ、誰も傷付かずに済んだんだ。

 それなのに、余計な努力をしたせいで、みんなまで不幸になって、誰もが罪と罰を負った。


 パンドラの箱という話がある。

 神のうちの一人、裏切り者のプロメテウスは、神の王・ゼウスに刃向かい、人類に火を授けた。

 プロメテウスの火のお陰で人類は夜を凍えずに過ごすことが出来るようになったが、同時にゼウスの怒りを買うことにもなった。


 ゼウスは人類に災い()を与えるため、パンドラという女性を作り、彼女に箱を与え、人類のもとへと送り出した。

 プロメテウスはパンドラに、ゼウスからは何も受け取るなという忠告を授けたが、パンドラはその忠告を破り、受け取った箱を開いてしまった。


 箱からはあらゆる罪悪が世界に解き放たれ、人類はその罪悪と共に生きていくことを余儀なくされた。

 パンドラは自らその箱を閉じたが、その奥には希望だけが取り残された。


 私はパンドラの箱を開いてしまった。

 そのせいでみんなが苦しんでいる。

 だからこそ、私にはこの絶望にケリをつける義務がある。


「リスタート計画……。それは、私の"魔王"としての権能を使って、"世界"から全てを奪う計画」


 この世界の全ては魔力によって作られている。

 食べたものは魔力となって体内を巡り、死んだ者は魔力となって風へと還る。

 肉体や土や水、あらゆるものの根源は魔力であり、肉体や物質という名の術式によってそのかたちを保っている。


 それは青き炎も例外ではない。

 それなら、燃えて焼失したものは一体どこに消えてしまったのか?


 この世界に"無限"はない。

 何もかもが有限の世界だ。

 だからこそ儚く美しい……。


 だけど、私は唯一"無限"とも呼べるような場所を知っている。


()()……」


 破壊神ちゃんのいる冥界。

 あそこには、何もない。

 当然といえば当然だ。

 魔力は術式を伴って初めて物質として、魔法として顕現する。


 あの場には、シルフィが地下迷宮ダンジョンで使っていた術式と同様の「術式殺し」の術式が張り巡らされている。

 だから、あそこは何もない"空白"なのだ。

 しかし、冥界には確かに破壊神ちゃんが存在していて、地上界図が存在していて、私が地上へと復活するための"魔力"が存在しているのだ。


「上手く騙そうとしていたみたいだけど、残念だったね? シルフィちゃんの術式が決め手になって、ようやく完全に看破出来たよ。あの子が使ってた地下迷宮ダンジョンの術式、まだ女神だった頃に、あの空白を研究した成果なんだろうね……。女神ちゃんがいなければ、私は冥界の仕組みを完全には理解仕切れなかったよ」


 暴力虐待虐殺絶望後悔憎悪失敗貧困苦痛憤怒苦悶裏切無念欺瞞悲嘆離別憂鬱無視不幸死別嫉妬沈痛外道喪失屈辱悲運殺害孤立混沌犠牲処刑苦悩罪悪迷惑処罰策謀禍根悔恨悲運滅亡懲罰叱責残酷敵対徒労!!!


「悔しいよね。今までずっと見下してきた相手に、ここまで見破られて……でも、まだお終いじゃないから」


 冥界は焼失した魔力を格納するための集積所だ……。

 あそこには、消えたはずの全ての魔力が保存されている。


 私はレーゼンアグニによって、勇者ちゃんに殺されることによって何度も冥界に赴き、検証に検証を重ね、そのことを既に把握している。


「もちろん、私の破戒式は『術式殺し』を殺す準備も出来ている」


 暴力虐待虐殺絶望後悔憎悪失敗貧困苦痛憤怒苦悶裏切無念欺瞞悲嘆離別憂鬱無視不幸死別嫉妬沈痛外道喪失屈辱悲運殺害孤立混沌犠牲処刑苦悩罪悪迷惑処罰策謀禍根悔恨悲運滅亡懲罰叱責残酷敵対徒労!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「ふふ……。私はこれからこの世界を滅ぼして、全ての魔力を冥界に持って行く。そして、その魔力を使ってもう一度世界をやり直す。本来在るべき、こんなに残酷じゃない世界に……」


 魔王ネメスの術式は魔力さえあればどんな"罪"でも可能とする。

 世界まるごと一つ分の魔力……それを使って、世界サイズの魔王城を建築。

 その内部に再演術式によって現世界をやり直す。


「邪魔したって無駄だよ。だって、私の作る新世界は魔王城の中にあるんだから。これがどういうことか分かる……? あなたの青き炎は、私の魔王城の中には入ってこれない。ただ無限に、魔王城の外でずっと燃え続けることしか出来ない!!」


 暴力虐待虐殺絶望後悔憎悪失敗貧困苦痛憤怒苦悶裏切無念欺瞞悲嘆離別憂鬱無視不幸死別嫉妬沈痛外道喪失屈辱悲運殺害孤立混沌犠牲処刑苦悩罪悪迷惑処罰策謀禍根悔恨悲運滅亡懲罰叱責残酷敵対徒労!!!!!!!!!!!!!


「これで、全ての戦いが終わるんだ……」


 青き炎を消し去り、皆が笑顔で暮らせる世界を、新しくやり直す。

 そこは青き炎が最初から無かった世界。

 本来の、そう在るべき平和な世界。


「この世界の罪は全て清算する。誰もが罪を負いすぎた。だから、一度ここで全てを終わらせて、罪のない新しい世界を作ることで……」


 私の計画は、完遂する。

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『Mephisto-Walzer』

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