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決着の時

 魔王が駆け、勇者はその攻撃を受け止める。

 影から現れた一振りの聖剣が勇者へと襲いかかり、回避した次の瞬間には両手に担う二振りの聖剣が襲いかかる。


 切っ先が喉に触れる直前。

 甲高い金属音が弾け、魔王ネメスは跳ねながら無数の刃を一つまた一つと叩き落とす。


「七天八刀・夢幻斬……」


 魔力の糸によって操られた刃の群れ。

 その糸を見切ったネメスは地下から青き炎を放ちその全てを破壊する。


 刹那、両サイドから水の魔弾と光の槍。

 ネメスはその二つを刃で受け止め、角度を付けて跳ね返す。


「きゃ……」


 ウンディーネが自らの魔弾に弾かれ、メチルは光の槍を新たな光の槍で相殺する。

 周囲へと視線をやったネメスは、その違和感に息を呑んだ。


「いない……上か!!」


 頭上から突き下ろされた聖剣に対し、自らの聖剣を突き上げる。

 剣と剣が悲鳴を上げながら互いを削り、着地した勇者が魔王へと斬りかかる。


「ッ……さすがに強い……」


 斬り込む直前、勇者の目の前に青き炎が吹き上がり間合いには入り込めない。


 再び四人に対して間合いを取った魔王ネメスに、メチルが眉根を寄せる。


「魔王ちゃん……こんな戦いに何の意味があるの? もう、やめてくれ……。僕はお前を攻撃したくない……。殺したくない……。お前だってそうなんだろう? もう世界はほとんんど残ってない。だけど! お前ならどうにかしてくれるって、僕は信じてるんだ……!!」


「勝手なこと言わないでよ……」


 ネメスが駆け、メチルに対して間合いを詰める。


「ッ!」


 そのカバーに入ったカンナビスの右腕が切断され、片手剣が中を舞う。


「へえ! 最初から私狙い! 面白い!!」


 ネメスはカンナに対して追撃を掛けるが、メチルの横槍が入りやむなくその矛先をシアンへと向ける。


 ネメスの雪崩のような剣撃の全てをやり過ごし、シアンは彼女のレプリカの聖剣を叩き折る。

 刹那、ネメスは新たな刃を生成し更に突きにかかるが、シアンはそれを回避し振り向きざまに鍔競りあう。


「分からず屋が……サキュバスの剣を学んだこの私に剣で戦いを挑むか……!」


「さあ、どうだか……」


 その言葉にシアンは彼女の剣を見て、初めて相手の意図に気付く。

 細く輝く銀の刃……。


「シアン!! それは……」


「紫電・絶式――」


 スパークレイピアから放たれた電流がシアンの動作を制限したコンマ数秒……。

 ネメスの回し蹴りがシアンを薙ぎ、メチルがそれを受け止める。


「カンナ……! ウンディーネを!!」


「ッ!!」


 カンナの剣を全て躱し、ネメスはウンディーネのもとへと辿り着く。

 そして、その刃を振り下ろし……鮮血が舞った。


「嘘……。なんで……」


 全力で地面を蹴り、彼女を庇いに行ったシアンが、その腹を引き裂かれる。


「ッ! プリズムバースト!!」


 横から放たれたメチルの一撃が直撃し、ネメスは弾き飛ばされ壁にぶつかった。

 メチルは立ち上がり、シアンのもとへと駆け寄り、ウンディーネと共に彼女のことを抱き起こす。


「はあ……はぁ……クソ……」


 カンナビスがネメスの前に立ちはだかり、その背後でメチルがシアンの傷に回復を施す。

 しかし、思ったように回復が行えない。


「魔王ちゃん……っ! 地下のダンジョンの術式……ここまで……!」


「メチルちゃんの魔法は強いから……それに、ウンディーネちゃんもいるし。保険はいくつあっても足りないよ……」


「解いて!! このままじゃシアンが死んじゃう!!」


「ダメだね。私は、この世界を終わらせなきゃならない。それに、もう終わりでいいでしょ?」


 ネメスが指を鳴らすと、地面にひとつの魔法陣が浮かび上がる。

 彼女の攻撃を止めに掛かろうと脚に力を込めたカンナビスは、その違和感に誰よりも早く気が付いた。


「身体が……」


「制止の魔法陣。地下ダンジョンの術式を解いて欲しいんだったよね? はい、解いたよ。でも、みんな動けないね……」


 銀翼竜との最初の戦いで使用した、彼女が最初に使った原始魔法。

 空間内の全ての魔力を支配し、魔王ネメス以外、全ての行動を禁ずる最上位破戒式……。


「魔王ちゃん……本当に、全部終わらせる気なの? 今までずっと、頑張ってきたのに……?」


 メチルの問いに、ネメスは何も言わずにただ悲しそうにその場にいる全員を見渡した。

 シアン、メチル、カンナビス、ウンディーネ、銀翼竜、ゴースト……その全員が傷付き、満身創痍でこちらを見上げている。


 誰も動くことは叶わない。

 もはや、魔王ネメスを阻止出来るものは一人たりとも存在しない。


「そうだね……。もう、話してもいいのかな……」


 青き炎がこの魔王城まで浸食を始める。

 もう、世界のほとんどが飲まれてしまった。

 ここからの巻き返しは、もはやどう足掻いても不可能だ。

 だから……


「今から少し、私の話でもしようか」


 その言葉に、シアン、メチル、ウンディーネは息を飲んだ。


「もう、秘密にしなくても、大丈夫だから……」


 それから魔王ネメスは、自らの本当の目的を、計画の最終目標を語り始めた。


「これからお話するのは、何一つ隠すところのない、本当の私の物語。そして、これまでずっと実行してきて、これから完遂するとある計画の物語。その名は……」


 リスタート計画。

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『Mephisto-Walzer』

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