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side???後半

 

 女だと気づき、あまり見ないように急いで服を着せた。



 いや、別にカクタス国は未婚の女性の裸を見たら責任をとって結婚しなければならない。


 とか。


 家族・婚約者以外が女性の大切な部分を見たら、代わりに自分の大切な部分を切り落とす。



 なんてアホなしきたりがあるわけではない。国によってはあるらしいが。



 俺がこの子が女で驚いている理由は、その体に残る無数の傷跡だ。

 ろくに手当てをされなかったのだろう。皮膚がただれていたり、傷口が膿んでいる箇所がある。

 一体いつから操られ侵入者を排除してきたのだろうか。この屋敷の物の少なさからいって放置されていたのは間違いない。


 女性は傷跡が残ることを特に気にすると乳母から教えられた。


 治りきる前に自分の傷を見てショックを受けないように、布を裂いて簡易の包帯を作り頭と目に巻いていく。頭は傷の大きさのせいで髪の毛が半分もないからな。


 俺は死に直結する傷を()()()()()塞ぐことはできるが、傷跡を綺麗になくす繊細な治癒術は施せない。


 気づけば他の精霊がこの子の体にひっつき傷を癒し始めた。

 頭と目を癒しているのは俺が契約している精霊。

 この精霊たちは俺と契約していない、いわば野生の精霊だ。

 野生の精霊は気まぐれでよほど相性の良い相手ではないと手を貸さない。

 自発的に傷を癒すあたり、この子は子どもという点を除いても相当気に入られたようだ。


 だが、数が多い。傷の治りは早いだろうがこの子の魔力が枯渇してしまう。

 俺の魔力を渡そうとしたらイヤイヤと拒否された。

 仕方ないので俺の契約精霊に多めに魔力を渡しておく。


 俺は治すのは苦手だが壊すのは得意だから、精霊たちが傷を治療している間にこの子を操っていた術をぶっ壊すか。





 ………………無理だった。

 洗脳・思考封印・命令遵守・痛覚遮断・自死禁止・無許可での移動禁止・情報漏洩禁止などなど術が多数かけられていた。それらが複雑に絡み合いもはや呪いと化している。

 しかも直接魂に刻み付けられていたため壊すに壊せない。

 何とか壊せたのは思考封印。痛覚遮断。

 あとはこの子を起こそう。

 洗脳は本人が自覚すればほぼ無意味だ。

 この子の魔力は桁違いに多く、強い。おそらくこの呪いの術者もそれを理解していて念入りに術を施したのだろう。




 ゆさゆさゆさゆさ。体を揺すってみる。

 起きない。


 とんとんとん。肩を軽く叩いてみる。

 ……起きない。


 ぱしゃん。水を出して顔にかけてみる。

 …………起きない。


 むしろ精霊が怒った。悪かった。もうやらない。

 顔にかけた水を乾かして考える。

 なら痛みはどうだ。

 ぎゅう〜。腕を抓ったら起きた。



「助けていただきありがとうございます。今のところ痛みや体の不調もございません。お若いのに優秀なお医者様に巡り合えて幸運でした」


 起きたらやたら丁寧に感謝された。

 こいつ本当に子どもか? 見た感じ五、六歳のくせに。


「会社に連絡したいので、私の携帯電話を取っていただけますか。あ、病院内だと使えないんでしたね」

「……あーーーー。手短に答えるぞ。俺は医者じゃない。治癒術も使えるただの諜報員。若くもない。もうすぐ三百歳だ。お前みたいなガキにお若いとか言われたくないな。あとこの世界に会社・電話はない。感謝と優秀の言葉は受け取ろう。どうも」


「会社・電話」という単語を聞き、前世持ちと納得する。


 隣国が大量召喚した異世界人を元の世界に送り届ける時にあちらの世界の話を色々聞いた。

 しかもその後、数年向こうで潜入調査をしていたから大体のことはわかる。


 異世界人は戦闘・武器等の記憶と引き換えに多大な魔力を持ってやってくる。

 一昔前にやってきた異世界人が破壊の限りを尽くしたせいで神が怒り、それ以来戦いに関する記憶を奪われているらしい。しかし、それではこの世界では生きにくいだろうと代わりに魔力を付与される。

 異世界人も何かを忘れていることはわかるらしく、常に喪失感に苛まれている。余程の理由がない限り元の世界に戻ることを選択する。


 数十年に一度の周期で落ちてくるので異世界人はさして珍しくもない。

 しかも毎回落ちてくる場所は我が国なので彼らの保証まで出来上がっている。


 逆に前世持ちは珍しい。

 自己申告しなければわからないというのもある。多大な魔力を保有している点は異世界人と変わらない。だが記憶を奪われておらず、戦いが日常だった者は即戦力となる。喪失感に苛まれることもない。


 現にこの子どもも操られていたと知って拳を固く握って怒りを露わにしている。

 面白いな。

 移動禁止がなければ連れて行きたい。



 大人になる前に迎えに来ると約束してこの子の名前を胸に刻み込む。

 左手に俺のシルシをつけ何かあったらすぐにわかるようにした。口付けしなくても良かったが気がついたらしてたから自分でも驚いた。


 本当は名前を教えたかった。

 だが、任務の度に顔と声、己の名前さえも変えているため名乗れなかった。

 嘘の名など覚えていてほしくない。

 俺の本当の名前は一部の記憶と共にあいつが預かっている。

 諜報員という仕事柄、捕まった時必要な情報を取られないようにするため必要な処置だ。


 早く王都に戻りあいつに会わなければ。






 王都の魔王城の一室、ノックの返事も待たずドアを開け中にいる人物に詰め寄る。

 仕事中だったのだろう。机の上には大量の書類が積みあがっているが、そんなの知るか。


「記憶を返せ」


 腰より長いストレートの、一見黒髪に見える暗い青みがかった紫色の髪、切れ長の二重から覗く黄金に輝く瞳は、俺の言葉に驚いた表情をしていたがすぐに何かを納得したように微笑んだ。


「いいよ」


 手に持っていた書類を机に置き俺の頭に手をのせる。

 魔力とともに流れ込んでくるこいつに預けた記憶と俺の本当の名前。

 すぐに目の前の人物に跪いて頭を垂れる。


「魔王陛下。数々のご無礼大変申し訳ございません」

「あーあ、元に戻ってしまったね。記憶が無い時は前みたいにただの友人として接してくれていたのに。それより何かいいことでもあったのかい?」

「手に入れたいものができました。是非とも魔王陛下の解呪術をわたくしにご教授ください」

「へぇ。珍しい。いい加減諜報員辞めてオレの側近になるならいいよ」

「次の任務がございますのでその後でよろしければ」

「お前ならば同時進行できるだろう?」

「…………仰せのままに」

「敬語も禁止ね」

「かし……二人きりのときだけな」

「あとはー」

「多くね?!」


 こいつ本当に魔王かよと言いたくなるが、外面だけはしっかりしてるから俺と居る時ぐらいは大目にみよう。



 待っていろ。例えお前が俺の事を忘れても必ず迎えに行くからな。



 …………そういえば「はらぱん」って何だ?



ロリコンじゃないはず。


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