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side??? イセリア領へ乗り込む

 転移でイラより先にイセリア領にやってきた俺と騎士団長のリッカルド。


 イラが来る前にさっさと邪魔な使用人達を片付けよう。


 屋敷の使用人は俺が。本邸は何度か潜入したことがあるというリッカルドが受け持つ。


 特に本邸はイセリア領の領主、エンツォ・シグノレット・イセリアとローガンという男に勘付かれないように事を進めなければならない。


 元暗殺者のリッカルドは適任だ。


 俺とファルコ、そしてリッカルドは小さい頃からの付き合いで俺はあいつらのことを親友だと思っている。

 だからファルコが魔王に選ばれた時に手助けできればと諜報員の道を選んだ。

 それはリッカルドも同じだったようであいつは暗殺者になりファルコの邪魔をする者を人知れず(ほふ)ってきた。


 ファルコにバレないように影から支えるという選択肢を選ぶあたり、俺達の考え方は似ていると思ったものだ。


 だが、割とすぐにバレた。


「裏でコソコソされるより表から堂々と助けてくれた方が嬉しいよ」


 と、説得されリッカルドは暗殺者を辞め騎士団に入った。

 俺は拒否して諜報員を続けていたが解呪と引き換えに辞めた。


 すべてはイラのために。


 彼女につけたシルシから呪いに抵抗して痛みに苛まれている辛さが伝わってくる。

 今すぐ抱きしめてその辛さを代わってやりたい。



 彼女に再会してすぐに気がついた。呪いが上書きされていると。

 監視の術まで施されていたから正体を明かすことができなかった。

 魔力封じの包帯を消すときに監視の術は一緒に消したが、念のためすべてが片付くまで名乗り出ないことにした。


 呪いに対抗するため額に口付けした時、自我を保てるように術をかけた。両手の甲に口付けした時は、左手には殺意を弱めイラ自身に気づかせる術を。右手には呪詛返しの術を施した。


 イラの解呪を少しでも成功させるために呪いを術者に返さなくてはならない。他ならぬイラ自身の手で。


 イラに呪いをかけた人物の候補は二人。

 イセリア領の領主エンツォと執事長のローガン。

 この二人をイラに殴り飛ばしてもらうために邪魔な奴らを一掃する。



 使用人達を気絶させ、魔力封じの枷をつけて王都の地下牢に転移させる。

 もしかしたら脅されたりして仕方なく従っていたかもしれないが、そんなの知るか。俺にとっては幼いイラの傷を放置していた時点で重罪だ。

 魔王陛下が許しても俺は絶対に許さない。


 そういえば、魔術師団長が開発した魔術の被験者を探していたな。恩を売るためにもこいつらを提供するか。


 ……イラがイセリア領に着いた。俺も本邸に行こう。


「よぉ、リッカルド。どうだった?」

「問題なし。元々使用人自体少なかったからな。ほとんど屋敷の警備に回されていたみたいだ。おかげで楽だったぜ」

「領主とローガンの居場所は?」

「それも把握済み。領主は二階奥の執務室。ローガンは嬢ちゃんが近づいているのに気付いたな。地下通路に移動してる」


 合流したリッカルドは返り血もつけず飄々と言い放った。楽だったと言いつつ暴れたりないと目が物語っている。

 こいつは元暗殺者のクセに対象を殺るときは派手に始末していたしな。

 騎士団で堂々と暴れられるのは性に合っていると思う。


 その分、副団長のフラヴィオが事後処理に奔走し苦労しているらしい。

 あいつはイラと二人きりになるし、勝手に名前を呼ぶし、気に食わないからいい気味だ。もっと苦労しろ。


 そろそろローガンと会う頃だな。

 二人に見つからないように陰に潜み息を殺す。


 本当なら俺達があの二人を捕らえて呪いを解かせたい。

 だがイラにさらに呪いを重ね掛けして、俺達と同士討ちにさせようとするかもしれない。

 イラが一人で乗り込むことで油断が生まれ隙ができるはずだ。




「俺達の再会の合図だろう? 忘れてしまったのか。セイラ」


 あの野郎!! 俺とイラの再会の合図のことを知っていやがる!

 魔王を殺せとか潜入していたとか適当な事ほざきやがって!



「これが腹パンよ! お前みたいな嘘つきが勝手に愛しのあの人を名乗るな!!」


 ローガンの腹に二発の拳をお見舞いしたイラが高らかに言い放つ。

 途中イラは完全に騙されたかと思った。ローガンが瞳から洗脳を施す術をかけていたからだ。

 しかし、あれが長年の疑問だった「はらぱん」か……。


「お前、あの強烈な拳を再会の合図にしたのか」


 リッカルドが気の毒なものを見る目で「死ぬなよ」と付け加える。

 死ぬつもりはないが骨の二、三本は覚悟しておくか。


 イラがふらつきながら階段へ向かう。今度は領主の元に向かうのだろう。

 ローガンを殴り飛ばしてもイラの呪いは残っている。

 まさかとは思うが二人から呪われていたのか。


「いや〜しっかし、嬢ちゃんの拳はすげぇな。騎士団に欲しいくらいだ」

「あ? イラは俺のだ。誰がやるか」

「でもお前の部下にしたら使い潰すだろー」

「来る奴らが使えないから有効利用しているだけだ」

「ひでぇな……っと」


 倒れたローガンに魔力封じの枷をつけながら、リッカルドが笑顔で話しつつ無理やり奴を起こす。


「がっ……は、な、貴様らどこから」

「地下牢に移す前に聞きたいことがある」

「リッカルド。ファルコが来るまで待て」


「その必要はないよ」


 姿を現したのは当代の魔王であるファルコ。

 俺達の気配だけで初めて訪れる場所に転移することができるなんてファルコぐらいだな。


「魔王がなんでここに……」


 ローガンが信じられないとファルコを凝視する。

 驚くのも無理はない。

 魔王はカクタス国全体に巨大な結界を張るのが主な役目で、結界を維持するために王都から出ることができないからだ。


「オレの愛する妻のおかげだよ。まだ実験段階だから長時間は無理だけどね」


 妃殿下のことを語るときだけ頬を緩め、目じりが赤く染まる。さんざん惚気を聞かせられた俺達にとってはいつもの光景だ。

 だが一気に魔王の威圧感を身に纏いローガンを一瞥する。



「さて、カクタス国の国民ではない君に聞きたいことがある。…………八十年前に死んだはずのイセリア領の領主が生きているのは何故なんだい?」



どうも、こんにちわ。騎士団副団長フラヴィオだ。

本編と関係ないためサラッと流された結界について説明をするためになぜか呼ばれた。


魔王陛下の主な役目はカクタス国全体に結界を張る事。

その理由はこの国独特の進化を遂げた魔獣を外へと逃がさないため。

その昔魔獣が他国へと移動し一夜で国を滅ぼしたことがあるそうだ。いらぬ争いの火種を生まぬため結界を張ることになったと伝わっている。


この結界の副産物として他国からの侵入者も阻んでいるぞ。

だが、イセリア領とルビーロウ王国の間にそびえたつ丑寅の大樹はドラゴンの生き血で育ったためか結界を中和してしまい唯一カクタス国の侵入経路となっている。


八十年前の戦争のときに発覚した結界の弱点だ。


巨大な結界を維持するために魔王陛下は王都から出ることができない。少しでも魔王陛下の負担を減らそうと王都は王城を中心に建物が魔術陣を描いているから機会があるなら上空から見てみるといい。


以上だ。



どうでもいい設定を考えるのが楽しい今日この頃。長くてすみません。

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