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異世界転生したらしい

よろしくお願いします。

目標は完結です。

 おかしいな。

 体が動かない。

 手足は氷のように冷たい。


 それなのに頭は燃えるように熱い。

 頭から自分の熱が逃げているみたい。


 歯科医院で麻酔を打たれた時に似た痺れているような、膨らんでいるようなそんな感覚が全身を襲っている。

 ふと、このまま眠ったら気持ちいいんじゃないかと思えてきた。


「今、救急車呼びましたから! 寝ちゃだめですよ!」


 私の心の声を読んだかのように、高校の制服を着た男の子が声をかけてきた。


 その制服、有名な進学校の大雪山国立大付属高校のじゃないですか。

 もったいないな。


 胸元にあるはずの高校のエンブレムが血で染まって見えなくなっている。


 この子ケガしてるのかな?

 ケガをしているなら早く手当てをしないと。

 服についた血って落ちにくいんだよね。

 教えてあげなきゃ……あ、でも眠いから起きてから………おし……え……て……………………





 ◆





「痛っ!! いだだだだだだ! 痛い! 痛い!」

「起きろ」


 どうやら腕を抓られていたみたい。ねじりまで加えて。


 いやいや起こし方をもう少し考えて。

 寝起きは悪くないから名前を呼んで起こしてもらえればすぐ目を覚ますのに。

 それよりも視界が真っ暗なのはなんで?


 両手の感触からベッドのようなものに寝ているのだろう。

 その手をそのまま自分の顔にやれば、何やらザラザラした布で頭と目の部分が覆われていた。


「首から上が一番ひどくてな。俺の治癒術じゃそこまで治すのが限界だった。死んでないから良しとしろ」


 声からして二十代くらいの男の人は医療関係者らしい。

 どうやらこの男の人に助けられたみたいだ。


 ちゅーじゅちゅ? あ、多分違う。ちゆじゅつかな? ちゆじゅつって何?

 新しい治療法?

 とりあえずお礼を言わねばっ!


「助けていただきありがとうございます。今のところ痛みや体の不調もございません。お若いのに優秀なお医者様に巡り合えて幸運でした」


 ベッドの上から失礼かと思ったが、点滴をされている感触はないのでその場で正座をして声のしたほうに頭を下げた。

 点滴されたまま体を動かすと針が刺さっている部分が痛いんだよね。

 視界が真っ暗な中でベッドの高さもわからないし、降りた瞬間こける可能性がある。

 裸足だし。

 寝たままお礼を言うより幾分マシだと思おう。


 この時、自分の声がやたら高く、体が動かしにくい違和感を覚えたが麻酔がまだ効いているかな……ぐらいで特に疑問に思わなかった。


「会社に連絡したいので、私の携帯電話を取っていただけますか。あ、病院内だと使えないんでしたね」

「……あーーーー。手短に答えるぞ。俺は医者じゃない。治癒術も使えるただの諜報員。若くもない。もうすぐ三百歳だ。お前みたいなガキにお若いとか言われたくないな。あと()()()()に会社・電話はない。感謝と優秀の言葉は受け取ろう。どうも」


 え? どゆこと?

 諜報員ってスパイとか映画の中の世界だよね?

 三百歳って数字の数え方間違えてますよ~ははは。

 お前みたいなガキって私これでも三十オーバーなんですけど。

 この世界に会社・電話はないって、ん?

 こ・の・せ・か・い?


「あの、この世界ってことは、ここは日本……じゃないのでしょうか?」

「違う」

「え、じゃあここ……どこ?」

「カクタス国。魔王陛下が治めているから魔王国とも呼ばれているな」


 魔王とかどこのファンタジーな世界だよ。


「異世界人はこの前隣国が戦力として集団召喚してたし、ポロポロ落ちてくるから珍しくないんだが、お前みたいな前世持ちは珍しいな」

「いやいやいやいや前世持ちって私、死んでないですよ?」

「お前……見た目五、六歳のガキなのに会社行ってたのか?」


 五、六歳のガキだと?

 全身を自分で触ってみる。

 全体的に小さい、小さいぞ。

 さっき体が動かしにくかったのは私の三十過ぎの大人の身体の感覚と、今の子どもの身体の誤差のせいか。


 そうだ。私、小学生の時ミシンでエプロンを縫っていたら布に巻き込まれて親指ごと縫ったんだ。その時の傷があるはず。

 親指は複雑骨折するしあの時は相当痛かったな。


 右手で傷があるはずの左手の親指を触ってみる。


 ない。ないぞ。どこにもない。

 しかも親指を曲げたときいつもある引っ張られるような引き攣れた感覚もない。


 嘘、じゃあ私は一回死んでこの身体に生まれ変わったの?! 異世界転生ってやつですか。



 ……………………。



 なーんて。まっさかー。

 この人は私を助けてくれたみたいだし悪い人ではないんだろうけど、魔王とか前世持ちとかありえないことを信じろというほうが無理があると思う。ただでさえ視界が真っ暗で何も見えないのに。

 とりあえず自分の姿を鏡で確認するまでは信じることができない。


「精霊がお前の魔力を元に細かい怪我を治しているから、自然に包帯が取れるまでそのままにしておいた方がいいぞ」


 目に巻かれている布を取ろうとしたら注意されてしまった。

 精霊いるんだ。しかも魔力があるらしい。ますますどこのファンタジーだよ。


 聞きたいことはたくさんあるが、この人が私を助けてくれたのは明白なので何かお礼をしたい。


「とりあえずあなた様のお名前を教えてください。今はまだ何もできませんがいつか必ずお礼を致します」

「お礼はいい。お前の目を潰したのは俺だしそのお詫びって事で」




 おいこら。

 聞き捨てならないことを聞いてしまった。




お読みいただきありがとうございます。

明日の0時に投稿します。

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