表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/35

血のバレンタイン事件

「えええええ!? ど、どうなってるんですか!?」


 信じられない、と言わんばかりにウェンズディが目を丸くする。


 さもありなん。

 蠢く地竜(モール・モール)の適正レベルは20。とはいえ、あくまでもそれは階層ボス(P・O・B)としての適正レベル。パーティで戦うときの適性レベルが20という意味だ。

 今回の俺のように一人で相手をするならレベル30以上必要な相手なのである。


「ウェンズディ、落ち着け。

 この世界の歴史書には【血のバレンタイン】という事件が記録されていてな」


「へ?」


 ――血のバレンタイン事件。

 それは300年前のバレンタイン期間に発生した事件とされている。


 現代のバレンタイン期間では期間限定アイテムとして、

・☆4:ブリリアントチョコレート

・☆3:ゴージャスチョコレート

・☆2:なめらかチョコレート

・☆1:ゲロマズ・チョコ


 が、ガチャアイテムとして出てくるんだけど、300年前のラインナップでは☆1のチョコレートは【カッチカチのチョコレート】と呼ばれるものだった。


 そして【カッチカチのチョコレート】のフレーバーテキストはこう。


------------------------

カッチカチのチョコレート

------------------------

レア度:☆1

「ほ、本命じゃないんだからね!?」とチョコレートを渡された青春のときめきプライスレス。

折れた歯の治療費プレミアム。

あまりにも硬いため、何者も噛み砕くことも折ることもできない。

------------------------


 攻撃力も設定されていてその数字は50。

 なんと☆3武器、ミスリルソードにも匹敵する攻撃力を誇っているのだ!


 ――300年前の冒険者たちは考えた。

 『これを武器にしたらどうなるんだろう?』と。


 とまあ、ここまでならよくある話。誰でも思いつく話。


 だけど、ほとんどの者はすぐにあきらめた。

 拳大程度の大きさのチョコレートなんぞ武器にしたって仕方ない、と。


 ……ところでこの世界。

 ガチャ・インベントリに当てたアイテムを置いている間は同一アイテムを重複させることや、レア度別の強化アイテムを使用することで強化できる。

 銅の剣なら『銅の剣レベル2』みたいな感じで。


 強化できるのは食料品も同様で、例えばもずく酢なら『内容量1人前』が『内容量2人前』になる。

 量が増えるだけなので意味がないため、食料品のレベルアップなんて誰もやろうとしない。普通なら(・・・)


「だが! カッチカチのチョコレートは強化をすることで体積が増え、決して折れぬ鈍器として扱うことができるのだぁぁぁぁぁっ!」


 さらに! レア度☆1のカッチカチのチョコレートは簡単にマックスレベルの10にすることができるのである!


 ちなみにレベル10時点のカッチカチのチョコレートの攻撃力は200。


 ――というわけで300年前のバレンタインではチョコを片手にモンスターをハントする冒険者が続出した。


 狩られたモンスターたちにとっては苦いバレンタインの記憶である。チョコだけに。


「それチョコレートぉぉぉっ!?」


 俺の手にある黒い物体の正体を知って、ウェンズディが叫ぶ。


 さらにプロテインドーピングで倍率ドン! レベルアップも合わせて俺の攻撃力は(30+200)*5.2=1196!!!

 そう! いまの俺は☆4の『ドラゴンスレイヤー レベル10』を遥かに超えた超火力の持ち主なのだ!


 いま現在、このダンジョン内において俺の敵はおらぬ。


「ふはははっ! ウェンズディ! お前のチョコは最高だぁぁぁっ!!」


「その凶器をわたしが作ったみたいな言い方やめてください!?」


「そんなことはどうでもいい。急いでクリアするぞ!」


 カッチカチのチョコレートの消味期限(・・・・)は実体化させてから2時間。それを過ぎると消えてしまうのだ!


「そこのけ、そこのけ!

 ふはは。脆弱(ぜいじゃく)、脆弱ぅっ!!」


 俺はチョコレートをぶんぶか振り回しながら、ダンジョン内を蹂躙するように走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ