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蒼天の奇跡

「いや、そのナバルさん!? わたし、アレですよ!?

 いくら廃盤アイテムが出るって言っても、その……しょせん☆1ですよ!?」


 俺の言葉に慌てたウェンズディがあわあわと手をばたつかせる。


「ウェンズディ。そんなに自分を卑下するんじゃない」


 それはきっといままで積み重なってきた自信のなさの表れであろう。

 だから、俺はウェンズディの頭を優しく撫でた。


「俺はお前の知らないウェンズディを知っている。

 なんにでも頑張り屋で、ツッコミ役で、誰かの役に立ちたくて、ひたむきなガチャ精霊を」


 そう。

 やらなくてもいいダンジョン攻略の手伝いをしようとついてきた健気な妖精を、俺は知っているのだ。


「ナバルさん……」


 おずおずと、まるで捨て犬のような目で見上げてくるウェンズディ。


 ウェンズディは俺だ。

 不運のまま死んだあのときの俺だ。

 口だけで頑張ると言っていたものの、心の何処かが諦めていた昔の俺なのだ。


 だから、俺はウェンズディの気持ちがよくわかる。


「だから、自分を信じろと言わない。

 お前を信じる、俺を信じろ!」 


「あ、あなたはこのアンラッキーを信じてくれるのですか……」


「もちろん! だって初めに言っただろう? お前は『最高』だってさ。

 俺にとって最高のガチャ精霊だよ、お前は」


 ウェンズディの目からぽろりと涙がこぼれ落ちた。

 きっといままで誰にも言われたことのない言葉だったのだろう。


「ナバルさん……。

 わかりました! あなたが信じてくれるのならば、他に何が必要だというのでしょうか!」


 涙を拭いて、ウェンズディが空に向かって手を掲げる。

 運とはこの手で掴むものだ、と言うように力強く握りしめて、言う。


「出でよ、ガチャフィールド!」


 俺の足元から光の格子――ガチャフィールドが生み出される。


 選ぶガチャの種類はもちろんプレミアムガチャ。


 1回10万KG(カキンガク)、10連ガチャで100万KGのまさにプレミアムなガチャ!


 俺の所持カキン額は1億KG。すなわち1000回分!

 ☆5の確率は0.2%なので、ひとつ以上出る確率は86.49%! さらに言うなら期待値は2個だ!


「いけええええっ!!」


 俺がガチャボタンを押すと同時に、豪華なエフェクトが空の浮かび上がる。


 食料品ガチャや日用品ガチャとはまったく違うど派手な光――これがプレミアムガチャ!


 そして、降りて来るは空の青さよりもなおまばゆい、蒼10個!


 そう! ☆1である。


 その光景を見て誰かが叫ぶ。


「馬鹿な!? プレミアムガチャは最低でも☆2確定で、☆3がひとつ以上排出だぞ!?」


 それは自分の常識が打ち崩されたという恐怖にからくる悲鳴。

 だがそんなことは知ったことではない!


「うおおおおおお!!!!」


 さらにプレミアムガチャ10連を押す。

 またしても降りて来るは……10の蒼い光!


「そんな!? なんという……」


「やめろ! お前はガチャに向いていないんだ! 待て! それ以上押そうとするな! やめろおおお! カキン破産するぞおおおお!?」


 誰かが俺を心配するような声を上げるが、お前たちはガチャの本質を知らないから、そういうことを言うのだ。


「うおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ぽちちちちちちちち


 俺のボタン連打に合わせて神々しいプレミアムガチャのエフェクトから空から降り立つ、奇跡の蒼!


 周囲の冒険者が呆然とした様子でその光景を眺める。


「これは本当にプレミアムガチャ……なのか?」


「俺達は何を見ているんだ……。凄まじい」


「こんな悪夢がまさかこの世に……」


「見ろよ、あの青さを」


「ああ、まるで大地まで真っ青になって震えているようだ」


 プレミアムガチャのエフェクトは他のガチャよりも長く演出される。

 そのため、俺の周囲はもはや海の青よりも深く染まっていた。


 やがて、1000回押し切ったとき。


「あじゃぱー。☆2すら……1個もないのです……」


 ウェンズディが完全に放心していた。


「馬鹿な……。こんな……これほどの爆死がこの世にあっていいものなのか……」


「あれが、アンラッキーウェンズディ……」


「ああ、恐ろしいほどの運の悪さだぜ」


 冒険者たちがウェンズディの悪口を言うが、だがそこまでだ。


 俺はさらにガチャフィールド内で、とある操作を実施。

 ここまでかかった時間は7分。アルビオンの攻撃まであと3分。


「うう。やっぱし、わたしは☆1しか出ないのです……」


「☆1しか出ない? それは違う! 違うぞ、ウェンズディ!」


 俺はガチャフィールドを解除すると湖の中のアルビオンと対峙した。準備は完璧だ。恐れるものなど何もない。


「ナバル……さん?」


 俺の行動が理解できないような表情でウェンズディが茫然と見あげてくる。


 だが、ウェンズディ。自信を持て。

 これから起きることは――お前がパートナーだからこそできたことなんだ。


「お前が言った言葉だぜ?

 ☆5のアイテムは出る(・・)んじゃない。出す(・・)もんなんだってな!」


 俺は天高く手を伸ばした。


「ナバルさん? 何を……?」


 みんながガチャ爆死に呆然としているなか、俺は一人だけ勝利を確信し、ガチャインベントリからそのアイテムを取り出した。


「とくと味わうがいい。カキン額1億の重さをっ!!!」


 ……ずごごごごご。


 ――水の枯れた湖のなか。魔力をチャージし続けるアルビオンのその頭上。

 ガチャインベントリから実体化されたのは巨大すぎる物体だった。

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