古代文明の白いやつ
「よーっし! この階層の何処かにポンコツがいるんだな!?」
俺たちは7階層を突破して6階層へとたどり着いていた。
ここまで所要期間は45分。
カキン額を納める期限まであと2時間と少し。
「あははー。強い魔導ゴーレムがいっぱい出てきてみんなボーン!かしらー」
チッ、アリッサベルが壊れてやがる。
おかしいね。
毎回『ま、まさかあれは……』『知っているのかアリッサベル』『ええ、あれは古代文明の……』みたいな解説役してただけなのにね。
手ごわかった敵が味方になる現象ってほんと悲しい。
いや、手ごわかった記憶もないんだけどさ。
「あははー。神級ダンジョンにでてくるようなのがボーン!って。一撃でボーン!って」
「ええい。そろそろ正気に戻れ。バカ」
ともあれ、ここまで順調ではあるが、なにぶん時間制限のある身である。
さっさと脱出アイテムが使える階層に――
「――って、アバコ、どうした? いきなり足を止めて」
と俺が尋ねたのは、アルバコアが足を止めて首を傾げたからだ。
「いえ、ね。制御室の方向にあの子の反応がなくて」
瞳の虹彩をクルクルと輝かせながら前方をにらみつけながら言うアルバコア。
「? アバコにすごいビビってたようだし逃げ出したとか?」
「それはないわ。あの子とっては『アルバコアを倒せ』という命令が至上命令だもの。
戦略的撤退で立て直せる状態ならまだしも、援護が期待できない現状でそれはないわ」
アルバコアはドヤ顔で、「ま、しょせんはポンコツなのよ。あの子」と肩をすくめるけれど、
「(命令無視して外部メモリ焼き捨てるやつより、そっちの方が高性能だと思うんだけど)」
「(しっ。ナバルさん。それは同意ですが、アバコさんに聞こえちゃいますよ!?)」
「あなたたち……。まあいいわ。あの子がいるのは……こっちね」
言って、アルバコアがくるりと方向転換。細い通路に入っていく。
なんていうか、物置を兼任した作業者用の通路って感じ?
「え? こんな方に?」
「もしかすると誘われているのかしらね。
魔導識別信号をバンバン出しているから間違いないわ。にしても、この通路、荷物置きすぎじゃない?」
そんなこんなで荷物をなぎ倒しながら進むこと約2分。
「行き止まりじゃないか」
「ええ、そうね。ぱっと見は」
言うとアルバコアは腕を岩の方に向けた。
「ちょ、おま!? 恥をかいたからって岩に八つ当たりするのはいくないと思います!」
「黙ってなさい」
ぴちゅーん!
通路が一瞬閃光に包まれ、目がくらむ。
「……おおう?」
数十秒後、視力が戻ったとき。
岩はアルバコアのビームを受けて、どろりと溶けて穴を開けていた。
……いや、違う?
溶けたのは岩ではなく金属?
真っ赤に溶けたそれの断面は真っ赤ではあるが、ひと目でそれとわかる金属の光沢を持っている。
しかも1メートル近い分厚い鉄板だったらしい。
穴を覗いてみると、向こうには広い空間があるのが見えた。
「空洞? ……隠し部屋?」
「のようね。行くわよ」
言って、アルバコアはドロドロに溶けた穴の中を、ウェンズディを抱きかかえてノッシノッシと進んでいく。
え、ちょっと待って。
この穴、めっちゃくちゃ熱そうなんだけど……。
「早くなさい」
「は、はいかしらー!」
俺が躊躇していると、アリッサベルも普通にその上をすーっと通過。
くそっ! あれが☆5装備の性能か!
でも海パン網タイツ装備な俺がこんなとこ通ったら死んじゃうんだけど。
……あれ? これ、もしかしてダンジョンに挑んでから最大の危機なんじゃね!?
「まあ、それはそうとしてぴょいーっとな」
地道に筋トレをしていた人間を舐めてはいけない。
走り幅跳びの要領でぴょいーっと……あばーっ! 放射熱だけでめっちゃ熱い! 予想以上に熱い! 死んじゃうー!!!
じたばたじたばた。
無事とおりぬけたものの、穴を通り抜けた熱さに身もだえする俺。
「まったく、何やってるのかしら」
そんな俺にばしゃーんと飲料水(☆1)をかけてくれたのはアリッサベルだった。
さらにヒーリングのスキルをひょいっとかけてくれる。
効果から考えると、いま使用されたヒーリングの魔法は☆2。(この世界、スキルすらもガチャから得るのである)
なんて良い奴なんだろう。そんなレアなのを俺なんかに使ってくれるなんて。
「アリッサベル、お前いいやつだな」
「かしらっ!?」
素直に礼を言うと、なんか気持ち悪いものを見る目で見られたんだけど。
まあ、いい。
それはともかくこの空洞だ。
さっきまでの魔導研究所とは違い、ほとんど視界の通らない闇。
アリッサベルがスキル『ライト(☆1)』で辺りを照らそうとするが、ひとつだけではぜんぜん足りずに2つ、3つと使用していく。
うわ、もったいない。
ライト(☆1)のスキルはレベル10にしたら目くらましの閃光玉として使えるのに。
ともあれ、おかげでだいぶ見えるようになってきた。
しーんと静まり返ったその空間は、格納庫のようだった。
立体的に組まれた通路が縦横無尽に走り、地上に出るための射出装置すら見える。
「……まるでロボットアニメだな」
俺が呆れるように言ったその瞬間だった。
「よくきたであります!」
カッ。
クスィフィアスの声が響きわたり、天井のライトが点灯する。
格納庫内部が光で満ち溢れ、その全容を露わにした。
「あなた、それは……」
アルバコアが声が聞こえてきた方向、格納庫の中央に鎮座するそれを見て思わず息を呑んだ。
「アーハッハッハ。さすがのアルバコアもこれには驚いたようでありますね。
そう! これこそが、我らが祖国の誇る魔導人形埋込式決戦用魔導ゴーレム。
その名も『リーサル・アルビオン』であります!」
それは、体長40メートルはある、白を基調とした巨大魔導ゴーレムであった。




