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カキン額は1おくまん

「こ、ここはいったい……」


 俺の上から降りたアリッサベルが周囲を見回し絶句する。


 その空間はあまりにも超文明的だった。


 地面は継ぎ目のない一色の白。天井には煌々とした輝き。

 地下だと思えぬ広い空間には柱のひとつもなく、どこまでも見晴らしがいい。


 いったいどれくらい広いのだろうか。その空間はつぶやいたアリッサベルの声を吸収し、こだまする。


「もしかしてここは……伝説に伝え聞く、古代文明の遺産なのかしら?」


 アリッサベルが怯えと興奮が入じ混じった、震える声で尋ねてくる。


 現代の冒険者にとって、未発見の古代遺跡を見つけるのはとても幸運なこととされているのだ。

 興奮するなというほうが酷であろう。


「まさかこの超級ダンジョンにこんな場所があるだなんて……。

 それにしても本当にすごい技術かしら。ねえ、ナバル。古代人はいったいどう――」


 いつになく興奮気味にアリッサベルが俺の肩を叩こうとし――。


「おい! 見ろ、ウェンズディ!

 いまゲットしたカキン額が……やばいぞ!」


 けど、そんなの関係ねえ!


 ここまでで達成した実績クエストの報酬がやばいことになっているんだけど!!


 いや、これはそれだけじゃない。

 俺の冒険者カードに刻み込まれたその報酬額は、バニーボーイセットの『幸運』効果でさらに倍率ドン!


 そのカキン額なんと――100,000,000!!!


「い ち お く !?!?

 をををを!!?? これはやばいですよ、ナバルさん! やばいやつです! 具体的に言うと……やばいです!」


 ウェンズディの目が$になってやがる……。

 だが仕方ない。こんな額を見たら、ただでさえ貧弱なボキャブラリーがさらに貧弱になろうというものである。




この世界の人間の生涯カキン額は平均で3億と言われている。

 つまり俺は、冒険者になってたった3日でその3分の1をすでに稼ぎぎったということ!


 ふっ、さすが俺。

 異世界転生人の面目躍如ってところか。


「な、ナバルさん! このカキン額があれば!」


「おう! 年会費を払うどころか、今度こそ草なんて食わなくても済むぞ!」


「何を言ってるんですか! それどころじゃないですよ!?

 ホテルガチャでロイヤルスイートが出るまでガンガン回せるじゃないですか! 目指せ酒池肉林なのです!」


 ばんざーいばんざーい。希望の未来へレディーゴー! と俺たちが喜んでいると、


「あなたたち、ちょっとは危機感を持つかしら!」


 アリッサベルに怒られた。

 教師が子供にそうするように指をぴっと立てる。


「いいかしら? ここは超級ダンジョンの最下層のさらに下。隠し階層と呼ばれる場所かしら。

 さっき完全攻略ってアナウンスが流れたけれど、いままでの傾向から考えると……。

 聞いて驚くかしら。ここの難易度は絶級相当になるかしら!」


 そういやソシャゲって難易度適当に作るよね。

 神級とかインフェルノとか地獄とか。


 絶級って言われてもぜんっぜんわかんねーんだけど。


「でもダンジョン脱出アイテム使えばいいんじゃないの? 俺はもってないけど、アリッサベルなら持ってるだろ?」


 たしか☆3のアイテムで、名前は『帰還の糸』。


 ☆3だけあって、ぽこぽこゲットできるものではない。

 とは言えBランク以上の冒険者なら念のために持ち合わせている程度にはメジャーなアイテムだったはず。


 アリッサベルもさっきので2500万KPくらいゲットしたはずなので、ケチケチせずに使ってくれてもいいよね。

 だけど、アリッサベルは沈痛な面持ちで首を横に振った。


「それが……さっき試してみたんだけど使えなかったかしら」


「……え? それってだいぶやばくね?」


 超級の1層ですら割とギリギリって思ってたのに、それ以上の難易度の最下層とかクリアできる気しないんだけど。


「だからやばいって言ってるかしら! いくらカキンしてもガチャに使えなかったら、ただの絵に描いた餅かしら!」


「で、でも! ぱっと見、敵とかいないし! たぶん、ただの通路……」


 そのときだった。

 広間の奥のほうから、天井の光とは違う色の光が漏れだしてきたのは。


 ゴゴゴゴ……


 揺れとともに俺たちが壁だと思っていたソレが開いていく。

 扉というにはあまりにもでかい……飛行機工場のハッチを思わせるソレ。


 その奥から現れたのは――


「ひっ」


 アリッサベルがその威容に悲鳴を飲み込む。


 大きさは軽く10メートルを超える四足獣。

 化け物と言っても、生物的というよりはメタリックなケーブルなどが見え隠れしていて、いわばアルバコアの親戚のよう。


「あ、あれは……もしかして」


 ウェンズディが息を呑み、自分の仮説を言うよりも早く。


「我ハ守護者『グレイト・ベヒモス』ナリ。国家ノ敵ヲ滅スルモノナリ」


 ぷしゅーっと蒸気を漏らしながら、そいつは言った。

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