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攻略! 超級ダンジョン

 ギルドから出発して10分後。

 俺たちはハルベルの超級ダンジョンへとたどり着いていた。


 ハルベルからまっすぐに北。

 なだらかな丘陵の上にあり、その真横には美しい湖。

 街の堀へと流れ込む川が、チョロチョロとダンジョンへ向かう冒険者の心を癒やしてくれる。


「これが超級ダンジョン……っ!」


 入り口の見た目はフィオの中級ダンジョンとあまり変わらない。が、俺はゴクリとつばを飲み込んだ。


 圧倒的な威圧感があるとでも言えばわかるだろうか?


 なるほどこれが上級ダンジョンのさらに上――超級ダンジョンというものなのか。


「おおお……ここが超級ダンジョンなのですね。

 選ばれた者しか挑むことを許されないという……。わたし、初めて来ました」


 ウェンズディもその威圧感に思わず息を呑む。


「わたしにはそういうことはよくわからないけど……。

 でも、この感覚は人間的に言うならばワクワクしてきた、と言えばいいのかしら?」


 アルバコアもやる気満々でなかなかよろしい。


 ――その横で。


「ぐす……ぐす……」


 アリッサベルが鼻水をすすりながら泣いていた。


 え? なんで泣いてるんだろう?

 俺たちが心底不思議そうに首をかしげていると、


「なんで不思議そうな顔してるのかしら!?

 変態に肩車されて街道を爆走するとか、いったいどんな罰ゲームじゃない!?

 もう、表を歩けないじゃないかしら!」


「お、おお……?」


 相当に不服だったのだろう。

 アリッサベルはガバッと顔を上げると、「きーっ!」っと俺につかみかかってきた。


 どうやら、彼女が泣いているのはここまでの道のりのせいであったらしい。


「あー……確かに道行く人たちはみんな大爆笑してましたねー……」


 ちなみに現在、着替える間もなく出発した俺たちの格好はあの戦闘のままの姿である。


 ――想像してほしい。

 マッスル半裸なバニーボーイに肩車された、25歳の魔法少女の姿を。


 ああ。なるほど。

 俺はポンと手を叩いたあと、アリッサベルを指差した。


「超ウケる」


「だ か ら! あんたは少しは反省するかしら!?」


 ぎゅー。ぐえー。首を絞めないで!?


 だが待ってほしい。


「でも、もともとお前自身がイロモノ枠……」


「やかましいかしら!

 だいたい! なんであんたはずっと半裸なのかしら!?」


 アリッサベルがびしぃっと俺に指を突き付けてくる。

 が、ああ、ついに聞いてしまったか。


「ふっ、そんなに聞きたいか」


「いや、聞きたくはないんだけど。……っていうか、ろくでもなさそうだから、やっぱり言わないでほしいかしら」


 あーあー。聞こえなーい。

 俺は「ふっ」と笑みを浮かべると、ポージングをしながら海パンの中から冒険者カードを取り出した。


「ああ、そんなに聞きたいなら仕方ない! まずはこの装備のフレーバーテキストを見るがいい!」


------------------------

ぱっつん海パン

------------------------

【レア度:☆】

夏だ! 海だ! 海パンだ!

太陽燦々、筋肉讃さん!

え? でも半裸になるのはずかしいし?


よいでしょう。ならば素晴らしい効果をつけて差し上げましょう!

いまならなんと! この海パンを装着すると、海のなかでも体力が減らなくなります!

------------------------


 神様は言いました。

 海のなか”でも”と。


「そう! この海パンこそは、海の中はもちろん、陸の上でも体力の減らない、体力無限のチートアイテムなのだああああああっ!

 ――やめて!? 首を絞めないで?!」


「首を絞めるどころか、ねじ切ってやるかしら!

 この変態クズ! 最低男!!!」


 アリッサベルが顔を真っ赤にして怒るが、いったい俺の何が悪いというのか。

 この装備のおかげで徒歩1時間かかるところを10分に短縮することに成功したというのに。


 ちなみに、もちろんチートすぎて現在は廃盤となっているアイテムである。


(まあ、しょせんは人間の女なんてこんなものか)


 だが、ガチャ精霊たるウェンズディなら俺の合理的考えを称賛してくれるはず。きっとそのはず。チラッ。


 俺が期待を込めて視線を向けると、ウェンズディはハッとした表情を浮かべた。


 そして「ま、まさか……」と首をぷるぷると横に振りながら、


「ナ、ナバルさん。もしかして、いまだけじゃなくてずっとその海パン一丁でいる気ですか!?」


「おう!」


「おう! じゃないかしら、くそ変態」


 げしっ。

 アリッサベルが足を蹴ってくるが、いまの俺は最高にテンションハイ。その程度のダメージは気にならぬ。


「ふははは、何とでもいうがいい!

 俺がずっと半裸でいるのは、装備効果が目的であって、断じてストリーキングが目的ではございません!

 断じて! 露出狂ではございません! ご了承ください!」


「絶対に嘘です! 嘘乙です! だったらどうしてナバルさんは事あるごとにポージングしようとするのですか!?」


「これは俺がポージングをしているのではない。海パンという装備によって解放された我が筋肉たちが自然に躍動しているのだ!

 見よ、アリッサベル。この大胸筋の輝きを!」


「いやああああ! 近づいてこないでかしらあああああ!?」


 超級ダンジョンの前にこだまするアリッサベルの悲鳴。


 と、ここでアルバコアの冷たいツッコミ。


「――っていうか、聞きたいんだけど。こんなことしてる場合なの?

 ここまでに、すでに10分使ってるんだけど」


「そうだよ! アバコの言うとおりだよ!

 こんなことしてる場合じゃねえ!」


 さすがアルバコア。クールな女である。

 俺はダンジョンの入り口の様子を見た。


 さすがにこの時間から新たに挑もうという者はいないらしく、入り口は閑散としたものだ。


 よし、これなら周囲のパーティを気にせずに一気に走破できそうだ。


 突入するための装備はもちろんバニーボーイ。

 体力無限のぱっつん海パンを最大限に利用するためである。


「じゃあな、アリッサベル。色々あったけど、ここまでの道案内サンキューな。助かったぜ」


「え、ほんとにいくのかしら!?

 あのね、あなたは知らないかもだけど、超級ダンジョンっていうのはちゃんと準備した☆5装備の冒険者が5人で挑むものなのかしら」


 言ってアリッサベルが帰還ゲート――ダンジョンから脱出アイテムを使った場合にたどり着く場所――付近を指差す。


 この時間になると攻略を切り上げた者が多いのか、複数のパーティが談笑している。

 その人数はほとんどが5人――パーティーを組める最大の人数だ。


「もちろん知っている。だが、すまない。いまは時間がない。

 これ以上の話はまた今度な」


 言って、俺はダンジョン攻略の準備を始める。

 アリッサベルの言うとおり、超級っていう名前は伊達じゃない。ちゃんと用意しないと余裕で死んでしまうのだ。


 アルバコアに本気出させるために、修復スプレーをちゃんと用意して、と。

 トラップではぐれる可能性を考えて、念のためにウェンズディにも持たせておくか。


 あとは使いそうなアイテムの残数を確認しておかないと。

 目くらましのために、熱湯2L(☆1)はすぐに取り出せるようにしておいて、と。

 閃光玉とかあればよかったんだけどさすがに日用品ガチャには入ってなかったんだよなぁ……。


 そうこうしてる間もアリッサベルが横で「うー!」とか「あー!」とか言ってたりするんだけど、なんだろね?


「どうした。更年期障害か?」


「違うかしら!?

 その……なんというか。ここまで付き合ってあげたんだから、ダメ元で言ってみる言葉とかないかしら!?

 昨日の敵は今日の敵というか! そういった類の!」


 ? 何言ってんだ、こいつ。

 昨日の敵もなにも、お前と出会ったのはついさっきだ。


 俺が首をかしげていると、「おお!」っと言いながら手を叩いたのはウェンズディだった。


「もしかして、アリッサベルさん。ダンジョン攻略についてきてくれるんですか!」


「ま、まあ? 『どうしても』って、頼まれればやぶさかではないかしら!」


「ををを! それは是非ともよろしくお願いしたいのですよ! ですよね!? ですよね!? ナバルさん!」


 さっき手合せしたときに感じたが、☆5装備っていうのはやっぱり基礎能力が高い。

 超級ダンジョンの完全攻略が目的ならレベル的にまだ頼りないが、今回の目的が2階層クリアって考えると非常に心強いと言っていい。


 迷う必要などどこにもない。


 俺はアリッサベルに「ふっ」と笑いかけた。


「いいやつだな、お前」


 見た目は痛いコスプレ女だけど。

 俺はパーティーを組むために、アリッサベルに向けて右手を伸ばした。

 これで向こうが握手を返してくれればパーティー成立である。


「ふんっ。このダンジョンの最下層よりも深く感謝するかしら!」


 アリッサベルが「ふんっ」と鼻息荒く、その手を握り返してくる。

 なんてツンデレなやつ。イイハナシダナー。


【アリッサベルがパーティに参加しました】


 俺が握手すると、冒険者カードから例のアナウンスが流れる。


「やったー! ☆5装備の冒険者さんが仲間に入りましたよ!」


 よほどうれしいのだろう。

 ウェンズディが感極まったようにアリッサベルに抱き着く。


 アリッサベルは『あらあらうふふ、人気者はつらいかしら』みたいな表情を見せているが、よく見ろ。ウェンズディは見たことのない☆5装備に頬ずりしているだけだ。


 ほんとあいつ、レアに飢えてやがるな……。


 ……まったく、このパーティメンバーはポンコツばっかりだ。


(だが、悪くない)


 こんなにポンコツで心強い仲間たちがいるのだ。超級ダンジョンすらも怖くない。

 だから、俺は戦闘に立ってダンジョンに向けて歩き出した。


「よし! じゃあ、ダンジョンの攻略を開始だ!」


 俺たちはようやく登りはじめたばかりなんだからな。この果てしなく長い、異世界ダンジョン攻略人生をよ。


 ――そのときだった。


 ぱかっ。

 俺たちの足元の大地が口を開いた。


「え?」


 Q.これはなんですか?

 A.落とし穴です。


 パタパタ。

 足を動かしてみるけれどそこに床はなく。

 足をバタつかせても空を飛べるはずもなく。


「あああああ!!」


 俺たちは奈落の底へと呑まれていった。

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