向かうは超級ダンジョン!
「……お金ないです? じゃあ、稼いできてください。
あ、申請はもう済んでるんでキャンセル不可です。
もし支払期限に間に合わなかったら死にます」
ははっ。かっるーい。
でも、やると言ったら確実に殺しに来るのが、この世界の妖精さんなのである。
なんか俺、冒険者になってから、ここまでずっと妖精に祟られてる気がするんだけど。
「えーと、一応聞きたいんだけど、期限が伸びたり……」
「しないですよ?」
キッパリ。
街にいる妖精さんたちの融通性は皆無。
どこまでも平等に優しく接してくれる代わりに、お役所仕事もびっくりな定型の仕事しかできないのである。
去年からのルールなのに、救済措置なしとかそんなの絶対おかしいよ。
ちなみに支払期限は今日の夕方。あと3時間。
俺の命が大ピンチ!
「ちっくしょおおおおお!!!」
お、落ち着け。考えろ俺!
一番近いダンジョンは……超級ダンジョン!
距離はここから徒歩で約1時間!
往復で2時間と考えて、そうだ!
1時間で2階層を攻略すれば実績クエストで……っ!
だ、だが場所がよくわからない。
(くそっ。時間がないから、迷った瞬間ジ・エンドだ。誰か道案内を頼めそうなやつは――っ!!!)
「あ、あれは!」
そのとき、俺の目に映ったのはアリッサベルだった。
まだ魔法少女衣装から着替えておらず、先ほどの敗戦のショックから抜け出し切れていないのか魂が抜けたように口を開いてぼーっとしている。
「アリッサベル! あんた、そういえば超級ダンジョンに挑んだって言ってたな!?」
さっきの因縁も忘れて、俺はアリッサベルにすがりついた。
「そうかしら。でもそれがいったい……?」
アリッサベルが俺の問いに魂を抜かしたまま、こくんとうなずく。
よっしゃあああああ!
道案内げっとおおおおおおお!
俺はその手をガシィっと引っ掴んだ。
「ひぅっ!? こ、今度はわたしに何をしようというのかしら!?」
その勢いに、魂が戻ってきたアリッサベルの目じりに涙が浮かぶ。
だが、いまはそんなことを言ってはいられない。
「アリッサベル。あんたにお願いがあるんだ」
「わたしにお願い……かしら?」
「ああ、一生で一度のお願いなんだ」
「一生に一度……そ、それってまさか!」
なんかアリッサベルが顔を真っ赤にしはじめたけどなんだろね?
「(冒険者の先輩に聞いたことあるかしら! 戦い合って初めて通じる男と女の気持ち!
確かにわたしも自分を負かした人と、って思ってたけど、まさかこんなに急に来るなんて思ってなかったかしら! ロマンチックかしら!?)」
盛大に勘違いしてるっぽいつぶやきが聞こえたけどまあいいや。
いまの俺はそれどころではないのだから!
だから、俺はアリッサベルの瞳を真っ直ぐに見つめた。俺の必死さが伝わるように。
「アリッサベル」
「そ、そんな……。出会ったばかりなのに。
心の準備ができていないかしら!」
何言ってんだこいつ。
まあ、いいや。
俺はその改めてその両手をぎゅっと掴んだ。
「超級ダンジョンいこうぜ。いますぐ。
ハイかイエスで答えろ。ハリーハリー」
「……。はい?」
よーし! いまこいつ『はい』って言ったな!?
「わっしょおおおおい!!!」
俺はアリッサベルを肩車すると、有無を言わさずに冒険者ギルドのドアをばーんと開いてさらに街の外へ!
道を知らないとは言っても、だいたいの方角は知っている。
どこの門から出ればいいかくらいはわかっているのだ!
「うおおおおお!!!」
そして、全力でだーっしゅ!
俺の人生あと3時間! 歩いてる暇なんかねえ!
「ねえ、その超級とやらに挑むわけ?」
そんな俺に並走しながら尋ねてきたのは、ウェンズディを背中に担いだアルバコア。
あの一瞬で、俺が何をしようとしているか気づき、ウェンズディを拾い上げてついてきてくれたらしい。
さすが古代文明の遺産。
イケてる知性と体力の持ち主である。
「おう! 1時間で一気にいけるところまでいくぞ!」
「1時間? ふっ、長すぎるわ。わたしが本気出したなら10分ってところね」
「ををを! ナバルさんもアバコさんもやる気じゃないですか!」
なんて頼もしいパーティメンバーなんだろう!
うおおおおお! はしれえええ! メロスのように!
「ちょ!? えええええ!? 何かしら、これえええええ!?」
街道にアリッサベルの悲鳴だけがこだました。




