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68「混在」

おはようございます。

すみません、少し寝坊しました。

昨日の日中に67.5話を更新しています。お気づきでない方は、ぜひそちらから。

本日もよろしくお願い致します。


『ヴァン殿!! タロウ殿が!! 溶岩に呑み込まれたでござる!!』



「ウギーさん、緊急事態です! すみませんがお先です!」


 幸い僕らの方が斜面の上です。


「足留めは私が。上は任せたぞ!」

「無理はしないで下さいよ!」


 身体強化最大のままで駆け上がります。


「ちょ、ちょっと待ってよ! ヴァン!」

「通さぬ!」


 後方でロップス殿の刀とウギーさんの爪が上げる音が聞こえます。

 ロップス殿、死んではいけませんよ。


 一気に頂上へと跳び込みました。


「ロボ、タロウは無事ですか!?」

『ヴァン殿! それが……、溶岩に引きずり込まれて……』


 ……それって、既に絶望的なんでは……


『タロウ、誰カニ、呼バレテル、ッテ』


 誰かに?


「プックルはその声を?」

『聞イテナイ。聞コエナカッタ』

「その後すぐに引きずり込まれたんですか?」

『マグマノ柱、上ガッテ、チョットシテカラ』


 なんでしょうか。

 声は分かりませんが、少しでも時間があればタロウなら体に魔力を纏わせられるはず。

 まだ可能性はゼロではありませんね。


「僕が潜ります」

『潜るって溶岩にでござるか!?』

「それしかありません。二人はロップス殿と協力してウギーさんをお願いします」

『任セロ』

『……承知でござる!』


 火口から溶岩を覗き込みます。

 はっきり言って、潜りたくありませんね。

 魔力が切れた瞬間に間違いなく死にます。


 ここが男の見せどころ、しょうがないですね。

 身体強化に回していた魔力を操作し、体の外側に、全力で密度を高くした薄皮一枚分の障壁を纏わせます。


 せぇの――


『すまん、やられた』

 ロップス殿からの精神感応。


「お待たせ! ぼくが来たよ!」



 うるさいのが登ってきましたね。


「今忙しいんです! 今度にして下さい!」

「……何やってんの? 溶岩に飛び込むつもり?」

「見れば分かるでしょう!」


 僕は今まさに溶岩に飛び込む為に中腰になったところでした。


「プックル! ロップス殿をお願いします!」

『任セロ』


 急斜面を物ともせず、プックルが駆け下って行きます。


「山羊さんもかっこい! 欲っしい〜」









 ここ、なんなんすか?

 俺、確かマグマに飲み込まれて……


 ああ、死んだんすか。


 死んだらこんなんなってるんすね。


 俺の周りは真っ白で、白いとこと自分の体の境界が曖昧で、なんか変な感じっすね。

 体も動かへんし……、って動くんすね。


 フワフワ浮かんでる感じやから、泳ぐ感じで動けん事ないっす。ちょっとオモロいっすね。


「あぁ〜あ、ヴァンさん達の世界、守れんかったすね……」


 泣いてなんかないっすよ。

 ここでフワフワしてるのも、ファネルさんちでゴロゴロしてるのもそんな変わんないっしょ。



 でももうちょっとヴァンさん達と旅してたかったっすね。


――タロオ――


 うるさいっすね、だから泣いてなんか、って、え?


――タロオ、聞け――


 そうやん! この声やん!


 うわっ! ズゴゴゴって、ちょ、ちょっと待ってそんないきなり下からマグマ! ちょ――


 はー、びっくったっす。

 俺のちょっと下で止まってくれたっす。


 真っ白な世界の下半分、奥行きがよく分からんけど、見渡す限り真っ赤なマグマ。

 あら、もしかしてここ、地獄っすか?


――タロオよ、聞け――


「聞く! 聞くから出てくるっす!」


 あ、マグマの海からマグマがちょっと浮かんで来たっす。

 ちょっとっても、そこそこ、人一人分くらいっす。おお、人型になったすよ。マグマ人間。


――タロオ、我はこの世界の者が、明き神と呼ぶ者――


「明き神さま……、そうすか。じゃやっぱ死んだんすね、俺」


――タロオ、お前は死んでいない。話がしたかったので、此方に連れてきた。驚かせてすまなかった――


「そうなんすか! ヴァンさん達心配してるやろうから早よ話済ませて! 戻らんと!」


――慌てるな。戻ればほんの僅かしか時は経っていない――


「あ、そうなん。ほな安心やね。で、話ってなんすか?」


――一つはタロオが知りたがっていた、タロオの魔力感知についてだ――


「それそれ! どうなんすか?」


――結論から言えば、無理だ。タロオの世界における魔力が我にも分からない。できないだろう――


「どないせいっちゅうの!! ずっこけたわ!」


――二つめは、我はこの世界であり、この世界は我だ。我は七十年前、1/4となった。1/4だけでも守ってくれた五人には感謝している――


「あ、もう一つ目終わってんのね」


――しかし、タロオも知るように、五人の内の一人の寿命が近い。我の地表に住む、この世界の者どもは知る由もないが、1/4の地表の裏側、我の内側は昏き世界に剥き出しだ。

――剥き出しの裏側の結界が弱まっている。昏き世界の者どもの侵入を許したのも、そのせいだ。

――タロオが結界の礎としてこの世界に呼ばれた事は知っている。力を貸したい――


「なんで知ってるんすか?」


――この世界は我だ。この世界において、我の知らぬ事はない――


「そうなんすか。一つ言って良いすか?」


――良い――


「俺、タロオじゃなくてタロウっすから!」


――…………すまん――


「よっし! 力貸してくれるんなら借りるっす! 具体的にどんなメリットがあるんすか?」


――ただ一点――


「一点だけっすか」


――制限はあるが、我の魔力を使い放題だ。ヴァンに借りる必要なし――


「オッケー! 借りるっす!」


――リスクも一点。我の力に耐えられなければ、自我が崩壊するかも知れん――


「ちょ、それリスク大っきくないっすか?」


――我の魔力に耐えられそうな器を持つのは、この世界に二人だけだ。真祖の吸血鬼ブラムか、タロウだけ、しかしブラムは竜の因子を持たぬ。


――やはりタロウ、お前だけだ――


「……オッケーっす。そう言われると断れんす。契約成立っす」









 ドォォォォォォォン!


 なんです!?

 いきなり溶岩が噴き上がりました。


「ヴァン、あれなんだい?」

「知りません! ロボ、こちらへ! 少し下がります!」

『承知でござる!』


 ロボと共に頂上から少し離れます。

 ついでと言ってはなんですが、遠目にロップス殿の様子を、大丈夫そうですね。プックルが背に乗せて移動を始めました。


「ヴァン! 少し休戦としよう! 明き神はともかく、溶岩とは喧嘩したくないんだ」

 頂上から、少し遅れてウギーさんがやってきました。

「良いでしょう」


 指先に魔力を籠めて差し出します。


「これは少ない魔力でもできる魔術です。知っていますか?」

「あぁ、良いだろう」


 ウギーさんも指先に魔力を籠めてこちらに差し出します。


「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます! 指切った!」



 これでしばらくはウギーさんの方は大丈夫です。

 万が一約束を破れば、体の長い謎の魚にはらわたを食い破られる呪いが発動します。もちろんこちらもですが。


 とにかくタロウです。

 ウギーさんと違って、溶岩と喧嘩してでもタロウを取り返さねばなりません。


「ロボ、僕は頂上に戻ります。プックル達と合流して下さい」

『しかし……』

「聞き分けなさい。今は足手まといです」

『……分かったでござる』


 最初に噴き上がった溶岩が、ダパァンと音を立ててマグマ溜まりに落ちてきました。



「『ぎゃぉぉぉぉぉあぁあぁぁぁ!』」


 頂上上空、全身に紅蓮の炎を纏わせたタロウが叫んでいます。

 とりあえず無事なようで安心しましたが、何があればあんな事になるんでしょう。


 もう頭が痛いですよ。

ヴァンさんにはいつも苦労おかけします。


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[良い点] わー!タロウレベルアップ!? めっちゃ叫んでるけどw タロオてなんか意味あるのかと思ってたら、ただの間違いだったww そして指切りこわいな(・ω・;)
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