表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/186

46「霧」

おはようございます。

昨日の日中に45.5話を更新しております。お気づきでないかたは、ぜひそちらから。

本日もよろしくお願い致します。


「ぐぅぅ、なんだ? 何が起こった!?」


 右胸を手で押さえ、片膝をつきながらも剣を杖に踏み止まるロップス殿。


「分かりません。マエンの後方から何かが飛んで来たとしか」


 しかし、恐らく魔力。

 最悪の展開かも知れません。



「ロップス殿、そのまま姿勢を低くしたままでいて下さい」


 右手に大剣を構え、マエンを牽制したままで、ロップス殿の背中から癒しの魔法を使います。


「魔力の残滓を感じます。魔法、いや、恐らく魔術でしょう。幸い傷自体は小さいです」

「魔術……有翼人か」

「恐らくは」

「かなり楽になった。すまぬ」


 立ち上がったロップス殿へ、マエンを数頭貫きながらさらに飛来する何か。

 大剣に魔力を籠め、それを反らす様に受け流しました。


「うぉっ! 私が狙われているか?」

「どうやらそのようです」


 アギーさんが使った魔術による矢のようなもの。あれにそっくりですね。

 ここまで魔力の消費は相当に抑えて戦えました。

 何とか状況を打開しましょうか。幸いマエン達の動きは緩慢です。


「ロップス殿、走れますか?」

「ああ、全力とはいかんが、マエンに追いつかれん程度にはな。逃げるか?」

「ええ、合図したら森へ走って下さい」

「ヴァン殿は?」

「少し後で追いかけます」


 三度みたび飛来した魔術の矢。


「走って!」


 ロップス殿の背へ向けて飛ぶ魔術の矢を大剣で叩き落とし、そのまま大剣を地に突き立てます。


 できれば使いたくないんですけどね。



 胸の前で、両の掌を円にし、全身に巡らせた魔力で魔術を発動。


《吸血鬼の霧》


 身につけた服ごと、僕の胸が、腹が、頭が、脚が、最後に手が、掌で作った円に吸い込まれます。

 円を潜り抜け霧状になった僕の体が付近一帯に広がり、右往左往するマエン達を全て搦めとります。


 うぅぅぅ、嘘みたいに魔力が削られます。


 全て一頭残らず搦め捕ったマエンども、キィキィとそこら中で鳴き声が上がりますが無視です。

 無慈悲に一斉にくびり殺しました。

 地に突き立てた大剣の元へと霧の体を戻し、中空に出現する僕の掌。


 掌で作った円を通り、元の体へと順に戻しました。大剣のすぐ側で膝をついて息を整えます。

 ロップス殿は森の中まで逃げられた様ですね。


 辺りには首をねじ切られた大量のマエンたち。


 一気に魔力を消費したせいか、鼻血がちょっと出ました。やばいですね。


 マエンは残らず仕留めましたが、霧になった時に確認できた、大量のマエンの後方に有翼人が一人。


 まだ少年と呼べるくらいの有翼人ですが、アギーさん達、子供の有翼人ではありません。


「面白い術を使うんだな」


 鼻血を拭って立ち上がり、ニコリと微笑んでみせます。

 大丈夫。

 僕はまだ大丈夫です。


「こんにちは。すみませんが急いでいまして、また今度という訳にはいきませんか?」


 マエンの死体の向こうに佇む有翼人に語りかけます。「そうか、またな」とか言ってくれませんかね。


「今度がいつになるか分からんし、せっかく二人っきりだしなぁ」


 そうですか。ダメですか。残念。


 不意に襲い来る魔術の矢。

 角度をつけた大剣で弾きます。魔力を纏わせていないので衝撃が凄い。角度が甘いと折られそうです。


「まぁ、楽しもうよ。せっかくだからさぁ」


 この距離はまずいです。魔力の少ない僕の距離ではないです。

 大剣を手に走ります。

 残り魔力は、風の刃換算で、使えても数回。

 接近戦で決めます。


 ニヤリと笑う有翼人の少年。


「我の名はナギー。行くぞ、ブラムの子、ヴァン」


 集中しろ、僕。

 足りない魔力は集中力でカバーです。


 ナギーさんが指先から立て続けに撃ち込む矢を躱し、躱しきれない矢を大剣で反らし突き進みます。近付かなければどうしようもありません。


「ぐぅっ!」


 左腕と右腿に一発ずつ被弾、躱せませんでした。

 吸血鬼の能力で、煙を出しながらゆっくりと回復しますが、魔力が少ないせいで僅かずつです。

 しかし近付きました。僕の距離です。


 痛みは一旦忘れます。

 大剣をナギーさんの首筋目掛け振り下ろします。


 ギィンという音を響かせ首筋の手前で止まる僕の大剣。


 猿のように化した腕、その指先から伸びた四本の爪で受け止められました。


「思ってたよりも強いなぁ。楽しいよなぁ」


 全然楽しくないです。


 痛む右脚で蹴りを放ちますが、後ろに跳ばれてあっさりと躱されました。

 距離を取られる訳にはいきません。痛みは無視、吹き出す血も無視、脚に力を入れて間合いを詰めます。


 何度となく大剣を繰り出しますが、ギィンギィンと爪で弾かれてしまいます。


「ほら、お仲間が心配して戻って来たぞ」


 ナギーさんから目を離さない様に、森へと視線を向けます。


「私も参戦する! 見ておれん!」


 ロップス殿が駆け戻ってきました。魔術の矢で迎え撃とうするナギーさんを阻止します。


「喰らえぃ! 烈火十山斬れっかじゅうざんざん!」


 跳んで剣を振るうロップス殿、やはり技の名前はアレです。それに合わせて胴を薙ぎますが、両手から伸ばした爪でそれぞれ受け止められます。


「なんなんだ此奴は! 当たらんぞ!」


 ロップス殿の洗練された剣でも当たりません。

 ナギーさんは防戦一方。しかし遊んでいるようです。向こうから積極的に攻め込む素振りがありません。


「ぐふぁぁ!」


 蹴り飛ばされたロップス殿を捨て置いて攻め込みます。しかし当たらない。参りましたね。


「距離を取られるのは不味い、そう考えているよなぁ」


 その通りですけど、それが何か?


「こんな手もあるんだなぁ」


 ナギーさんの右手に黒い玉。魔力の塊のようですね。


「これを、こうだ!」


 ナギーさんが黒い玉を足元に叩きつけると同時に大地が抉れ、ナギーさんを中心に土塊と魔力が吹き荒れました。


 咄嗟に魔力で障壁を張りましたが、いけません、近すぎました。


「ぐぅぁぁぁ!」


 蹴られたロップス殿と同様に吹き飛ばされ、地に叩きつけられました。


「そろそろ終わりかなぁ」


 そう言って僕とロップス殿に指先を向けるナギーさん。


 動けません。

 これはもう防ぎようがないです。

ロップスが割りと好きっす。

頑張って欲しいっす。


もし全然お気に召さなくても、ブックマーク、評価ポイント、感想など、どしどし受け付けております!

よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ