第四話;ジカク
「そ…そんなことないよ!」
綾菜は先ほどの明菜の言葉を全力で否定した。
「そそそそれは、一回も男の子に名前で呼ばれたこと無いからだよッ!」
「勇気には呼ばれてたじゃない。」
綾菜の言葉に呆れる明菜。
勇気―――― 山月勇気
綾菜の幼なじみであり、お隣さん。
勇気は違う学校に通っている。
勇気は綾菜のことが好きなのだが、綾菜はそれを知らない。
「そりゃ、勇気は幼なじみだからッ…」
「じゃあ 欄君は?」
ニヤリと聞く由愛。
欄―――――――――佐藤欄
綾菜とピアノ教室に通っていた男の子。
すっごくモテていて、冷静な男の子。
綾菜のことだけ呼び捨てにする。
綾菜に対して敬語はなく、素直に話す。
「欄くんもだよッ! 欄君は、あ…」
綾菜は言葉を詰まらせる。
「私のデータによると 佐藤 欄は初めて会ったときから綾菜のコトを呼び捨て、敬語無しで素直だったと書いてあるわ。」
由愛はパソコンをカタカタとならしながら言う。
「ででででででででででででででででで…でも!」
「はっきりと認めなさい! 初恋を。」
明菜はビシッと言った。
「あ…ごごごごご…ゴメン!」
綾菜は飛び出す。
真っ赤になって階段を駆け下りる。
明菜と由愛の言葉を振り切るように、全力で。
「きゃああああああああああああ―――――――――!」
綾菜は叫ぶ。
階段を踏み外したのだ。
「ちょ…えええええ!?」
男の子は叫んでいる。
ボスッ…
男の子は綾菜を抱えた。
「大丈夫か!? 綾菜!?」
それは、水嶋悠太だった。
ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ…悠太くん!?
「大丈夫か!? おい?綾菜??」
「だだだ…だいじぃょうぶ…」
「大丈夫じゃなさそうな声してるぞ!?あ、ひざすりむいてる。保健室に行こうか?」
〜〜〜〜〜!
オヒメサマ抱っこだよ!
うぅぅうぅぅ…
心臓破裂しそう!
綾菜の顔は先ほどよりも赤く火照っていた。
* *
「これでよし! 綾菜、本当に大丈夫か?」
「うん…悠太くんありがと。」
「お大事にな!」
* *
教室に入ると、明菜と由愛が駆けてきた。
「大丈夫?綾菜??」
明菜と由愛が一斉に言う。
「大丈夫だよ…明菜ちゃん、由愛ちゃん…」
「何?綾菜?」
二人ハモって言う。
「私…………悠太くんのコト好きみたい。」
そこからメロディーが奏でる。
初恋の……………甘いうた。
実は…微妙に脇役っぽくなってる佐藤欄なんですが…
結構本編に関わってくるんです^^
欄は書きやすくてお気に入りなんです♪
よかったら欄にも注目してみてくださいね*
11.23
作者*成宮春季