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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第二章 魂の旅路
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第47話『王都騒乱 後編』

冒険者ギルド本部周辺を捜索していたカレンの元にジルニトラから連絡が入った。


「お嬢様。下層区画倉庫街にて、若い女を連れ込む不審な集団の目撃報告を受け対象の集団を発見致しました。ですが、やや奇妙な点がございまして…」


「場所は?奇妙とは、どういう意味?」


「それが、発見致しました不審な集団は四名『ザバラ商会』という組織に所属する冒険者なのですが、全員重症で発見されました。リーダーと思われる男は、特に酷く全身を骨折、内臓の一部は破裂しており現在、治癒魔法にて回復させております。残りの三名は全身に打撲及び複数箇所の擦過傷を与えられた末に路上に土魔法で身体を埋められ頭のみ露出し相当な恐怖の為か錯乱している状態の所を発見致しました。」


「なんてこと…連れていた女の子は?どうなったの?!」


「それが、居ないのです。周辺も隈無く捜索しておりますが、現在は話せる状態の者に聴取を行っている所でございます。」


「倉庫街ね。わかったわ、ありがとうジル。引き続き報告をお願い!」


「畏まりました。」


「アルメラ、クロエ、どこなの…『空間転移(テレポート)』!」


カレンは倉庫街へ向かった。


……


現場に着いたカレンの目の前には辛うじて話せる状態になった男が座らされていた。


「あなた達が連れていた女の子はどうしたの?!教えなさい!!」


「あ、悪魔だ…あれは悪魔だ……あいつ…笑ってた…長耳のやつ……リーダーを…うっうぅ……」


「長耳…(耳が特徴的な亜人と言えば、森妖精(エルフ)……クロエの事かしら…。)もう一人の赤い髪の子はどうしたの!」


「知らない!知らないぃぃぃ!」


「さっきからこの調子なんですよ。周辺に目撃者は居らず、こいつらが連れていたのは亜人の女の子だったそうですが、下層区画手前で目撃されたご友人と同一人物かの確認はとれてません。」


捜索隊の指揮官は丁寧に対応する。


「そう。冒険者ギルド本部周辺の聴き取りでは、同じタイミングで下層区画に向かったようだけど、別の子の可能性もありそうね。」


「ここは任せます。何か進展あれば教えてください。」


「了解しました。」


……


一方その頃、上層区画のレストラン街にシドたちの姿があった。


「この辺はレストラン街か。色んな店があるんだな。女の子はケーキとかがいいかな?」


「え、ええ。」


クラウスがオススメだというパティスリーカフェに入ったシドたちの前には、テーブルを埋め尽くすほどのケーキや焼き菓子が並んでいた。


「ははっ!遠慮してるのか?どんどん食べてくれ!気にしなくていいぞ?そうだ!ちゃんとした自己紹介しないとな。俺はシド。シド・グラディウスだ。冒険者をしている。」


変に警戒されても面倒だ、と努めて明るく振る舞う。


「私は、ラビです。お二人には先程お見苦しいところを見られてしまいましたね。冒険者としてシド様のパーティ『グラディウス』で後衛職を務めさせていただいてます。」


「次は私かな?私は、クラウス・ヴェール。冒険者パーティ『翡翠旅団(ジェイド・ブリゲード)』に所属する冒険者だよ。それと、そこにいるクロエの兄だ。」


翡翠旅団(ジェイド・ブリゲード)のクラウスか…。なんか勢いで一緒になったが、かなり腕がたつ冒険者なのは、間違いない…。


「私は、アルメラ・カーラベイン。帝国領出身、神聖国『エクレシア学園』の学生よ。」


「…ん。私はクロエ・ヴェール。共和国、森妖精(エルフ)領出身。アルメラとは同じ学園。」


「ん?エクレシア学園…?どっかで聞いたような…。あ!!君たちの学園に王国キトルス家の令嬢が居ないか?名前は、えーと…キャサリンって言うんだが。」


「キャサリン?…彼女の知り合い?でも、あなたのような冒険者の知り合いがいるなんて聞いた事ないわね。なぜ彼女を知っているの?」


「ああ。俺は彼女の父キトルス侯や執事のジルニトラさんと友人でね。今もキトルス家に世話になってるんだよ。なんならキトルス家に確認してもらって構わないぞ?」


「なるほど、ベタな回答だけど嘘ではなさそうね。キトルス家のご令嬢キャサリンなら、知ってるどころか、今回は彼女と一緒に王都に来たのよ私たち。」


「…うん。待ち合わせしてる相手は彼女。」


「それは、本当か!?カレンが王都に?」


「ええ、本当よ。その呼び名を知ってるなら、そちらも本当に知ってるようね。」


「そうか…。カレンが王都に。(キトルス侯め、今朝は何も言ってなかったぞ…)」


しかし、思いもよらない朗報だ。まさかカレンが王都に来ているとは思わなかったな…。


「君たちの事も教えてくれないか?もちろん君たちの質問にも答えるよ。クロエは、クラウスと積もる話もあるだろうしな。」


そうしてシドたちはケーキや焼き菓子を食べつつ様々な話をした。どうやら長期休暇中の彼女たちは、急遽決まったカレンの帰省にくっついて王都に来たようだ。


カレンは神聖国で学園に通いながらCランクの冒険者として活動しており、三人は学園の首席をとるほどの秀才らしく、最後の一年は一緒にパーティを組んで思い出を作ろうと登録の為に立ち寄った冒険者ギルド本部で、絡まれていた俺たちを見かけ連れていかれたラビを助けようと後をつけて路地裏に辿り着き、現在に至るという事だった。


「なるほどな。まあ、ラビも俺のために怒ってくれたんだよ。許してやってくれ。」


「べ、別に責めてないわよ!ただ、まだ学生だけど、それなりには自信があったのよ。その自信は打ち砕かれたけど、同世代に上がいるって知れたのは良かったと思うわ。」


「いい向上心だ。君たちはまだまだ強くなるな。俺が保証するよ。ただ、ラビは特別だからな。あまり無理はしないでいいぞ?」


「特別?」


「私は、メルカトスのティエナ・エリ様が生み出した『自律型魔法人形(オートマタ)』ですからね。基本的な性能(スペック)は人族や亜人族より高いんですよ。」


「私の知ってる自律型魔法人形(オートマタ)ってもっと命令を実行するだけの単調な動きと話し方なイメージだけど彼女のように激しく感情を表すタイプのは初めて見たわね。まるで心があるような……」


「…なるほど。自我が覚醒した個体、それは確かに規格外。私も実物は初めて見る。」


「クロエ、どういう事?」


「…エリ様から聞いた事がある。初期に製造された『自律型魔法人形(オートマタ)』は、その膨大な魔力性能を制御しやすくする為に自我に(リミッター)をかけているって。その(リミッター)を外した個体は未だ居ないと思っていたけど…」


「さすがクロエさんはベスティア出身、ティエナ様をご存知なら、自律型魔法人形(わたしたち)にもお詳しい訳ですね。仰った通り、私はシド様のお力で眠っていた自我が覚醒した初の個体なんですよ。」


「聞けば聞くほど謎が増すわね…。シド…さんは、何者なの?」


「俺?どこにでも居る普通の冒険者だよ。期間で言うなら、まだ新人の部類じゃないか?」


「シド。さすがに、それは無理があるよ…」


「そうですよ?シド様…」


クラウスとラビが苦笑いでツッコミを入れてきた。俺自身が自分の力を理解してないせいか、どうも周りの評価と差があるようだな。


「君たち『グラディウス』の事は王都でも噂になっていたからね。突如王国辺境に現れ、Aランクの魔獣を単騎で倒して、冒険者ギルド史上最速でAランクに昇格し、非公式ながら王国最強の一角『聖剣の誓い』のアルディンを下した正体不明の凄腕の剣士が率いる少数精鋭パーティだとね。まさか二人組だとは思わなかったけど、動向も含めて注目度はかなり高いと思うよ?」


今日会ったばかりのクラウスに知られていた事より、王都まで俺たちの話が伝わっている事に驚きだった。俺が不死なことや転移者というのはバレてないが、それ以外の内容は多少前後しててもほぼ間違いない事実だ。


「ちょっ!?Aランクって!!?そんなに強いのに、なんで絡まれてたのよ?!」


クラウスの話を聞いていたアルメラが当然の疑問をぶつけてくる。彼女からすれば絡まれた不幸な新人のはずの二人が、まさかAランク冒険者だとは思いもしなかったからだ。


「んー。俺たちは王都に来て間もないしな。知らない奴がいても当然だろ。まあ、テンプレイベントみたいなものだし…」


「あなたねぇ……」


「…アルメラ。そろそろ時間。」


「あ、もうそんな時間?」


「ん?どこかいくのか?」


「…カレンと待ち合わせの時間。上層区画の噴水広場。」


「なら、送っていくよ。俺も彼女に会わなきゃならないからな。大丈夫、もう絡まれたりしないよ。」


「まあ、いいわ。悪い人には見えないし、あなた達が強いのもわかったから。」


「じゃあ、私はそろそろ戻るよ。」


「…クラウス兄様。…ま、また会えますか?」


「もちろんだよ。クロエ。私は王都を拠点にしてるから、いつでも会えるさ。そうだ、これを渡しておこう。」


「…これは。」


「…電信魔法を込めた通信魔道具だよ。これで寂しくないだろう?」


「…嬉しい。ありがとう兄様…」


「じゃあ、シド。またね。妹たちを頼むよ。」


「ああ。色々ありがとな。」


手だけ振り応えたクラウスを見送り俺たちは店を出た。


「ハイハイ。行くわよ?クロエ。」


「…うん。」


「じゃあ、行こうか。噴水広場なら、そんなに遠くないはずだ。」


シドたちはカレンの待つという噴水広場に向かった。


……


その頃、カレンはまだアルメラとクロエの行方を捜して中層にいた…。


「集まった情報と状況を整理すると…」


ギルド本部から下層までの二人の無事は警護から確認がとれてる。消えたのは区画を繋ぐ通りの付近、恐らく原因は追跡していた敵に気付かれる可能性を考えてクロエが、隠蔽魔法で姿を消したから。そして、直後に進んだ先にある路地裏で起きたあの事件…。そして、その後の足どりは完全に消えてる……。


その時、ふと周囲の通行人の会話が耳に届く。


「ケーキ美味しかったねー♪」

「うんうん!雰囲気もよかったよね。でも、隣の席凄い組み合わせだったよね。」

「ああ、あの怪しい冒険者っぽい人達ね。珍しい制服着た女の子たちを連れてたよねー。どこかの学生かしら…」


怪しい冒険者らしき集団と珍しい制服を着た女の子たち……


「…!?」

「あの!話を聞かせてくれませんか?」


「え?!あ、はい……」


カレンは通行人から聞いた話を元に上層区画に向かった。特徴的に間違えなくアルメラとクロエだ。しかも、一緒にいた見知らぬ冒険者らしき男たちの中に兎人族の女の子もいたそうだ。恐らく、下層区画の路地裏から消えた亜人の女の子だろう。


聞く限り、アルメラたちが向かった方角は、私たちが待ち合わせしている噴水広場の辺りね。もしかして…私に見つけさせようと誘導してるんじゃ…


そして、カレンは上層区画のレストラン街を抜け、噴水広場へ急いだ。


「相手の目的は、わからないけど路地裏の犯行から見て只者じゃないのは確実。そして恐らくアルメラたちは、その目撃者として捕まったと見て間違いない…」


……


「噴水広場は、この先だな。」


シドたちは、噴水広場に続く通りを歩いていた。アルメラとクロエも少しは警戒が解けたのか、ラビとも普通に会話するようになっている。


「ねぇラビさん。二人はその…恋人か何かなの?」


「え?!な、な、な、何を急に!!」


「さっきから見てると、特別な関係なのかな?って思っただけよ。」


「…アルメラ。不躾過ぎ。そんなの一目瞭然。」


「わ、わ、私はシド様の所有物ですから!こ、恋人だなんて!シド様は、私なんて……」


「ん?ラビ、俺がどうかしたか?」


「?!い、いえ。何でもないです…」


耳の先まで赤く染まったラビは、どう答えていいのか分からず、しどろもどろになっている。


「わかりやすいわね…。」


「…ラビさん。かわいい。反応がリアル。自律型魔法人形(オートマタ)とは、思えない。」


「もう!二人ともからかわないでください!あと、私の事はラビでいいですよ。」


「じゃあ、私もアルメラでいいわよ。」


「…私も。クロエでいい。」


「よくわからんが、仲良くなれたみたいだな。お!『噴水広場 西門入口』て書いてあるぞ。着いたみたいだな。」


王都上層区画の中央に位置する噴水広場は、円形の広場に外周を取り囲むように店が並んでおり、広場全体に大小様々な彫刻作品と立派な噴水がある。観光客や住人たちが思い思いに午後を過ごす広場だった。


「わぁー!キレイですね!シド様!」


「都市内の広場とは、思えないくらい広いわね。」


「…うん。まだカレンは、来てないみたい。」


「結構、人が多いな…。まあとりあえず、その辺に座って待ってようか。俺なんか飲み物買ってくるよ。」


「シド様、私が行きます。」


「いやいや、気にするな。適当に座っててくれ。」


三人をベンチに向かわせ、俺は併設されたカフェに向かった。喉は乾いてないが探していたカレンと遂に会えるという事実に、緊張していたからだ。正直、何から話せばいいのかわからない。ここまで来るのに一年近くかかった…。色々な人達に出会い助けられた事が思い出される。


世界樹の森でファムに拾われ、ミアとテトと知り合い、ガランさんやオルカさん達ポロコのみんなに出会い冒険者として旅を始めて、クライフさん達とメルカトスに向かって、ラビに出会いティエナやディエゴさんに助けられて力を付け、キトルス侯やジルさんの協力でここまで来れた。


「みんな元気にしてるかな…」


まだまだわからない事だらけだけど、カレンに会い話す事で何かが変わる気がする。そして元の世界に戻る方法を探す為の俺の旅は今日新たな転機を迎える。そんな漠然とした予感があった。


……


一方、カレンも彫刻広場の東門にたどり着く。


「なかなか、人が多いわね…。」


シドたちは広場の西側にいるため、東側にいるカレンとは真逆にいた。


「ここにいてくれるといいんだけど…」


歩みを進めるカレンにジルニトラから電信魔法が届いた。


「ジル?何かわかった?」


「お嬢様、ザバラ商会に動きがありました。先の路地裏での一件。ザバラ商会の仕事が絡んでいるようです。襲撃された彼らはザバラ商会で奴隷集めを担当するグループでしたが、今回は商会を抜きにどうやら獲物を連れ出した後、別の買い手に引き渡す予定だったそうです。ザバラ商会は、その裏切りに気づき彼らに対し、刺客を放っていたようです。刺客の特徴は黒髪の剣士風との事。ただいま足どりを追っています。そして恐らくご友人は、目撃者として巻き込まれたのでないかと。」


「そうね。私もその答えに行き着いたわ。それにしても制裁って訳ね。まったく、なんて勝手なの。私は今、アルメラたちを追って噴水広場に来た所よ。」


「では、近衛を向かわせましょう。」


「ええ。私は広場の中を探すわ。アルメラたちと思われる。二人組が冒険者風の男たちと、ここに向かったと証言が通行人から取れたわ。もし二人を攫ったなら、その刺客もいるでしょうからね。」


「お嬢様、決して無理はしないように。私もすぐ向かいます。」


「わかったわ。」


カレンは電信魔法を切り、探索魔法を使った。


「とにかくまずは見つけなきゃ。『探索(サーチ)』、『空間感知(ソナー)』……いた!でも、何この反応…」


反応はすぐにあった。反応は四つ、その内の一つは、一般人の中にあって明らかに異質で強力な魔力だ。少し離れた位置に強い魔力が一つ、その反応の近くに感じ慣れたやや強い反応が二つ。これがアルメラたちだろう。


「アルメラたちといる反応も、かなり強い…離れた位置にいるもう一人はそれ以上ね。でも、アルメラたちと目撃されたのは三人、男二人に亜人の女の子。そうなるとあと一人はどこに…」


探索魔法で位置を把握するのは、冒険者の基本だ。人であれ物であれ、魔力を放出して跳ね返る反応から位置を特定する。しかし、上位の魔法使いなどはこれを感知する事で危険を察知する為、対人には向いていない事をカレンは焦りから失念していた。


……


「おまたせ。何がいいかわからないから適当に選んでくれ。ん?この気配は…?ラビ。」


「はい。感知しました。どうやら探索魔法をで私たちを捕捉したようです。位置はここから東側、まだ逆感知には気付いて居ないようです。さっきの男たちの仲間でしょうか?」


「わからないな。とりあえず二人を頼む。」


「はい。おまかせください。さあ、二人ともこちらへ。」


「何?!どうしたの?」


「…警戒?何かあったみたい。」


ラビに二人の背後を守らせ、俺は警戒しつつ指示を出す。


「敵かわからないが、わざわざ探索魔法を使うくらいだ知り合いじゃあなさそうだな。ラビ、『白化(アルベド)』で不可視結界を張れ。」


「了解しました。」


ラビの結界は不可視化する防御結界。所謂、光学迷彩だ。魔力、音、気配を遮断して防御障壁で守る。しかし、この行動が思わぬ波乱を呼ぶきっかけとなる。


……


「いた!アルメラもクロエも無事なようね。そばに立っている男、後ろ姿で顔が見えないけど黒髪に黒いコートは刺客の特徴にほぼ合致する…アルメラたちの後ろにいる女の子は例の亜人ね。何か話してる……えっ!?消えた?」


男が亜人の女の子に何か言った瞬間、目視できる距離にいたカレンの前からアルメラたちが文字通り消えたのだ。


「何が起きたの?!今、あいつはアルメラたちに何をしたの?!!」


いきなりの衝撃に冷静さを失ったカレンは臨戦態勢入る。『特異点(シンギュラリティ)』とはいえ、全ての魔法や魔道具を知っている訳ではない。そして時空間魔法と魔力に優れ、如何に世界の調整者たる存在と言えど覚醒して二年しか経たず、経験も少ないカレンには十分に動揺する状況だった。その動揺は暴走に変わる…


「一体何をした!」


殺気を漲らせ、即座に抜刀し敵を無力化しようと一気に距離を詰めるカレンだったが……


「…女?お前は何者だ?こんな所で抜刀とは穏やかじゃないな。狙いは何だ?」


シドは超反応で背後から接近する敵意の主に対し逆に背後をとり、斬魔刀を首に当て静かに尋ねる。


「くっ…!あなたこそ何者なの?!彼女たちに何をしたのよ?」


カレンは一瞬で背後を取られた事に驚きつつも、未だ顔の見えない男に問う。


「質問してるのは、俺なんだがな……ん?彼女たち?」


「『空間転移(テレポート)』!」


「なっ!?」


思案から一瞬、シドが力を抜いた隙を突き『空間転移(テレポート)』で拘束から抜け出したカレンは、反撃にでる。


「あなたの目的は何?彼女たちに何をしたの?!答えなさい!」


愛用の細剣を男に向け、再び詰問するカレン。だが、男の反応は予想外のものだった。


「まさか……カレンか?」


「なぜ私の名を…!」


その瞬間、背後から聞きなれた声が届く。


「ちょっとカレン!待って!彼は敵じゃないわ!」


「アルメラ?!」


「…カレン。大丈夫。アルメラの言う通り。」


「クロエ!無事なの?!」


「あなたが発した魔力が敵意を帯びていたので、私が不可視結界を張りました。あなたは、カレンさんですね?」


「二人とも攫われたんじゃ……」


「私たちが?何言ってるのよ、カレン。なんで攫われなきゃならないのよ。」


「…私たち。シドさんとラビとカレンを待ってただけ。」


「まあ、色々行き違いがあったけど、あんたの事知ってるし、お父様の友人て言ってたしね。」


「え?!シドさんって……じゃあ、あなたは…」


「まあ、なんだ。とりあえず久しぶりだな。カレン。」


「士道さん?!うそ…いや、確かに…でも、何で…」


「はははっ!シドでいいよ。色々あってな。ようやく会いに来れたよ…って!なんで泣いてるんだよ?!」


「…え?泣いてなんて……あれ?なんでだろ?…あれ?おかしいな…止まらな…?!」


シドは優しくカレンを抱きしめ頭を撫でる。


「……待たせたな。」


カレンはシドの胸の中で小さく嗚咽を漏らした……

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