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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第二章 魂の旅路
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第40話『いざ、王都へ』

「これは私の娘だよ……」


唐突に訪れたカレンの手掛かりに、俺は混乱した。まさか、こんなそばに手掛かりがあるなんて思いもしなかった。しかし、目の前には俺以上に狼狽える王国の大貴族の姿があった。


「これが運命の悪戯というやつなのか?シド殿…一体どういう事なのだ?なぜ娘を…カレンを探している?教えてくれないか…?」


父親として当然の疑問であり、聞く権利があるだろう質問だった。


「キトルス候。厳密には俺が探してるカレンと娘さんは違う人物です。うまく説明できないんですけど、最初は元々同じ魂をもつ別のカレンが俺の世界にいました。去年の夏に偶然知り合ったんです。…ある時、そのカレンを狙う存在が俺の世界に現れて、運悪くそこにたまたま俺が鉢合わせた時に殺されかけたんです。信じられないでしょうけど、そこで彼女が…カレンが俺を…俺の命を救い、この世界に転移させたんですよ。そして、転移した俺の意識に語りかけて起きた事を教えてくれたのが、この世界のカレン。つまりこの子でした。彼女は世界において特別な力をもつ存在です。正直、俺も未だに驚いてるし、半信半疑ですけど、彼女に会えばすべて繋がる気がするんです。」


「な、なに?あの子が?!どういう事なのか理解が追いつかんな。しかし、(にわか)には信じられない話だが、シド殿が嘘をつくとも思えん。だが、本当にあの子がシド殿の命を救い、転移させたというのか……。」


「確かにあの子は優秀だ。魔法や剣の才能は人並み以上にあると思う…だが、転移のような高度な魔法は使えなかったはずだ。」


キトルス候の思考は未だ混乱状態だ。無理もないが、それでも精一杯冷静に考えているのだろう。


「具体的にあの子の力とは、どういう力なのだ?危険なのか?何故あの子を探す必要があったのだね?そもそも、シド殿の世界に何故カレンが……?」


いくら親とは言え喋り過ぎたな…カレンが秘密にしてるなら、これ以上俺がペラペラ話すような事ではない。話す話さないはカレン自身が決める事だろう。


「確証はないし、俺も正確には彼女の力は理解出来てません。転移してから俺が彼女から聞いたのは、この世界に彼女の力を狙う存在が居て、たまたま俺がそいつの仲間と鉢合わた際、襲撃を受けた事くらいです。しかし、確かに彼女の力で俺は救われ、ここにいる。それは紛れもない事実です。前にも言いましたけど、俺の最終目標は自分の世界に帰る事です。その為には転移させた彼女に会い帰還の方法を見つけなくちゃならない。それが彼女…カレンを探す理由です。」


「あの子を…シド殿の世界のカレンを狙う存在とは一体誰なんだね?」


「相手はローブを着た男でしたが、正体や名前は俺にもわかりません。」

「キトルス候、それで彼女は今こちらに?」


「いや、ここには居ない。あ、いや、隠すとかではないのだ。カレンは本当に王国には居ないのだよ。今、あの子は神聖国の学園に居る。」


「大丈夫ですよ。信じます。神聖国か…確か、宗教国家でしたね。学校に行くなら王国にもあるでしょう?なんでわざわざそこへ?」


「あの子の希望だったのだ。さきほども言ったように、二年前に帝国と決裂したのを機に王国内も安全とは言えぬ風潮があったこともあり、娘の安全も考え神聖国に行く事を許したのだよ。カレンの入った神聖国のエクレシア学園は帝国の権力者たちの子息子女からも生徒を受け入れてる以上帝国も簡単には手を出せないであろうと思ってな。」


なるほどな。確かにキトルス候の領地は国境を有しているから、帝国の軍が展開したら最初に接触するだろうし、言わば最初の戦場になる。娘の安全を考えれば当然の選択だな。


「シド殿。探し人がカレンなのは分かったが、一つ答えて欲しい。あの子に会うのは、先ほどの理由で間違いないかね?私には理解の及ばない世界の話なのはわかる。だが、あの子に何かあったら私は冷静ではいられなくなるだろう。そこはわかってもらえるだろうか。」


「勿論です。俺は彼女に救われ助かった。言わば彼女は命の恩人です。決して危害を加えたりしない、むしろ彼女を守る為に探していると言ってもいい。」


「そうか。それを聞けて安心したよ。未だ混乱はしてるが、シド殿どうか…どうか娘を守ってくれ。私に出来る事なら何でもしよう。この通りだ。」


俺の手を取り力強く握って頭を下げる姿は王国の大貴族ではなく、父親のそれだ。本当に娘想いのいい父親なんだな。


「どうか頭を上げてください、キトルス候。偶然にもずっと探してた子の居場所がおかげで分かった。むしろ感謝するのは俺の方です。」


「シド殿は、やはり優しい男だ。感謝する。」


キトルス候はそう言ってから、ふと考え込んだ。


「しかし、困った問題があるな。」


「どういう事です?」


「このまま、シド殿たちが神聖国に行っても恐らくカレンには会えないだろう。あの学園には如何なる権力も通用しないばかりか父親の私ですら入れない厳重な警備体制が敷かれているのだ。」


「なるほど…それは確かに問題ですね…。学校なら当然の措置でしょうが…」


世界中から子息子女を集めてるだけはあるという事か。せっかく居場所が分かっても会えなければ意味が無い。父親ですらダメなら他人で部外者の俺は論外だろう。


「二年前に入学したという事は今は二年生の終わりくらいか。三年で卒業するとしても一年は長いですね…」


転移して来てから既に八ヶ月くらい経つ。賢者の石を探してた、あのローブの男が何者かは分からないが、奴もカレンを探してると考えると先に見つけられるのは避けたいからな。


「うむ。そこで提案なんだが、学園には長期休暇が年に二回ほどある。そして次にカレンが戻るのは三ヶ月後だ。その間に王城にて叙任式を終わらせ、動きやすい体制をとっておいて損はあるまい。それにシド殿なりの計画もあるだろう。どうだろう、カレンが戻るまでの間に王国領を見て回ってみては。」


「シド様、キトルス候の提案は妥当なものだと思います。伺う限り敵の戦力や正体が不明な以上、こちら側も出来うる最善の準備をするべきかと。そのためにも、今は少しでも多くの力と協力者は必要ではないでしょうか。」


「確かに、そうだな。見つける事が最優先だったけど、ラビが言うように居場所が分かった以上、次に考えるのは無事にカレンに会う事だ。」


様々な偶然が重なり合って、ついにカレンを見つけた。俺は胸辺りに感じるカレンに届くよう決意した。


「キトルス候。わかりました。準備をお願いしてもいいですか?」


「分かった。ジルが戻り次第準備に取り掛かろう。」


「よろしくお願いします。」


「まずは王都へ行かなくてはな。恐らく手配に二、三日かかる。準備が整い次第ジルを迎えに行かせよう。」


「ありがとうございます。」


そうして、俺たちは執務室をあとにした。


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