第32話『新たな友』
俺の話した内容は…
・この世界とは違う世界の住人で死にかけた自分の命を救った賢者の石と言われる存在の力によりこの世界に転移させられ倒れていた所をファムに助けられたこと。
・その賢者の石と言われる存在に命を救われた際に賢者の石と言われる存在の半身が自分の魂と融合した結果、強力な力を与えられたこと。
・自分の最終目的は賢者の石と言われる存在を見つけ、自分の世界に帰る事だということ。
この三点だ。俺自身の記憶とティエナの推察が混ざっているが、嘘はない。
賢者の石たるカレンの名前以外はだいたい話した。カレンの名前を伏せたのはこの世界での名前が分からない事と二つの世界を繋ぐ今のところ唯一の手がかりであり、俺の最大の弱みにもなり得るからだ。
「なるほど。異なる世界からの転移か、それならあの森に貴殿が突如現れたのも理解できるな。それにしても異世界間すら転移させる賢者の石と呼ばれる超常の存在か……」
「俄には信じ難いが、貴殿が嘘を言うとも思えん。まさに神の御業だな。貴殿の種を超えた力にも納得する。おかしな事を聞くが何故それほどの力がありながら、支配を選ばないのだろうか?恐らく、竜種やそれに匹敵するような存在以外は貴殿に触れる事も出来まい?」
「キトルス侯、先程も言いましたけど、俺には支配する意思は無いですよ。俺はこの世界に飛ばされて来たのには何か理由があって、この力は何か役割を持つんじゃないか。と思うんです。」
「正直な事言うと、装備はディエゴさんやティエナのお陰で、能力で言えば確かに余程の事以外には死にはしないだろうけど、ジルさんクラスや竜種なんてのが相手となると技術や技量はまだまだ経験不足だから総合的な強さについては何とも…」
素直な感想だった。少なくとも俺は貰い物の力で過信するほど愚かではないし、使える力の解析もまだ不十分だ。
「シド様。私は信じます。シド様をこの世界に導いた方を見つける旅。私にもお手伝いさせてください!どんなに険しい道でも私はシド様について行きます。置いてっちゃ嫌です!」
「ラビ…」
そして、ずっと静かに聞いていたジルニトラが口を開いた。
「シド殿、何故『王都に情報がある』と考えたのですか?世界にはたくさんの国がありますし、転移先の世界樹の森も王国以外にベスティアと東の砂漠地域にも隣接してます。しかしシド殿は『何かに導かれるよう』に王国に進み、王都に情報があると考えた。その理由をお聞きしたい。」
確かに、カレンは『こちらに転移させた』という事以外には場所などは覚えてる限り言ってなかった…。
そう言えば何故王都に行こうと考えたんだった?あれは…メルカトスの冒険者ギルドで手続きを頼んだ時に……そうだ。カレンを探しに行こう、そう決めた時に頭に浮かんだのが王都だった…
「確かに手がかりを求めた時に頭に浮かんだのが王都。この世界の地理や歴史の知識がないのに浮かんだのがレムリアの王都だった…根拠は無いし、見つかるか分からないけど、行けば何か分かるような確信があります。」
「なるほど。直感…いや、天啓というべきか。恐らく、シド殿の中にいる魂の導きなのでしょうな。」
魂の導きか……
……
「うむ、話はわかった。隠しておきたい事も内容を考えれば理解できる。我々が間違っていたようだ。我々は最初メルカトスの重鎮たちが貴殿に協力したのは背景にある貴殿の力を恐れたからだと考えていた。」
「しかし、今はその理由がわかる。貴殿には強者の傲りがなく聡明だ。力ではなく対話する事のできる人格者なんだな。そして熱意と強い意思を持っている。我々は大きな勘違いをしていたようだ。貴殿が英雄と呼ばれるようになるのも納得だ。愚かな我々を赦して欲しい。この通りだ。」
「い、いえ。赦すも何も別に俺たちに何かされた訳でも無いですし、頭を上げてください。誰かに見られたらどうするんですか…」
「気遣い感謝する。貴殿は優しい男だな。」
「シド殿。改めてお願いしたい。私の友人になってくれないだろうか。貴殿の意思や目的は理解した。他意はない、本当だ。」
「…キトルス侯、俺は国とか政治はよく分かりません。ただ、友人になった方がたまたま大貴族だった。ってことじゃないかなと。」
「ふふ…シド様らしいですね。」
「シド殿…感謝する。」
こうして、中庭の会談は無事終了した。
……
その後、城内を色々見せてもらい俺たちは城内の迎賓館に来ていた。
「滞在中はここを好きに使ってくれ。侍女も居るし、何かあればジルに任せるといい。」
「キトルス侯…いいんですか?冒険者の俺たちにこんな立派な所を貸し切りとか…」
宿に与えられた迎賓館は歴史ある高級ホテルのような建物だ。広さは言うまでもなくロの字形の二階建てで真ん中に中庭があり、地下には巨大な浴場もある。寝室にと勧められて入った部屋は三部屋で構成され三十畳くらいあるリビングと同じくらい広い寝室、書斎に十分広い風呂と使うのを躊躇うほど立派なトイレ。置いてある調度品や家具もとてつもなく高そうだ。
「構わないとも。君たちは私の友人であり我が家の大切な客だ。立場なんて気にしなくていい。」
「夜には晩餐会を用意してある。楽しみにしててくれ。夜まで時間がある、ジルに街を案内させよう。ジル、頼んだぞ。」
「畏まりました。旦那様。」
手を振り執務に戻る大貴族を見送り俺は小さく呟いた。
「なんか凄い人と友人になったんだな…」
「シド様…今頃気づいたんですか?」
あ、はい。
「ハッハッハ!シド殿らしいですな!」
「では、参りましょうか。」
俺たちは、ジルさんに伴われ城下町へ向かった……




