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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第二章 魂の旅路
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第31話『中庭の会談』

辺境伯の居城に招かれた俺たちの前に広がる光景は外観以上に圧倒されるものだった。


よく手入れされた広大な庭園に芸術的な噴水、外壁に寄り添うように建てられた豪華な厩舎では美しい馬たちがブラッシングされている。

奥には大小様々な建物があり、最奥に城が聳え立つ。


「この国の大貴族というのはこれほどのものなのか…大丈夫かな?すごい場違いな気がしてきたよ。」


俺の呟きに案内役の近衛が答えてくれた。


「こちらの城は王都にある王城以外では王国内で最大の広さがあります。名は『カーテナ城』といいまして、王国の建国以前はこの辺りを治めていた君主の住まいだったと聞いております!」


「へぇ。カーテナ城か。元王城なら納得だ。」


「シド様!あれを見てください!」


ラビが指さす方を見ると、そこには鷲の頭と羽を持ち身体は獅子のような魔獣がいた。


「グリフォン?!なんで城の中に魔獣が居るんだ?」


またしても丁寧に答えてくれたのは近衛。


「あれは、辺境伯閣下直属の騎獣兵団『ナイトライダー』の騎乗魔獣です。王国でもトップクラスの戦力です。」


「魔獣に乗って戦うのか。確かに強そうだ…」


「魔獣を使役するのは、貴重な能力(スキル)ですので。それがあんなに揃うのは、王国でもここぐらいです。」


「はあ…そんな軍団のいる所に目を付けられたのか…」


「シド様、誰かこちらに向かってきます。」


「ん?あ、ジルさん…と誰かな?」


向かって来た人物に案内役の近衛がまだ遠いというのに最敬礼をした。どうやらかなりの上位者のようだ、ということは……


「やあやあ、遠い所までお越しいただき申し訳ない。本来なら城門までお迎えに行きたかったのですが、用意に時間を取られてしまいましてな。ハッハッハ!」


にこにこと歓迎する人物の横に控えたジルニトラから紹介される。


「お二人とも、ようこそお越しくださいました。こちらが我が主。辺境伯領の領主にして、このカーテナ城の城主マンダリオン・フォン・キトルス辺境伯閣下でございます。」


「さすが漆黒の剣聖と呼ばれるだけはある。ジルニトラから聞いた通り精悍な顔だ。お仲間は聞いていた以上にお美しい!」


「いえいえ、冒険者パーティ『グラディウス』のシドです。本日はお招きいだたき感謝致します。閣下?でよろしいですか?申し訳ありませんが、あまり上流の方と話す機会がないので、失礼な所があれば仰ってください。」


「お初にお目にかかります、辺境伯閣下。私はシド様と共にパーティを組んでいます、ラビと申します。」


「ハッハッハ!キトルスで構いませんぞ!お二人とも、私もシド殿、ラビ殿と呼ばせていただきたい。」


「ありがとうございます。キトルス侯。」


「さて、中に案内しよう。二人とも自分の家だと思って寛いで貰えれば嬉しい。」


装いと纏うオーラはまさに貴族だが、気さくな感じで思ってたのとはだいぶ違う印象だな。


領主に伴われ城内に入る俺たちを案内役の近衛は最敬礼のまま見送っていた。


……


てっきり玉座の間みたいなところに行くかと思ってたが、案内されたのは中庭だった。その広々とした芝の上にクロスのかかったテーブルと背もたれに美しい細工のある椅子が置かれ、領主が座ると俺たちにも勧められた。


「せっかくのいい天気には暗い城内よりこちらが気持ちいいですからな。」

「ジル。」


「はい。旦那様。…お前達は下がっていいですよ。」


「「「畏まりました。」」」


侍女を下げ、ジルニトラ自ら配膳する。


「本日は南部産の紅茶と王都で人気の焼き菓子をご用意致しました。お口に合えばいいのですが。」


なんというか、ジルさんの執事っぷりは完璧だな。無駄がまったくなく、まさに完璧超人(ミスターパーフェクト)。あれだけの強さを持ってるのに何故執事をしてるのだろうか…

俺の考えが透けて見えたのか、キトルス侯が答えてくれた。


「ジルほどの男が貴族に仕えてるのは不思議かな?確かに我々人族より優れた種族でジルは私の高祖父から仕え護る我がキトルス家の生き字引のような存在だ。対外名目上では執事長だが、私が最も信頼する右腕であり友人でもある。同席させたいのだが構わないだろうか?」


高祖父って曾祖父の父だよな?つまりご先祖さまから仕えてる最強の盾であり、剣か。それにしてもどんだけ長命なんだ竜人族…


「ええ、もちろんです。キトルス侯。」


俺たちとキトルス侯、ジルさんの四人だけになった所でキトルス侯の空気が変わった。


「ふふ、貴族というのは窮屈でね。迂闊に皆の前で本音を出せない。ここまでの振る舞いで気を悪くされたなら申し訳ない。」


「どういう事ですか?」


すかさずラビからフォローが入る。


「シド様。キトルス侯は召使い達の前では話せない内容の話がしたいのですよ。」


「ハッハッハ!ラビ殿はお気づきか。さすがメルカトスが誇る自律型魔法人形(オートマタ)ですな。」


「ふふふ…キトルス侯もお気づきのようですね。」


いや、ラビたぶん俺以外しかわかってないとおもう…


「シド殿、旦那様は対等に話をしたいのですよ。侍女たちは他の貴族の子女が多いので、領主が領内の冒険者と対等に話をする姿は政治的に不味いのです。」


「なるほど…大変なんですね。貴族というのは。」


「では、キトルス侯。俺たちを呼んだ理由を伺っても?」


「理解に感謝する。早速、本題に入ろう。」

「貴殿らをお呼びした理由は三つ。一つ目は王国に対しての貴殿らの行動目的について。二つ目は今後我々の関係をどうするか。最後に貴殿の正体についてだ。」


「一つ目については、貴殿らが王国に向かう計画がある所は理解している。内容は話せる範囲で構わないが侵略や破壊が目的ならば理由を教えて欲しい。出来る限り被害が少ない形で決着を付けたい。正直な所、数人の首で済むなら安いと思っている。」


「二つ目の我々の回答だが、我々王国は貴殿らが王国に敵対しない限り最良の友でありたいと考えている。この件に関して私は王より全権を預かっている、この場での約束は国の約束と同義だと思って貰えればいい。我々としての希望は対等な関係だ。わかりやすく言うのはなら、王と私の友人になって貰いたい。必要ならば爵位や屋敷はもちろん、資金なども相談に乗ろう。もちろん我々の望むものが得られるならだが。」


「最後に我々は貴殿がポロコに現れた経緯を知りたい。これも話せる範囲で構わない。聞くところによると、世界樹の森で守護者と生活してたと聞く。しかしあそこは中には入れないように結界があるはずだ。見たところ貴殿は人族だが、このジルに匹敵もしくは超える存在だと思っている。北の神聖国ほどではないが我々も信仰はある、神の使いと言われても驚かないつもりだ。」


驚くべき譲歩だ。国と対等に扱われる個人なんて特別扱いどころでは無いな…


「キトルス侯。」


俺の声に皆注目している。


「一つ目に、あなた方は大きな勘違いをしています。俺たちはそもそも、どの国とも敵対するつもりは無いし、その予定も無いです。王都に向かうのは人を探しているからであって。その事であなた方を煩わせる気も無いし、まして武力行使なんてもってのほかだと考えます。」


「二つ目の対等な友という申し出は大変光栄だと思うし、俺のような若輩者にはもったいない話だと思います。扱いに関しては不当なもの以外は受け入れるつもりだし、あなた方に任せます。ただ、爵位や屋敷は必要ないし、資金提供も遠慮させて欲しい。」


「最後に俺の正体という部分ですが…」


これに関しては今まで誰にも言ってこなかった。正直な所自分でも、よく分からないところもある。だが、信じるか信じないかは別として、仲間であるラビには知る権利がある。そして、俺たちを国のトップが不安要素と考える可能性はできるだけ無くしたい。


「キトルス侯、一つ約束をしてくれませんか?今から話す内容は仲間のラビすら知らない内容になります。この場に居るもの以外には口外しないようにして欲しい。」


「なるほど。理解した。我が名にかけ誓おう。」


「シド様。私も約束します。私の忠誠は貴方だけのものですから。」


「畏まりました。シド殿、私も種族の名にかけましょう。」


三人の同意を得て、俺は自分の話をはじめた…

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