第2話『残酷な真実』
カレンが教えてくれた話は俺の中の常識や知識、倫理観を吹き飛ばす内容だった…
「まず、私達の居る世界と呼んでいるモノとは無数の並行世界の1つであり、同時に全てが存在し合うモノ、士道さんの居た科学が発展した世界が存在するように、私たちのように魔法が発展した世界も存在するという事です。」
「それぞれの世界に姿形は多少異なりますが同じ人も存在し、稀に強大な力を持って生まれた『超越者』と呼ばれる個体などは世界によっては『神』や『神の子』として信仰の対象になる事もあります。また、『使徒』呼ばれる個体は超越者が使役し世界を調整する役割を持ちます。」
「私は『特異点』としてこの世界に生まれました。私たち特異点は並行世界にそれぞれ1人のみ存在し、魂を分割する事により多次元に同時存在として様々な並行世界の歪みを取り除く役割があります。」
「つまり先程言ったように『今』士道さんの居る世界は魔法が発展し、存在する世界という事です。わかってもらえましたか?」
うん。半分も理解できん…
「てことは…ここに居るカレンは俺の知ってる太刀花 可憐と同じ存在で俺の世界に居たのは魂を分割した分身みたいな感じ…か?」
「半分は正解、半分は間違い。という感じですね。」
「魂を分けた同時存在は全てが本物の自分なので、経験や知識、感情も共有しています。」
「いっぱい居るけど、1人の人間てことか。」
「その通りです。そして士道さんの質問の答えに繋がっていくのですが…」
「士道さんの居た世界の私は私達の中でも特殊な能力を持っていました。」
「その能力は『賢者化』魂を賢者の石として物質化する事で超越者としての力を与えるものでした。」
「ですが、それを知ったこの世界の超越者に狙われ、私達は太刀花 可憐としての私を秘匿しようと考えたのです。」
「超越者はすごい力があるのに賢者の石を狙ってどうするんだ?」
「本来、超越者は別の並行世界の超越者を倒す事が出来ません。…が賢者の石を取り込む事でそれが可能となり、並行世界全てを支配する事が可能となってしまうんです。」
「つまり、神様みたいな奴が別の世界の神様を倒す事で全ての世界を征服したりしないように考えたのか。」
「その通りです。私達は太刀花 可憐としての私を物質化…つまり賢者の石に変えて隠そうとしたんです。見た目は小さなペンダントのような形にして…」
理解したくなかった現実
「俺の世界に居たカレンの半身が太刀花 可憐で、賢者の石になる能力なのはわかったけど、死にかけた俺の心臓を再生させた?のは賢者の石って……」
「はい。賢者の石に変わった太刀花 可憐としての私を使いました。」
真っ白い世界に亀裂が入る。
「…なんでだ?なんで俺なんかを助けるのに使った?」
「士道さんの命だからです。」
カレンは当然のように言い切る。
「意味がわかんねーよ!」
真っ白な世界が崩壊していく。
「知り合って2ヶ月程度の俺に命を使って助けるとか、意味がわかんねーよ!!」
ぐちゃぐちゃな感情をぶつける。
「勝手な事をしたと怒られるのは当然です。でも、太刀花 可憐としての私に後悔はないんです。」
「私の憧れの剣士様でしたから。」
「ほんとは初めてじゃないんです。あの日、橋の下で見かけたの。」
「でも、偶然通りかかったって……」
「よく遊びに行ってた祖父の店の帰り道だったので、最初は河川敷で黙々と剣を振る人が居るなーって。その程度だったんです。」
「あの世界に太刀花家の子供として生まれて、小さな頃からおじいちゃんと時代劇観るのが楽しくて。侍に憧れてたりしてたので、士道さんの鍛錬してる姿を見てたら凄いキレイだなーって…」
「遠くから眺めてるだけだったはずなのに…」
「王子様より侍が好きとか変な子ですよね」
気まずそうにカレンは笑う
「おじいちゃんのお店にいらした時は最初気がつかなくて、あの日帰りに見つけた時は驚いたんです。」
照れたようにハニカミながらカレンは続ける
「確かに士道さんの中では、2ヶ月くらいかも知れません。でも、私にとっては大切な思い出なんです。」
俺の中で渦巻いていた黒い感情が白く塗り替えられていくのを感じた…
「なあ、カレン。」
「俺の中に…心臓にカレンが居るって事なのか?」
「私の魂の一部は士道さんの中に居ますよ。」
「……そうか。」
「カレン、助けてくれてありがとうな。」
「私の方こそ、探してくれて嬉しかったです。」
「最後まで私を離さないでいてくれたおかげです。」
「士道さんなら私を見つけてくれるって信じてましたから。」
そして俺の体が淡い光を放ちだす。
「そろそろ、意識が戻りそうですね。」
「また、会えるか?」
答えを聞く前に意識の覚醒を感じた……
『ステータス』
士道 村正
『称号』及び『加護』
黄泉帰りし者
賢者の魂を持つ者
剣神の加護
世界樹の加護
体力 A
筋力 A
魔力 S
技巧 S
速度 A