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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第二章 魂の旅路
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第27話『二人の弟子』


玉座の密談が行われる少し前…


ポロコに到着したシドとラビは冒険者ギルドへ来ていた。ミアとテトの昇格試験を観るためだ。現在二人は二階の支部長室で面談を受けている。


「お?!シドじゃねえか、久しぶりだなあ!戻ってたのか!」


「あ、オルカさんか。久しぶり、今朝着いたんだ。」


話しかけてきたのは、小鬼王(ゴブリンロード)の騒動で世話になったオルカ。一見豪快だが気遣いも出来、仲間思いの熟練冒険者。パーティはBランクだが、個人としてはAランクに匹敵する猛者だ。周りにいた他の顔見知りの冒険者たちも口々に声をかけてくる。


「そうだったのか。どうだったメルカトスは。いい獲物は見つかったのか?」


「ああ。いいモノを手に入れる事が出来たよ。オルカさんの情報のお陰だな。」


俺は腰に下がる二本の柄を撫で、隣でキョロキョロするラビを呼んだ。


「なっ!お前この美人は誰だよ!」


「え?ああ。仲間のラビだ。ラビ、この人はオルカさん。ポロコで世話になった先輩冒険者だ。」


オルカだけではなくギルド内に居る男性冒険者は一様にラビに釘付けだ。


「オルカ様、皆様。はじめまして、私はラビと申します。シド様と旅をさせて頂いております。よろしくお願いします。」


ぺこりと頭を下げ挨拶したラビにみんな鼻の下が伸びきっている。


まあ、ラビの外見は美形の多い亜人種の中でも、かなりの美人だろうからな。ラビ達、自律型魔法人形(オートマタ)の外見はかなりこだわって作られる言わば芸術品のようなものだし無理もないか。


「シド…正直に答えてくれ。」


「なんだ?」


「…俺は鍛冶屋と素材ならばメルカトスと教えたが、美人の仲間を作る方法なんて教えてないぞ!なんでこんな美人が一緒に旅をしてくれるんだ?!美人と二人旅とかズルいぞ!」


オルカの声はその場の男性陣全ての声だった。


ラビとの馴れ初めを事細かに聞こうとするオルカやみんなを制して、話を変える。


「も、目的は剣だからな?たまたまだよ。別にラビとの事は…そんなんじゃ…」


「シド様、酷いです…私は運命だと思ってたのに…初めての日はあんなに激しく私の胸を揉んだのに…」


「「「「「シド!!貴様ああああああ!!!」」」」」


「お、おい!ラビ!?語弊があるだろ!みんな落ち着け!!勘弁しろよ、まったく…」


みんなの興奮がピークになった頃、二階にある支部長室のドアが吹き飛びそうな勢いで開いた。


「やかましいぞ!!貴様ら!!これから試験やるってのに、何の騒ぎだ?!」


さすがの喧騒に面談中のギルド支部長ガランから怒声が飛ぶ。相変わらずのでかい声だ。


群がっていた面々が蜘蛛の子のように散る。


……


「シド…すまん。ちょっと興奮し過ぎたわ。」


頭をかきながら反省するオルカはバツが悪そうに話を本題に戻す。


「二本も持ってたか?変わった剣だな。サーベルか?それ。」


「いや、これは刀っていう片刃の剣だよ。」


「カタナか。そういや、東の方にそんな名前の剣を使う奴らがいるって聞いた事があるな。」


「刀を使う?どんな奴らだ?」


「ああ。俺も噂程度の知識しかないが、大陸の東には『旧文明の遺跡群』と数百年前に起きた大戦の影響で出来た砂漠地帯があるんだが、噂では、そこに移り住んでる奴らの集落があるみたいでな。そこの奴らがカタナって武器を使うらしいんだよ。」


「『旧文明の遺跡群』と荒廃した砂漠か。」

「人族なのか?」


「すまん。そこまでは分からんな。ただ見たって奴らの話では人のように剣を使うみたいだぞ。」


「なるほど、機会があれば行ってみるよ。」


「はははっ!広い砂漠だからな、干し肉にならねえように気をつけろよ!」


「まあ、刀使いは気になるけど、先に済ませたい用が王都にあるからな。」


「そうか。まあ、東の話はまた仕入れておいてやるよ。って、それにしても見事な剣だな。ちょっと見せてくれよ。」


「ん?ああ。専用化してあるから、鑑定でみてくれ。」


「お!悪いな。んじゃ、失礼して。『鑑定』っと…」


『斬魔刀』

等級/伝説級(レジェンダリー)

種類/最上級製作武器 カタナ

材質/金剛鉄(アダマンタイト)超金属

仕様/魔力付与(エンチャント)済『属性変換』

製作/ディエゴ・ラドラ


『七星刀』

等級/伝説級(レジェンダリー)

種類/最上級製作武器 カタナ

材質/金剛鉄(アダマンタイト)超金属

仕様/魔力付与(エンチャント)済『属性付与』

製作/ディエゴ・ラドラ


「こ、これ!あのラドラ老が作ったのか??おいおい…伝説の鍛冶師だぞ!歴代勇者の剣を鍛えてきた最高の腕を持つ鎚小人(ドワーフ)じゃねえか……」


「あ、ああ。ディエゴさん有名な人らしいな。気さくないい人だったな。確かに腕は超一流だったよ。」


「シド、お前なあ……その強運はなんなんだ?普通はこんな美人は仲間にならねえし、ラドラ老に剣を打ってもらえる奴はいねえよ…」


「お、おう…そうなのか……あ!アイツら終わったみたいだな!じゃあまたなオルカさん!行こうぜ、ラビ。」


遠い目をしているオルカを置いてミアとテトの元へ向かった。


「お疲れさん、二人ともどうだった?」


「あ!師匠!!」


「師匠、見に来てくれたんすね!あざす!」


「メルカトスから戻ったら、お前らが昇格試験やるって聞いてな。あ、二人とも俺の仲間になったラビだ。仲良くしてやってくれ。」


「ラビです。よろしくお願いします。お二人共試験頑張ってくださいね♪」


「すげぇキレイっすね!うさ耳の美人ヤバいっすよ!師匠やっぱすげぇっす!なあ?テト!」


「すいません。ラビさん。こいつなり褒めてるんですよ。」


「ふふ♪大丈夫ですよ。」


「じゃあ、俺たち実技試験なんで先に行きますね!成長した姿を見せますよ!ほら、いくぞミア!」


「おう!」


見ない間に少し逞しくなった二人を見送り、シドたちは観覧席に向かった。


……



「かわいいお弟子さん達ですね。」


「まあ、基本的な訓練と型くらいしか教えてないから師匠って程じゃあないんだけどな。」

「才能のミアと努力のテトってイメージかな。二人のコンビネーションはなかなかだぞ。」


「シド様、実技試験とは何をするんですか?」


「ああ。俺もやった事がないからわかんないんだよな。見た感じ、試合っぽいな。」


ギルド裏の訓練所には試験を見に来た者達が座る観覧席に囲まれる型で一辺が20メートルほどの四角いコロシアムのようになっている。適正試験と違い案山子はない所を見るとどうやら対戦形式のようだ。


「Dランクの昇格試験なのに結構人が多いな。それだけ注目の二人ってことか…」


「ふふ♪嬉しそうですね。」


「ああ…。(…ゾクッ!)なっ!?」


背後に強烈な寒気を感じた瞬間…


「お隣よろしいですかな?」


ビシッと高級そうな燕尾服を着た白髪の紳士が声をかけてきた。


今の悪寒はなんだ?このじいさん…いつから居た?


「あ、ああ。どうぞ。」


「ありがとうございます。いやはや、私のような老人には階段が辛いですからな。」

「こちらが空いていて助かりました。」


にこにこと好々爺然とした表情と礼儀正しい振る舞いに緊張が解ける。気のせいか?


「誰か知り合いの方も試験に?」


「いえいえ、若く優秀な冒険者から英気を頂こうかと思いましてね。」


「なるほど。俺たちはあの赤い髪と茶色い髪の二人の応援なんですよ。あ、名乗りもしないで申し訳ない。俺はシド、こっちは仲間のラビです。」


「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。私は『ジルニトラ』と申します。」

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