第25話『帰路』
「シド様、ポロコの町はどんなところなんですか?私はメルカトスから離れた事がほとんどないので…」
「んー。小さい町だよ。みんないい人だな。」
「メルカトスもいいところだけど、素朴な温かみのある町だ。」
「素敵なところなんですね♪」
「でも、人族の国自体初めてなので緊張します。大丈夫でしょうか?」
俺たちはポロコに向かう馬車の中にいる。
メルカトス滞在は二ヶ月ほどだったが本当に色々あったなとラビの質問に答えながら、腰に下げた二振りの刀の柄を撫で回想していた。
……
実用試験から数日後…
「ラビ!居たぞ!南西、木の上だ!」
「了解です。シド様。『目標捕捉』『電磁加速砲準備完了』」
「3…2…1…今だ!」
「バシュッ!!」
「ギギャッ?!!」
竜種の眷属とも言われるエルダーワイバーンの体を何かが貫通し、錐揉みになり墜落する。そして…
ドゴォオオオン……
遥か後方から放たれた亜音速の一撃に置き去りにされた発射音が時間差で鳴り響いた。
「何度見ても凄まじい威力だな…」
ラビの武器としてティエナが用意したのは、風属性の魔力を使い亜音速で矢を撃つ特殊な形の弓だ。最大の特徴はラビの『アルベド』の結晶化と反射を使い放つ固有魔法『電磁加速砲』だ。このワイバーン討伐も癖のある武器に慣れる為、実用試験を兼ねている。
「シド様。目標に命中を確認しました。」
「アルベドの結晶化で強化したので装備にも被害は認められません。成功ですね♪」
俺たちはメルカトスの近くにある鉱山に来ていた。鉱山を占拠したワイバーンの討伐依頼のためだ。
「そうか。よくやったラビ、討伐完了だな。素材と印を回収して、ギルドに戻るぞ。」
「はい♪」
……
「あ、お疲れ様です!シドさん!ラビさん!」
冒険者ギルドに入ると、馴染みの受付嬢が声をかけてくる。俺がメルカトスに来てからもうすぐ二ヶ月が経とうとしていた。
新しい装備と仲間を手に入れた俺はカレン探しに行く為に当面の路銀と素材を集めれる高額依頼を中心にこなす日々を送っている。
「これ、今日の分だ。頼む。」
「こ、これ!?エルダーワイバーンじゃないですか!!お二人で?!さすがAランクパーティ『グラディウス』さんです!」
『グラディウス』それが俺たちのパーティ名。古い言葉で『剣』を意味する名前に決めた。剣で繋がる仲間。俺の武器であり、仕事であり、この世界に来るきっかけでもある。剣を求めメルカトスに来て、ラビとも出会い、新たな剣を手に入れた。ラビも気に入ったようだ。
「では、こちらが報酬になります。」
「ありがとう。ああ、しばらく離れるから拠点の切り替え申請も頼むよ。」
「え?!どちらに?」
「王国のポロコに寄ってから王都に向かう予定だ。ベスティアには世話になったから出発までは依頼をこなすよ。」
「また戻ってくるんですよね?」
「そうだな。また来るよ。じゃあ手続きよろしく。出発は三日後だから、それまでに頼むよ。」
……
「…遂に出発するんだね。寂しくなるよ。」
「『アルスマグナ』の事もあるし、たまには帰っておいでよ?何かあれば渡した通信用魔道具で連絡してね。」
「ああ。ティエナには最後まで世話になりっぱなしだったな。本当にありがとう。」
「ティエナ様。私からもお礼を言わせていただけますか?ここは私にとって生まれた場所です。旅をしてどこに行っても、私の帰る家はここです。それはずっと変わりません。本当にありがとうございました!」
「ああ。君たちの活躍を応援してるよ。私たち魔科学研究所は君たちの味方だ。その事を忘れないでくれよ?」
「もちろんだ。」
「また来るよ。」
ティエナに別れを告げ俺たちはディエゴの工房に向かった…
……
「……ほう?王都に行くのか。なら、これもっていけ。」
長い包みを渡された。…剣?
開けてみると、美しい一振の刀だった。
「こ、これは…」
「そいつぁ、ワシの自信作だ。銘は『七星刀』素材は斬魔刀の素材と同じ言わば兄弟みたいなもんだが付与した力は『属性化』。所謂、魔法剣でやつだな。」
「属性を付けて斬れるってことか。いいのか?」
「魔力を斬れ味に変える斬魔刀は物理特攻だからな。普通に斬れない奴にはこっちを使えばいい。素材はお前さんが集めたからな。まあ、餞別みたいなもんだ。」
「ありがとうディエゴさん。」
「武具の事ならいつでも言ってこい。ラドラ工房が面倒見てやるからな。ガハハ!」
「ディエゴさん、ありがとう。これからも頼りにしてるよ。」
「まあ、たまには顔見せにこい!いいな!」
ディエゴは照れたように鼻をかきながら見送ってくれた。
……
そして現在。
「…ま。…ド様。……シド様!」
「あ、ああ。すまんすまんポロコの事だったな。」
「まあ、大丈夫だろ?王国は長年交易でベスティアと交流あるから獣人差別とかはないと思うぞ?」
「そうですよね。初めての旅なので緊張し過ぎたみたいです。あ!シド様。そろそろ峠を抜けるようですよ。」
「この調子ならあと2、3日で着きそうだな。」
「ポロコに帰るのも二ヶ月振りか…」
この世界に転移して来て、半年が過ぎていた。
「ちょっと待たせ過ぎだよな…」
「なにか仰いましたか?」
「いや、独り言だ。」
ミドラ峠を抜け王国に向かう馬車に揺られ少し反省するシドであった。




