第24話『ティエナからの贈り物』
「やぁやぁ!呼び出してごめんねー!」
「いや、俺もちょうど顔を出そうと思ってたし気にしないでくれ。」
「それで何かあったのか?」
「いや、シドくんは新しい武器を手に入れにメルカトスに来てたでしょ?だから終わったら戻るだろうと思ってね。」
「君たちに渡したい物があったんだよ。」
「まあ、慌てて帰るって話じゃあないからな。渡したい物ってなんだ?」
ティエナが俺とラビそれぞれの前に置く。
「さあ!開けてみてよ。多分気にいると思うよ。」
「ああ。ありがとう。」
「ティエナ様ありがとうございます♪」
かなり大きな包みだな…中に何が入ってるんだ…?
「こ、これは…」
「ティエナ様、コレって…」
俺の包みの中には、鈍く光る金属製の鱗と炭素繊維のような素材で出来た胸当てと同様の金属プレートが付いた小手。一緒に大きな瓶に黒くどろりとした液体が入っている
「防具?ラビのはなんだ?」
「使い方が分からないですぅ…」
ラビの包みの中には、俺のと同じ素材だが両腕両足につけるタイプのバンドのようなものだ。こちらは大きな瓶に白くどろりとした液体が入っている。
「ティエナ、なんだこれは?」
「ふふふ…よくぞ聞いてくれたね!」
「二人のは見たままの通り防具だよ。それは『魔化炭素繊維』と『古代金属』を使って我が研究所が魔科学の最先端技術で開発した『魔化技術素材』の試作装備第一弾『アルスマグナシリーズ』!『黒のニグレド』だ!」
「そしてぇ!ラビの目の前にあるのは『白のアルベド』!!装備してから付属の瓶に入っている液体に触れてみてほしいぃ!」
「ええと…わかる言葉で頼む、すごい装備なのは何となく分かったけど。」
「黒のニグレドと白のアルベドだったか…?」
「はぁはぁはぁ…い、息が切れた……」
「大丈夫…危険はないから装備してみて……」
とりあえず装備してから考えよう。
俺の胸当ては首から胸、背中までカバーするタイプ。薄めの造りでコートを着ても気にならない程度。小手は手の甲から肘までをカバーするタイプ。
ラビのやつは少し幅のある金属のバングルが手首と足首用で四か所分。なんだかアクセサリーって言われても違和感は余りない。
「着けたけど、どうすればいいんだ?」
「お互いに自分の瓶の中にある液体に触れてみてほしい!なんなら浴びてもいいよ!」
とりあえず言われるままに俺たちは液体に触れた…次の瞬間
「な、なんだ?!」
「うぅぅぅ…気持ち悪いですぅ……」
液体が俺たちの身体にまとわりついてきた。そして、それぞれの装備と同化して消える。
「お?装備の色が…」
「私のは白くなりました!」
「よーし!じゃ、『実用試験』しに行こうか!」
……
研究所の中にある訓練施設にきた俺たちの前には、巨大な魔獣が檻に入れらている。頭と前足はライオン、背中から後ろ足は鷲、尻尾は蛇…こういうのなんて言うんだったかな。あ、キメラか。
「これと戦えばいいのか?」
「察しがいいね!それで『アルスマグナ』の使い方だけど、色毎に特殊な効果があるんだ。」
「特殊な効果?」
「そう。黒のニグレドの力は『黒化』。相手に与える特殊効果は『腐蝕、酸化、浄化、燃焼』が継続で発生。つまり、相手の属性に合わせて攻撃に最適な追加ダメージだよ。」
「白のアルベドの力は『白化』。相手に与える特殊効果に『精神浄化、再生、結晶化、反射』を追加。つまり、相手に必要な恩恵効果を付与できるようになるよ。」
なるほど、俺は斬撃に継続損傷効果が、ラビは守りに特化した恩恵付与効果が使えるようになる訳か。
「二人とも相手を注視すれば解析完了だから最適な効果を頭でイメージして使えばいいよ。」
「……よし、わかった。はじめてくれ。」
キメラの檻が開かれる。そして、禍々しい魔力を放つ魔獣が解き放たれた。
……
体高は4メートルくらいか…デカいな。
森にいたワイルドボアに長い尻尾が付いた感じだな。
「ラビ!準備はいいか?」
「はい♪装備の詳細は把握しました。問題ありません。」
「よし、いくぞ!」
俺はこちらを睥睨するキメラを睨みつけ駆ける。キメラが上体を下げ迎え撃つ。
「ブレスか?ラビ!」
「はい♪『白化』!結晶障壁を展開します!」
ラビの体から白光する魔力の玉のようなものが俺に向けて放たれる。それは、俺に触れた途端弾けた…中から無数の蝶が舞う。
俺の体を透き通った羽根を持つ蝶が覆った。硬質な蝶は隙間なく俺を包み障壁となる。
そして、キメラの炎のブレスが放たれた…が
「はは!すごいな!全く効かない。じゃ次は俺の番だ!『黒化』!『解析』!」
『キメラ』
様々な魔獣の融合体。
脅威判定/B+
属性/風、毒
固有能力/火炎の息、猛毒噛み、雷撃、炎無効、毒無効
「なるほど。火と毒が効かない以外は特に耐性はないな……『腐蝕』…おっと!」
キメラはブレスを無効化された事を知り、前足を叩きつけてきた…が既に俺は抜刀体勢をとっている。そして一閃。
「遅い!!」
腐蝕効果が乗った斬撃がキメラの前足を切断する。絶叫をあげるキメラ。切断面の肉と骨がみるみる間に腐り激痛を与える。切り落とされた前足は既にブヨブヨとした腐臭を放つ肉塊になっていた。キメラは前足を庇い蛇の尻尾を振るう。
「ラビ!下がれ!『酸化』」
ラビを後ろに下げ、蛇を切りつけると蛇が途端に苦しみだす。
「シド様、何をしたんですか?」
ラビは不思議そうに尋ねる。どう見ても致命傷になる様な傷には見えない一撃が蛇をくるしめているからだ。
「ああ。この世界の法則はわからんが、『酸化』ってのは『水分を奪う』って意味もあるんだよ。生きた生物から水分、つまり血液を奪ったら…」
「死んじゃいますね…」
「これ以上は可哀想だな…楽にしてやろう。」
キメラが最後の力を振り絞って雷撃を放とうと構える。
構わずシドはキメラに近づく、そして。
「天照流 弐ノ太刀『山斬』!」
まさに、山を両断するような斬撃が振り下ろされキメラの巨体が縦に切断された。
……
「ティエナ!終わったぞ!」
「私の出番全然無かったですぅ……」
「いや、障壁はすごかったぞ。あのクラスのブレスを無効化は大したもんだよ。」
わしゃわしゃと撫でるとラビが悶える。
「ですから耳はダメですぅ…ふあぁぁぁ…」
「あはは!シドくん、お陰でいいデータが取れたよ。お疲れ様!」
実用試験を終え、俺たちはティエナの部屋に戻った。キメラには悪いが斬魔刀の切れ味も予想以上だった。メルカトスに来て強力な装備と仲間を手に入れた俺は胸に手当て独り言ちる…
「ようやく、目的に向かう準備は揃ったな…」
「カレン…『こっち』のお前を絶対に見つけてやる…待っててくれ。」
応えるように心臓の辺りが暖かくなった気がした……




