第22話『新たな相棒 中編』
都市内で採掘の準備を整えた俺とラビはディエゴのメモを頼りに最初の鉱山にいた。
「くそ!簡単には行かないと思ったが、こういう事かよ!!」
「シド様!こちらに来ます!」
俺たちの前には巨大な亀が迫っていた。
……
「ここが鉱山か。なんだか物々しいな。」
「ここは、一般には解放されていない鉱山のようです。私のデータにも詳細は登録されてません。」
「あ、坑道の入口に衛兵が居るな。行ってみよう。」
…
「ん?君たち、ここは『封印鉱山』だ。何の用かね?」
「ああ。ディエゴさんからこれを見せるように言われたんだが…『封印鉱山』ってのはなんなんだ?」
「こ、これは『ラドラの工房の証』!失礼しました!こちらの鉱山は『鉱石魔獣』の巣窟で、最低でも難易度Bの魔獣が彷徨いてるので一般には解放しておりません。」
「『鉱石魔獣』?」
「はっ!鉱石魔獣とは体に稀少な鉱石を持つ魔獣でありまして。ただの採掘とは異なり討伐してから採取する事になります!」
「なるほどな。それで冒険者なら…か。難易度B以上か、なかなかだな。」
「ラビ大丈夫か?遠距離型のラビには骨が折れそうだぞ?」
「問題ありません!シド様のお役にたてる瞬間が遂にきたのですね!」
「あ、ああ。やる気は充分そうだな…」
「あ、あの?もしかして、お二人だけで行かれるのですか?」
「ああ。そのつもりだ。まずいか?」
「い、いえ!ただ、規則なのでランクのチェックをこちらでお願いします。」
入口横にある小屋に案内されついて行く。
まあ、適当に中に入れて死なれるのは御免てとこだろう。中に入ると中央のテーブルに石版のようなものがあった。
「それぞれ順番に石版に手を置いてください。石版が『自己証明』から自動でランクをチェックします。」
「なるほどな。」
「じゃあ、俺からでいいか?」
石版に手を置くと微かに魔力の流れを感じた…
《ランク解析終了。あなたはAランクです。》
続いて、ラビ。
《ランク解析終了。あなたはB+ランクです。》
「これでいいか?」
「は、はい!お二人程の方達なら問題ありません。ご協力ありがとうございます。」
「じゃあ、行くか。」
「はい♪シド様♪」
「お気をつけて!」
「ああ。ありがとう。」
衛兵に見送られ鉱山の中へ向かった。
中はまるで地下迷宮のような空間が下へ続くように広がっているようだ。
「まるで迷宮だな。」
「恐らく、『迷宮創造』により作られてた鉱山かと思われます。」
「『迷宮創造』?」
「はい。建築魔法の中にはこのように自在に迷宮や建築物を作り出すものがあり、ベスティアをまとめる『十席議会』の方の中には、このような能力を持つ方がいらっしゃいます。」
「『建築魔法』と『十席議会』か…ん?てことはメルカトスのビルなんかもか?」
「はい。シド様の予想通り。私の生まれた魔科学研究所のある『アルスヒルズ』から広がるビル群はすべて能力建築なんですよ。」
「おいおい魔法はなんでもありだな…。」
「制限や使用者によるので万能ではないんですけどね。あ!シド様!何かいます…」
「ああ。あれは…亀か?」
……
金剛陸亀B難度の魔獣だが、何せ大きさが厄介だ。そして名前の通りめちゃくちゃ硬い。
「くそ!簡単には行かないと思ったが、こういう事かよ!!」
「シド様!こちらに来ます!」
亀の突進を躱し切りつける。ラビも弓矢で集中砲火を浴びせる…が
「普通に攻撃しても効いてないな…何か弱点は無いのか…?」
「シド様、甲羅部分は特に物理耐性が高いようです。うぅ…矢が通りません。」
「まあ。普通は頭が弱点なんだろうが…」
「ラビ!お前の能力は遠距離必中だったよな?」
「はい。離れれば離れる程威力も上がります。…あ!」
「理解したな?俺がアイツの頭を引っ張り出すから最大威力の矢で口を狙え!いくぞっ!」
巨大な亀目がけて突進する。狙うは体の下。如何に甲羅が硬くても中は柔らかいはず。
ならば…
「蒸し焼きにしてやる!」
「『天照流 壱の太刀 風断!』」
高速で抜刀した剣による斬撃は真空波となり亀の頭に襲いかかる。危険を察知した亀は頭と手足を甲羅の中に隠した。
「予想通りだな。次はこれだ!『獄炎』!」
甲羅の中に巨大な炎を撃ち込む。亀は生身の部分を焼かれ悶え苦しみ暴れる。そしてたまらず頭を出しシドに噛み付いてきた。
「よし!逃がさねえぞ!」
シドは体を丸め剣を縦に構える。丁度口に収まるように…
ガキィィイイイン!
凄まじい衝撃が剣を持つ手に伝わる。
「ラビ!いいか?!いくぞ!3…2…1…今だ!!」
後方からラビの全力の一撃が飛来する。
口から飛び出し下顎にぶら下がったシドの真上で肉を貫く鈍い音と亀の絶叫が響く。
「ふぅ。何とかなったな。」
金剛陸亀は体を貫かれ絶命していた。口に引っかかった剣を回収する。
「シド様ぁぁぁ!やりましたぁぁぁ!」
ラビがかけてくる。嬉しそうだ。
「やったな!凄いよ。」
「ありがとうございます!シド様に当たったらどうしようかと思いました!」
「あはは!ラビならちゃんと計算して撃てるだろ?当たっても俺は死なないしな。」
「それはそうですけど、主に矢を向けるのは緊張してしまいます。」
「まあ、これで一つ目の鉱石は手に入れたな。」
「採取もなかなか骨が折れそうだ…」
横たわる亀の甲羅には鈍く光る鉱石がびっしり付いていた。
……
「ラビ!行ったぞ!」
「はい!」
ドシュッッ!!
「キュィイイイ……」
「ふう……こいつで最後だな。それにしても朱雀鳥か魔法を使う魔獣もいるんだな。」
「はい。魔獣はB以上から普通に魔法を使用してきますので、今のように飛ばれると近接職には対応が難しいですね。」
最初の亀に始まり、頭が二つの蛇、全身を鉱石で固めたモグラに燃える羽根を持つ怪鳥。どれも一筋縄では行かず、二人にも疲労がみえる。
「よし。回収して戻るか。結局一日近くかかったか…ディエゴさんの所には明日いこう。まずは風呂と飯だな!腹が減った。」
「それではシド様。都市内におすすめの場所があるので、そちらに行きましょう!」
「元観光ガイドがおすすめか。期待しておくよ。」
「おまかせください♪」
俺たちは採取を終え帰路についた。
……
宿で風呂と着替えを済ませ、二人は都市内最大の歓楽街に来ていた。
「夜はさらにすごいな。」
「シド様、この先80メートル先を左に曲がると目的地です。」
そして目的地の店に到着。
「相変わらず正確なナビだな。」
「ふふっ♪」
「『猫耳亭』か。」
「猫耳亭は都市内でも穴場中の穴場で安くて美味しいので、人気なんですよ!」
「へぇー。ところでラビは食事は出来るのか?」
「もちろんです。私たちは摂食した物を分解して動力に変換してるんですよ。ただ妊娠、排泄機能はないだけで生体構造はシド様たちと変わりません。……って!なにを説明させるんですか?!」
「あ、ああ…なんか、その、すまん…」
「もぅ!知りません!」
変な事を聞いたか…ラビも魔法人形とはいえ、やっぱり女の子なんだな…気を付けよう…
「シド様!行きますよ!」
カランカラン…
ドアを開けると、木目調の落ち着いた店内が広がっていた。
「いらっしゃいませぇ~」
「二名様かにゃ?じゃあ奥のテーブルでお願いしますにゃ。」
猫耳亭の名の通り猫耳の獣人ウェートレスに案内され席につく。
「今日のおすすめは『近海で捕れたマドゥーロの頬肉のステーキとシャンピニオン貝のグラタンですにゃ♪』」
「じゃあ、俺はステーキを、ラビはどうする?」
「私はグラタンにします。あと黄ワインを。」
「黄ワイン?赤とか白じゃなくて?」
「はい。エルフ族の名産品の黄ワインは別名エルフワインとも言われる甘めのワインなんですけど、飲むと翌日の肌の調子がよくなるんですよ。」
「へぇー。そんなのがあるのか…ところでビール…うーん…麦の発泡酒?みたいな酒はあるのか?」
「セルベサのことかにゃ?ありますにゃ。」
「じゃあ、俺はそれをもらうよ。」
「かしこまりましたにゃ。お待ちくださいにゃ。」
しばらくラビからこの世界の酒知識を仕入れていると、料理と酒が届いた。
『近海マドゥーロ頬肉のステーキ 青羽鴨の肝臓のポワレと黒トリオ茸のソース』
名前からするにマグロか。だが、見た目は和牛の霜降り肉のような肉質。添えられてるのはフォアグラか。ソースのこの香りは黒トリュフだな。前に鍔沙のドラマの打ち上げに呼ばれた店で似たような料理が出てきたな…たしか『和牛シャトーブリアンのロッシーニ風』だったかな。
『シャンピニオン貝のグラタン 季節の野菜のローストと共に』
なるほど、大振りな貝を入れ物にして魚介と野菜のローストをベシャメルソースでグラタンに仕立ててるのか。こっちも美味そうだな…
「ごゆっくりしていってくださいにゃ♪」
「「いただきます。」」
「じゃあ、せっかくだし。パーティ結成を祝して乾杯するか。これからよろしくなラビ。」
「はい♪ふつつか者ですがよろしくお願いします♪」
「「乾杯。」」
「よし。食うか!」
「はい♪」
マドゥーロもといマグロの頬肉はレアに焼かれ余熱でじんわりと調理されている。
程よい弾力と溢れる肉汁の甘みが口の中に広がった。フォアグラはしっかり下処理され臭みひとつ無く表面がパリパリに焼かれてる。
そして、ソース。トリュフの香りの中にアーモンドのような香ばしい余韻がある。
三位一体となり口の中で弾ける…う、うまい!旨すぎる!!クライフさんの料理以来の衝撃だ。
「グラタンおいしいですぅ♪」
「シド様、一口いかがですか?はい♪あーん♪」
「あ、いや…自分で食べれるから…そんな泣きそうな顔するなよ…うぅ…わ、わかったよ!」
「あーん♪」
「あー…ん。」
一口含みマドゥーロの旨さの衝撃に匹敵する旨みの波に飲まれた。
な、なんだこれは…シャンピニオン…つまりキノコか…焼いたマッシュルームのような香りのするアワビに似た貝とじっくりローストされた野菜が口の中で踊る!踊る!踊る!
これ、俺の知ってるグラタンじゃない!
「旨いな…」
「甲乙つけ難いな…これは。」
「ここの料理長は元々十席議会がある議事堂の料理番として、腕を振るった方なのでここはベスティアでも一二を争う名店なんですよ。」
「うん。これは納得だ。」
「セルベサも想像してた味で美味いな。」
「黄ワインもおいしいですよ♪」
旨い料理と酒であっという間に夜は過ぎていった。




