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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第一章 目覚め
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第19話『本音』

「シド様。あちらが国立魔科学研究所です。ティエナ様を頂点に国内有数の魔科学者、魔法使いが集い、日夜最新の魔道具や技術開発並びに研究が行われているんですよ。」


「へえ。すごいんだな本当に。ティエナ所長(・・)?」


「もー。悪かったよ。最初に言わなかったのは謝ってるじゃないかあー。」


「シド様?あまりティエナ様をいじめないであげてくださいね?ティエナ様のおかげで私はシド様と一緒に居られるようになったんですから。」


メルカトスでの怒涛の1日目から一夜明け、2日目。ティエナ所長(・・)と共に、俺とラビは都市の中央に聳え立つ巨大な塔。『アルスヒルズ』の中にある国立魔科学研究所に来ていた。


「部外者の俺が入っていいのか?」


「シドくんは。もう正式にラビの所有者だし。充分関係者だよ。」


「その通りです。私はもう、シド様のモノですからね。」


目覚めてからラビはずっとこの調子だ。

なんというか、『主とメイド』というスタンスを変えようとしない。まあ、本人がこれがいいと断言するから渋々同意したけど…


「さあ。着いたよシドくん。ようこそ。魔科学研究所へ!。」


「おお…この街の規格外な雰囲気も慣れてきたけど、ここは更に凄まじいな。」


「シド様。ここには私たち自律型魔法人形(オートマタ)の開発や調整をする為の最新の開発設備があるんですよ。」


分厚いガラス張りの研究室が教室のように並ぶ研究棟と巨大なプールや訓練をする為の体育館のような施設があり、まさに研究所だ。


「外から観るよりかなり広いんだな。」

「ああ。それは。『空間魔法』のせいだよ。」


「空間魔法?初めて聞く魔法だ。」


「そうかい?。空間魔法って言っていうのはね。そのまま無から空間を作る魔法のことなんだけど。」

「代表的なものは『道具袋(アイテムバッグ)』かな。これなら使えるんじゃない?。」


「ああ、それなら使えるな。というより凄い使ってる。へぇ、これ空間魔法なのか…」


「魔法の属性系統も知らずに使えるシドくんも大概規格外な存在だねー。はははっ!」


「まあ。その空間魔法の中の『空間拡張』でこの施設は作られているんだよ。」


「シドくん程の魔力があれば簡単に覚えれるさ。」


「そうなのか?俺はダークエルフの友達から教えてもらったくらいしか魔法の勉強なんてしてないから、一度ちゃんと勉強しないとな。」


「ダークエルフ?。まさか『世界樹の守護者(ガーディアン)ファム・ファタル』?。」

「お?ティエナもファムを知ってるのか?」

「知ってるも何も。ものすごい有名人だよ!。」


「へぇ…そうなんだな。」


「彼女たち『守護者(ガーディアン)』は太古の昔から聖域と呼ばれる地を守る種族の中に発現する特別な存在なんだよ。」

「聖域は中央大陸の世界樹。東の果ての竜の巣。南洋に沈む海底火山。西の山脈の大瀑布。北の永久凍土の大渓谷が有名だよ。」


「聖域っていっぱいあるんだな。」

「そうだね。シドも強いだろうけど。彼女たちは更に規格外の存在なんだよ。」


「なるほどな…」


仲のいい友達が実は有名人だったって事か。

意外と俺はファムの事を知らないんだな…


「研究者の私としては。シドくんも調べたい対象なんだけどね。どうだろう。自分の力を知りたくはないかな?」


「力?」


「最初に魔力を測った時から気になってたんだよ。人族(ヒューマ)としては有り得ない力だからね。」


転移したっていうのは、言わない方がいいよな…そう漠然と考えながら俺たちはティエナの研究室に入った。


……



「正直、俺もよくわかってないんだよな。まあ、気にはなるけど…」


「何かシドくんの秘密を暴きたいって話じゃないんだよ。力を知れば今まで以上に強くなれると思うし。ラビとの馴れ初めのような暴発は無くせると思うんだよね。あとは私の個人的な興味かな。」


「素直だな。」


「信用は嘘じゃ得れないからね。」


「なるほど。」

「わかった。考えておくよ。」


「気が向いたら言ってね。」


「ああ。」

「…あれ?ラビはどこだ?」


「あそこ。」


ティエナの指さした先に居たラビは、様々な研究室の中を映すモニターを真剣に見ていた。


「ラビ?」


「あ!シド様申し訳ありません!」


「いや、いいよ。放っといたのは俺だから。」

「何を見てたんだ?」


兎人(ワーラビット)族の研究室です。私はあの様に見えていたんだなあって思うと…なんだか気になってしまって……」


「ラビ。聞いてほしい。君は彼女たちの希望だ。私たちが見つけれなかった可能性だ。彼女たちを哀れに思うかい?。確かに決められた仕事をして生きているだけかもしれない。自我を管理された哀れな存在かもしれない。」


「ティエナ…」


「でもねラビ。私たちは最初君達を信じてやれないばかりに私たちを守る為。裏切りや暴走を防ぐ為に首輪をつけた。私たちは。いや私は。その事が間違っていたとは思っていない。でもね。シドくんは最初から君を信じて助けたいと願い。君を救ってみせた。そして君も『生きたい』と願った。そして私は。私たちがもう一度君たちと友達になれる世界の可能性を信じてみようと決めた。君から得るフィードバックは彼女たちに反映される。だから君は彼女たちの希望で可能性なんだ。」

「ラビ…わかってくれるかな?。」


それは、ティエナの本音だった。ラビの事は自分の立場を苦しめることもあるだろう…

だけど、もう一度友達として生きる未来。

それを信じたいと心から願っていた。


「ティエナ様…」

「私…首輪があった頃はティエナ様達の事を考えたりすると頭の中に(モヤ)がかかったような感じでした。でも、今ならちゃんと見えます。ちゃんと聞こえます。そしてどれくらい私たちが大切にされてきたのかを、どれくらい心配かけてしまったのかを知ることができました。」


「私たちのことを真剣に考えてくれる人たちがいる。作り物の私たちの幸せを考えてくれる人たちがいる。」


「ティエナ様。世界はこんなにも美しい場所だったんですね?私の持つ可能性が『妹たち』や他の『仲間たち』の希望になれるなら。こんなに嬉しい事はありません。」


「ラビ…」


聞きながらティエナは目に涙を溜めていた。


「ティエナ、いい娘を持ったな。」


「う゛ん゛…!!。」


「ラビ、お前の成長が妹や仲間たちの成長の糧になる。完璧じゃなくてもいい、不格好でも精一杯頑張れ。後悔しないようにな。」


「はい!」


……


その後、ラビの検査が行われた。首輪で封印されていた機能や能力の動作確認をしてラビは本当の意味で自由になった。


「シドくん。面倒をかけるけど。(ラビ)の事よろしく頼むよ。」


「まあ、いきなり外に放り出す訳にも行かないからな。できる限りはやってみるよ。」


「シド様、兎人族の特性はご存知ですか?」


「ん?なんだそれ。」


「私たち兎人族は寂しいと死んでしまいます。なので、私はシド様のお傍に居たいと思ってます。ダメでしょうか?」


「んー…でも冒険者は危険が多いからなぁ…」


「ああ。シドくん。おそらくそこは大丈夫だと思うよ。」


「どういう事だ?」


「彼女たち兎人族はそもそも狩猟民族だからね。それに冒険者はパーティを組んで活動するものだろう?。」


「まあ…な」


「ラビ、ちょっと自己証明(ステータス)をみせてくれ。」


「はい♪」

……


名前/ラビ

種族/兎人族(ワーラビット)F型 『アウロラ』

固体識別/『自律型魔法人形(オートマタ)


クラス/未設定

天命/10000/10000

魔力/21000/21000

ランク/未設定

所有者(マスター)/シド


基本適正値

体力 B 筋力 A 魔力 A 技巧 A 速度 B


能力(スキル)

『狙撃手』

全ての遠距離攻撃が必ず当たるようになる。

『上位回復支援魔法』

低位~上位の回復支援魔法使用可。

固有能力(エクストラスキル)

限界突破(オーバードライブ)

人造魔石(アニムス)のリミッターを外して出力を極限まで上げ、『筋力』『魔力』に対する極大補正効果を付与する。

……


「へぇ、遠距離物理攻撃か。」


「はい。回復支援も可能です。」


「ああ。いろいろあって回復魔法は効かないんだよ、俺。」


「「え?」」


「まあ、特異体質みたいなもんだけど、パーティ組むならメンバーの能力は知ってて損は無いだろうし俺の自己証明(ステータス)見ればわかるよ。」


「いいのかい?。私はとても興味があるけど。さっき言ってた事を気にしてるなら無理には…。」


「シド様よろしいのですか?」


「ああ。俺も見たし、どうせ自分も分からない事だらけなんだ。ティエナも調べた結果を悪用するような奴には見えないからな。大丈夫だろ。」


「『自己証明(ステータス)』っと…」





……






「なっ!?。不死属性!??。しかも加護を二つも持ってるのか…」


「す、凄いです…凄すぎますよ。シド様……」


「しかも何この能力…。ってシドくん。Aランク冒険者だったの?!それにしてもこれは…」


「あ、言って無かったか?すまん。忘れてた。」

「あははは……」


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